毎月ひとつテーマを設け、お国柄や街の様子をお届けする連載「世界は愉快」。12月は「クリスマス」がテーマです。
from Copenhagen
北欧デンマークの暗くて長い冬のハイライトは、なんといっても、クリスマス。今年は新型コロナウイルス感染症対策で人の集まりに制限があり、例年のように帰省して大家族で過ごせないし、コペンハーゲン中心部のクリスマスマーケットも中止。そんな物足りない気持ちを、街のイルミネーションが癒してくれる。
デンマークでは、星やトナカイなど定番のクリスマスモチーフに「ハート」が加わる。理由は諸説あるが、「ふだんは会えない家族や愛する人と過ごせて、心が温かくなる季節だから」という人もいる。
ハートは、ツリーのオーナメントにも使われる。代表的なのが「ユールヤータ」(クリスマスのハートの意味)。赤と白のデンマークの国旗カラーの紙を交互に組み合わせる紙切り細工で、デンマークではこの時期に保育園や小学校で作り方を教えられる。日本の折り紙のようなものだ。シンプルなものから花や国旗を組み合わせた上級編までバリエーションも豊富で、100種類以上のパターンを載せた本も出版されている。
ユールヤータの起源は不明だが、1800年代にドイツからクリスマスツリーを飾る習慣を取り入れてから広がったといわれている。童話作家のアンデルセンが、1860年代に友人の娘へのプレゼントとして作った、グリーンと金の2色使いのユールヤータが残されている。1900年代にはクリスマスソングに歌われたり、テーブルクロスのモチーフになるなど、クリスマスには欠かせないオーナメントとして定着するようになったという。
クリスマスまで4回ある日曜の午後、アドベントキャンドルを灯し、大人はホットワイン、子どもはホットココアを飲みながら手作りオーナメントを作る家庭も多い。デンマーク人が言う、「ユール・ヒュッゲ」のひとつだ。会えなくても、家族や愛する人を想って、心がほっこりする。ユールヤータはそんなデンマーク人の気持ちを象徴しているようだ。
写真・文/冨田千恵子(在コペンハーゲンコーディネーター、ライター)