1月18日午後5時半ごろ、JR上越線の群馬県みなかみ町鹿野沢付近で、13両編成の貨物列車とクマ1頭が衝突、運転士にけがはなかったがクマは死亡した。
群馬県の防災情報によると、当日のみなかみ町は最低気温マイナス2度、最高気温4度、積雪は20センチを記録していた。通常この時期であれば、クマは冬眠に入っていると言われている。
上毛新聞による報道を見ても、JR東日本高崎支社の担当者が、この時期のクマの衝突被害の珍しさを語っている。
なぜクマは冬眠せず線路内にいたのだろうか。動物研究家のパンク町田氏に聞いた。
「2023年と比べてですが、2024年は冬眠しないクマが増えています。その理由は、2023年夏の猛暑にあります。あまりにも暑すぎて、木の実などクマのエサになるものが不作だったのです。クマはおよそ3カ月分あるいは最大で6カ月分の栄養を体に蓄えて冬眠に入ります。しかしその栄養が取れないので冬眠ができないのです。
さらに2022年は、気候が良くエサも豊富でした。そのため繁殖が盛んになりクマの頭数が増えたのです。今年は個体数が多くなって、さらにエサが少ないという状況になりました。そのため冬眠する季節にもかかわらずエサを探し求めて歩き回っていたのでしょう。十分なエサが摂れず、体温が低下して凍死したクマもいます」
2023年12月、北海道猟友会札幌支部防除隊隊長の玉木康雄氏も、本誌に“冬眠しないクマ”について警鐘を鳴らしている。
「札幌市では、今年は12月中旬くらいから冬眠に入るとみられていましたが、私も19日時点で大方のヒグマは冬眠に入ったと思っています。ただし、『穴持たず』という冬眠しないクマもいますから、注意が必要です。
クマはエサが取れなくなった時点で、そのままのたれ死ぬか、眠って春まで我慢するかの選択に迫られて、おおかたの個体は冬眠に入ります。眠るリスクとエサが取れないリスクを天秤にかけて寝るリスクをとる、というだけです。エサが取れれば寝る必要はありませんから、非常に狩猟が上手な特殊な個体や、人間の作った作物などを上手く奪取する能力がある個体は寝なくていいわけです。そうした特殊な個体を『穴持たず』といい、昔から存在してきました」
クマは冬眠する生き物という思い込みは改めた方がいいようだ。未踏の積雪地を滑るバックカントリースキーも人気だが、「山に入るには常にリスクがある」ことを肝に命じたい。
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