世界一裕福な女性が、この4カ月間に6000億円を超える寄付をし、その行動に称賛の声があふれている。彼女の名前はマッケンジー・スコット氏。アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の元妻である。
2人は1993年に結婚し、2019年に離婚。夫が所有するアマゾン株の25%を譲渡され、推定360億ドル(4兆円弱)という巨額の資産を手に入れた。その後、彼女は財産が多すぎるとの理由で、可能な限り寄付を続けていくと宣言していた。
その言葉どおり、7月末に116の団体に約1800億円の寄付を実行。さらに今回、第2弾として、約4300億円を384の団体に寄付した。
マッケンジー氏の寄付先は全米50州にわたっているが、前回が地球温暖化や人種差別などの分野で活動する団体で、今回はYMCAや、黒人に高等教育を与えるために設立された大学、低所得者に食料を補給する団体などだ。
金額はいずれも億単位で、テキサスの大学に50億円、リサイクルショップに10億円といった具合。多くの団体がこれまでもらったことのないお金を手にするわけで、驚きや歓喜の声が響き渡っている。
実は、寄付というのは、寄付する側の労力のほうが大変なのである。彼女のチームは、組織のマネジメントや寄付金を得た場合のインパクトなど、さまざまなデータを分析した上で、6490の団体から822まで絞ったという。まだ半分以上は調査中で、今後、寄付の対象になる可能性がある。
それにしても、マッケンジー氏とはいったいどんな女性なのか。
サンフランシスコで生まれたマッケンジー氏は、1992年にプリンストン大学を卒業し、後にノーベル文学賞を受賞する女性作家トニ・モリスンに師事。小説を書きながらヘッジファンドで働き、そこでジェフ・ベゾスと出会って結婚し、4人の子供を育てている。
財産分与により、すぐに女性資産家で世界トップクラスになったが、コロナ禍で人々が外出制限するようになり、アマゾンの株価が上昇。その結果、今年9月に、ロレアルやウォルマートの一族をおさえ、女性で世界一の資産家となった。
マッケンジー氏は、自身のブログで、コロナが多くの人たちを苦しめているのを見て、チームに寄付を急ぐよう頼んだと明かしている。その上で、時間やお金に余裕がある人はぜひ寄付してほしいと訴えている。
一般に広く呼びかけたメッセージに見えるが、SNSはもちろん、各種報道でも、「この呼びかけは、財布の紐が固いジェフ・ベゾスへの当てこすりではないか」と騒がれている。妻の評価が上がる一方で、ケチな夫の評価は下がりがちのようだ。(取材・文/白戸京子)
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