国税庁が、2024年1月から、いわゆる「タワーマンション(タワマン)節税」への対策を強化する、としたことが話題になっている。
マンションの場合、建物自体の相続税評価額は、床面積が同じであれば階数に関係なく同額。敷地の評価額も毎年、公表される路線価を使い、敷地全体の評価額を戸数で割るため、総戸数が多いタワマンほど、1戸あたりの評価額が低くなるのだ。
タワマンは高層階ほど高額なので、その節税効果も絶大なものとなる。同じタワマンで同じ床面積なのに、階数が違うだけで大きな不公平感が生じてしまう。これらを是正するのが目的だという。
「築年数や階数などをもとに、国税庁が新たな『市場価格』を算出します。評価額がこれを大きく下回った場合、評価額を一律で市場価格の6割とする方針です。6割を超える場合は、従来どおりの評価額にもとづき税額を算定します」(不動産業界関係者)
国税庁の有識者会議では、次のような試算が出された。「東京都内、築9年、43階建てマンションの23階。実勢価格1億1900万円。相続人は子ども1人」のケースでは、現行の評価額は3720万円で、相続税は3720万円から基礎控除(3600万円)を引いた額の10%=12万円だが、改正案では評価額が7140万円となり、相続税は7140万円から基礎控除(3600万円)を引いた額の20%から200万円を引いた、508万円となる。じつに496万円の増額である。
これを「お金持ちが心配すればいいことでしょ」と思っていてはいけない時代が来るかもしれない。
「今回の改正では20階建以上のマンションが対象ですが、中規模マンションでも、戸建て住宅に比べると固定資産税や相続税は圧縮できますから、今後はマンションも戸建てと変わらない税制になるかもしれません。そうなると、タワマン以外に暮らす方々にも大きな影響があります」(不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏)
さらに、所有しているマンションの資産価値の下落に見舞われる可能性もあるという。
「タワマンなどは、実際に住む“実需”のほかに投資や節税目的で保有する方も多いといわれています。そのため、節税効果が薄くなることで手放す所有者が増えると、マンション価格は下落します。この価格傾向が周辺のマンションにも波及して、中規模マンションの資産価値も下がってしまうことが考えられます。
また、大手デベロッパーは地方都市などで、大規模再開発をしています。都内でもいくつか見受けられますが、地元の地権者をまとめ、更地にして大型マンションを建設する、というやり方です。ここでも実需より、投資・節税での購入を見込んでいるのです。今後、この購入層がいなくなると、デベロッパーは戦略の練り直しを迫られ、再開発が進まない状況が出てくるかもしれません」
タワマン節税の波紋は、庶民には大波となって押し寄せそうなのだ。
外部リンク