国内女子ゴルフで2015・16年と2年連続で賞金女王に輝いたイ・ボミ(34)が、2月27日、今季限りで日本ツアーから引退することを発表、28日に記者会見に臨んだ。
今季女子ツアーは、3月2日、沖縄県で開催される「ダイキンオーキッドレディス」で開幕する。イ・ボミは開幕前に引退を発表したことについて、「全国にいるファンのみなさんに、感謝の気持ちをあいさつしたくて、早く言ったほうがいいかなと思いました」と話した。
『イ・ボミ「愛される力」 日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学』(光文社)の著者で、長年にわたって、イ・ボミの近くで取材してきたスポーツライター・金明昱氏は、開幕前にあえて引退を発表した気持ちをこう代弁する。
「引退は去年の時点で考えていました。『しんどい』と何度も言っていましたし、成績が出ないのに続けることに意味があるのだろうかという気持ちもあったと思います。
ただ、このまま終わるのはどうかと……どうしても悔いが残るところもあったようですし、母親のファジャさんに相談したところ、『もう少し続けてほしい』という意向もありました。
ファンの『このまま終わってほしくない』という思いも理解しており、去年は気持ちが揺れていたと思います。
このタイミングで発表することに迷いもあったようですが、今季で終了することを伝えておけば、自分としても気持ちよく終えられると思ったのでしょう。
成績というより、ファンに試合を見てもらって、最後はみんなと “さようなら” を分かち合うみたいな。やめる、やめないをシーズンの終わりまで引っ張るよりは、けじめをつけて試合に集中したいということだと思います」
2017年の「CAT Ladies」で優勝して以来、勝利からは遠ざかっていた。笑顔がトレードマークのイ・ボミだが、この数年は悩みながらプレーを続けてきたという。
「この5年ぐらいはスイングがおかしくなって、なかなか狙ったところにまっすぐ飛ばないこともあり、スコアがまとまらなくなると悪いループに陥ってしまう。そこから抜け出せず、ずっと悩んでいるから、楽しくゴルフができないと話していました」(金氏、以下同)
そんな彼女に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。試合がなくなり、入国制限で日本にも来られない。練習もままならなくなり、どんどん実戦から遠ざかってしまった。モチベーションが下がり、ずっと日本に行けなかったことが気持ち的にもマイナスに作用したという。
それでも日本ツアーで試合を続けてきたのは、イ・ボミ自身が日本での試合やファンとのふれあいを大事にしているからだろう。
「昔から、日本に来て本当によかった、日本に来てなかったら今の自分はなかったと言っています。それはファジャさんも同じ思いです。
日本のファンはみんな優しい。マスコミも優しいし、スポンサーも気にかけてくれる人たちばかりだったと。自分は自然にやってきたけれど、まわりが自分のことを好いてくれて嬉しかったと話していました」
2019年12月に俳優のイ・ワン氏と結婚し、3年ほどたった。イ・ボミも母となる夢を抱いているという。
「結婚してからは試合数もそんなに多くなかったし、韓国にいることも多かったので、旦那さんと一緒に過ごす時間は作っていたと思います。
今後も、韓国のスポンサーからの招待試合などには出場すると思いますが、年齢的なこともありますし、そんなに長くは続かないでしょう。
以前、インタビューしたとき、『子供もほしい』と話していたので、いったんけじめをつけて、家庭を築いていくことも考えていると思います」
開幕戦を含め、数試合に主催者推薦で出場したのち、所属契約を結ぶ延田グループの主催試合「マスターズGCレディース」(10月19~22日、兵庫・マスターズGC)が引退試合となる。
「イ・ボミの引退発表があってから、沖縄の試合会場でキンクミ(金田久美子)に会って話したのですが、『すごく寂しい。たぶん、10月の最後の試合のときは絶対に泣いちゃう』と言っていました。ファンだけでなく、選手にも好かれた選手だったのだと思います」
一度会ったファンの顔や名前を忘れないイ・ボミの優しさや気遣いに、多くのファンが集まった。イ・ボミが試合会場のホールを移動する際、多くのギャラリーが続いて大移動する光景は、圧巻でもあった。
ファンを魅了した “スマイル・キャンディ” の、日本での残り少ない試合を見守りたい。
外部リンク