「初登板でのいちばんの収穫、それは、いいところも悪いところも両方出せたという点。いいところは、初登板で緊張もあるなかでもしっかりとゲームを作れたこと。注目を集めていることは自覚しているはずだが、それでも堂々としたパフォーマンスを見せられた点は素晴らしい。悪い点、つまり課題もしっかり見出せた。5盗塁を許したこともそうだし、あの変化球の精度では、プロのバッターはなかなか打ち取れないということも、はっきりわかったはず。プロ2年めで、正味のところ、プロ野球選手にはまだなっていない。ローテーションをまかされ、二桁勝利を期待される、そういう存在になるには体力的にも技術的にもまだまだ。ただし、持っているものはすごい。今は『伸びしろしかない』という状態でしょう」
「ストレート最速154km、平均でも150km以上出ており、空振りは10%以上。スピードや球質はプロでも平均以上で、将来かなりの投手になる可能性は高いと思います。もともと彼の高校時代から、投げている球はメジャーリーグ級というのが私の評価です。気になったのはストレートの多さ。約60%が真っすぐでは多すぎる。もっと変化球でカウントを取れるようになりたい。二軍では通用したフォークも、一軍の打者相手では空振りが取れず、拾われていた。スライダーはフォーク以上にいいが、できればさらに緩急をつけられる球種、たとえば遅い横スライダーやカーブなどもほしいところ。体型ももっと変わっていくだろうし、そうなればもっと球の強さも出てくるでしょう」
「まず第一印象としては、体格が大人になったなということ。投手に必要なお尻や太ももの裏側、背中などの筋肉がしっかりしてきましたね。投球フォームに関しては、まだ試行錯誤の段階という印象を受けました。腕をコンパクトに振ろうという意識ですね。そのほうがコントロールもまとまり、腕や肘にかかる負担も小さくなります。オリックスの山本由伸投手の投げ方を参考にしたのかもしれません。まだ自分のものにはしきれていませんが、これからの課題です」
「甲子園の出場経験はなく、厳しい場面で投げたことも少ない。今後さまざまな経験を積んで、状況に応じた投球ができるようにならなくてはいけない。ただし、経験を積むことと、じっくり育成することは相反することでもあります。週1回のローテーションでは、その間、投手は回復に努めるだけで、成長することは難しいんです。ただ、これはチーム事情も絡んでくることなので、難しい問題でしょうね」
「もちろんその可能性はあります。今19歳ですが、25歳くらいに向けてしっかり体を作っていければ、そういうラインが見えてくるでしょう。ただし、それを目指すことがプロ野球の投手として正しいのかどうかは別の話。今でも十分に速いのですから、それをしっかりコントロールできるようになることが大事ともいえます。夢のある話ですが、本人もそこまで球速を追い求めているわけではなく、結果として出せればいいな、くらいに考えているのではないでしょうか」(川村氏)