11月9日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)の出演が、急遽、取りやめになった韓国のヒップホップグループ「防弾少年団」。
取りやめの理由は、メンバーの一人が、長崎に投下された原爆のキノコ雲らしき画像と、それを喜ぶ韓国人がプリントされたTシャツを着た写真が出回り、物議を醸したためだ。
さらに11日には、ユダヤ人の人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が、過去にナチスの軍服に似た衣装を着て、ハーケンクロイツに似たマークが入った旗を使ったことを指摘、日本とナチスの被害者への謝罪を要求した。
防弾少年団は、「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味のグループ名で、BTSと略される。デビューは2013年。メンバーは7名で、平均年齢は20歳と若い。
グループの魅力は、端正な顔だけでなく、キレのあるダンス、歌唱力、さらに圧倒的なパフォーマンスにある。2016年にリリースされた『Blood Sweat & Tears』は、ユーチューブの再生回数が3億回にのぼっている。
そんな防弾少年団は、2017年11月、韓国グループとして初めてアメリカの権威ある音楽の祭典「アメリカン・ミュージック・アワード」に招待され、『DNA』を披露。ニューヨーク・ポストは、これをベストステージの1つに選んだ。
さらにアメリカの主要メディアに立て続けに出演。どの番組でも熱狂的に迎え入れられ、10月には、雑誌「TIME」のアジア版で「次世代のリーダーたち」として、表紙を飾っている。
また、11月に開催されたアメリカの「ピープルズ・チョイス・アワード」では、「今年のグループ」「今年の歌」「今年のミュージックビデオ」「今年のソーシャルセレブ」賞を獲得、見事4冠を果たした。
このほか、今年だけで「ビルボード・ミュージック・アワード」「ラジオディズニー音楽賞」「ティーンチョイスアワード」「MTV欧州ミュージックアワード」など、世界的に有名な音楽賞を数多く受賞しているのだ。
実は、防弾少年団は、「韓流」を世界に向け積極的に後押ししている、韓国大統領のお気に入りでもある。
2016年6月には、国賓としてフランスに行った朴槿恵大統領(当時)が、初めてパリで開催された「Kコン」で防弾少年団の公演を観覧。
さらに、今年10月、同じく国賓としてフランスに出向いた文在寅大統領が「韓仏友情のコンサート」に参加した防弾少年団の公演を見ている。
文大統領は、公演後のカーテンコールで舞台に降りて、防弾少年団のメンバーらと抱擁を交わしている。さらに、メンバーの時計に直接サインするなど、親しさをアピールしていた。
防弾少年団がビルボード1位を取った際は、文大統領は「防弾少年団によってKポップは跳躍し、世界の若者たちと一緒に人生と愛、夢を共感することができた」との祝電を送り、文化勲章を贈ってもいる。
だが、防弾少年団の原爆問題、ナチス問題については、いまのところ大統領は見解を発表していない。韓国が誇る人気グループが抱えた火種は、国際問題に発展する可能性もあり、その対応に世界中から注目が集まっているのだ。
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