「将来の夢」と題した小学校の卒業文集には「あこがれのイーガールズ(編集部注・E-girls)に入る」とあった。実現は近かったはずだ。
6月29日、横浜市鶴見区のマンション敷地内で、女子大学生の冨永紗菜(さな)さん(18)が刺殺された。事件直後に出頭した伊藤龍稀(はるき)容疑者(22)を、神奈川県警は殺人容疑で逮捕。2人は直前まで交際関係にあった。
冒頭の一文は、冨永さんがつづったものだ。
実際に、彼女は14歳ごろまで芸能界で活動した時期があり、元SPEEDの上原多香子(40)の主演舞台『光と影からの恵み』(2017年)に出演。なかでも、上原の夫のコウカズヤ氏(46)が作・演出を手がける劇団の舞台には、何度も出演していた。
冨永さんの当時のInstagramにはコウ氏だけでなく、上原との写真も残されており、彼女たちの冨永さんへの愛情がうかがえる。
「劇団と冨永さんのご遺族は現在も交流が続いていて、訃報を知った元共演者たちは悲しみに暮れています。2019年に劇団を離れたコウさんと上原さんも、今回の事件を深く悲しんでいるはずですよ」(芸能関係者)
地元・横浜市内の私立大学に通っていた冨永さんは、中学3年ごろから、地元の友人たちと頻繁に交流するようになり、事件のあった週末も仲間内でBBQを計画していたそうだ。
冨永さんの友人のひとりは、彼女からある“身の上話”を聞いたことがあった。
「紗菜は2年前に2回、妊娠して、2回、中絶したと話していました。その時期に、通っていた私立高校も中退することになり、通信制高校で高卒認定を取ったんです。そして、紗菜を妊娠させた相手が伊藤容疑者。バイト先の蒲田の飲食店の店長が、彼だったんです」
事件前、冨永さんや第三者から警察に4回、通報があったことが判明している。いずれも、伊藤容疑者との間での「けんか」「暴力」に関する相談だった。
伊藤容疑者は鶴見区内の家賃約6万円、1Kのアパートに住んでいた。同アパートの住民は、「DVやけんかの声、音を日常的に聞くことはなかった。ただ、一度、冨永さんが伊藤容疑者の家のドアとインターホンを叩いて、大声で叫んでいるのは見たことがある」と話す。
容疑者宅のインターホンには、そのときについたであろう割れた痕が残っていた。
住民たちに聞くと、伊藤容疑者については交際トラブルよりも、近隣トラブルの印象のほうが強かったという。
「ほぼ毎日、アパート前の道に(運送業者を表わす)黒ナンバーの車を路上駐車していたんです。本当に邪魔で、何度も警察に通報しました。すると数m、位置を変えて……と、イタチごっこでした。車種もよく変わるんです」(近隣住民)
一方で、2人の関係は――。
「仲よさそうにしていた印象です。そもそもアパートでは、冨永さんばかりを目撃していたので、彼女の自宅だと勘違いしていました」(別の近隣住民)
伊藤容疑者の自宅からすぐ近くにあるラーメン店の店主は、日常的に2人が来店していたことを覚えていた。
「今年の初めくらいから、週1回ほど通ってくれていた常連です。冨永さんはいつもすっぴんで、部屋着のようなダボッとしたTシャツで来ていました。
伊藤容疑者はチャーシュー麺の大盛りを頼むなど、いつもよく食べるんです。だから、逮捕直後の映像を見たら、かなりやせたように感じて驚きました。
冨永さんはとろろご飯だけを注文し、小鉢に彼のラーメンを少しわけてもらって食べている感じでしたよ」
『一杯のかけそば』のような姿も目撃されていた2人。しかし、この春から通う大学で、冨永さんは「彼氏」について、周囲に話すことはほとんどなかったそうだ。
伊藤容疑者の凶行は、新たな一歩を踏み出していた彼女の人生を狂わせるものだった。
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