「皮膚に内臓の変化のサインが出る現象を医学用語で『デルマドローム』といいます。これまで医師たちが多くの症例を調べ、成人病などから悪性腫瘍まで、さまざまな病気の発見に活かされています」
「これを眼瞼(がんけん)黄色腫といいます。血液検査を受けた際に、高コレステロール血症と診断された患者さんによく見られます。こうした患者さんの頸動脈を詳しく検査すると、動脈硬化の危険性が高まっている場合が多いです」
「中年男性の患者さんで、皮膚が全身真っ赤になってしまう『紅皮症』のため受診されました。ほかの皮膚科で受診しても、改善しなかったそうです。もともとアトピーなどはなかったため、CTやMRI、皮膚生検や血液検査などで細かく調べたところ、血液のがんの一種である、リンパ腫だとわかりました」
「日常的に肌を保湿することが大切です。また、毎日ご自身の肌をケアし、状態を知っておくことで、デルマドロームにいち早く気づくことができると思います」(石河氏)
【皮膚変化がヤバい!症状(8)】「皮膚は内臓を映し出す鏡」同じ症状があれば、病院へ!
(1)<首や脇の下の黒ずみ>→胃がん
「首や脇の下、足の付け根の皮膚が黒くなる症状を黒色表皮腫といいます。角質が増殖し、ザラザラとした黒褐色が特徴で、専門医がこの症状を見るとすぐに胃がんを疑います。ゴルフに行った際、入浴中に『首と脇の下だけが黒い』と、友人から指摘され、受診した患者さんがいます。内視鏡検査をしたところ、進行性の胃がんでした。患者さんに自覚症状はなく、ショックを受けておられました。残念ながら、数年後に亡くなられました」(石河氏)
(2)<手のひらのしこりや窪み>→糖尿病
「皮膚が盛り上がったり窪んだりしているという、いわゆるひきつれができていて、その影響で指や手のひらを動かしにくくなっている場合、デュピュイトラン拘縮という病気の可能性があります。デュピュイトラン拘縮は、糖尿病を患っている方に多く見られる症状です。糖尿病はほかにも皮膚に症状が出ることがあり、それをきっかけに血液検査をすることで、糖尿病だとはっきりする場合も珍しくありません」(石河氏)。加齢によるしわと勘違いしないように注意
(3)<全身の皮膚が赤い>→リンパ腫
(4)<まぶたに黄色い粒状の膨らみ>→高コレステロール血症
「まぶたにできる黄色い粒状の膨らみを、眼瞼黄色腫といいます。これは脂質を取り込んだ細胞が真皮内ににじみ出たものです。眼瞼黄色腫自体には痛みやかゆみがなく、放置しても問題はありません。ただ、見た目の問題で形成外科で切除する患者さんもいます。とはいえ、眼瞼黄色腫が現われた場合は、高コレステロール血症の可能性があるので、きちんと診断を受けて、適切な治療を受けることが大切です。多くの場合は、コレステロール値を下げる薬を飲んで治療することになります」(五藤氏)。高コレステロール血症は、高血圧や糖尿病などと並ぶ “サイレント・キラー” 。動脈硬化を進行させ、将来的に心筋梗塞や狭心症を引き起こす可能性が高く、注意が必要だ
(5)<手足の赤くて痛いしこり>→心内膜炎
「手足に痛みがあるしこりがあり、内出血しているような赤い斑点が出ている場合、Osler結節が疑われます。このOsler結節は、心内膜炎患者に見られる特徴的な症状です。写真(画像ページ参照)の患者さんは、Osler結節によって感染性心内膜炎が発見されました」(石河氏)。感染性心内膜炎は、心臓の中にある弁などが細菌に感染する病気。治療しなければほとんどの場合、死に至るという非常に恐ろしいものだ
(6)<手のひらの赤み>→肝臓疾患
(7)<へそに赤い結節>→胃がん
「写真(画像ページ参照)のような結節を、シスター・ジョセフの小結節といいます。おへそに赤く、硬いしこりができた状態です。この小結節は、胃がんの皮膚転移で見られます。胃がんの自覚症状はないことが多いのですが、この小結節が現われた場合、胃がんは進んだ状態である場合がほとんどです。また、女性の場合は子宮内膜症などでも似たしこりが見られることがあります」(石河氏)
(8)<爪にできるほくろ>→皮膚がん
石河 晃 医師/東邦大学 医学部皮膚科教授
五藤良将 医師/竹内内科 小児科医院院長
花房崇明 医師/千里中央花ふさ 皮ふ科院長
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)