大倉忠義と成田凌のグラビアが掲載された『an・an』(マガジンハウス)の6月3日号は、「コミュ力」強化塾。と表紙に大書されている。具体的にコンテンツを読むと、メンタリストDaiGoが授ける“人間関係がうまくいく極意”という特集が目を惹く。人間関係をより円滑にする心理テクニックや話し方がスペシャリストにより指摘されており、実践向けの内容であることが分かる。
『an・an』2020年 6月3日号 No.2202(マガジンハウス)
リモートワークの常態化により、生身のコミュニケーションができないことを嘆く人や、SNSに耽溺するあまり、リアルでの友達や仕事仲間との接触が減ったという人もいる。他者との関わり方を考えるいい機会だったと言える。
DaiGoらが主張するのは、自己肯定感の重要性。要するに、自分の行動や恰好を他者と較べてチェックするのではなく、自分ならではの強みや魅力を理解するほうがずっと肝心だ、ということ。こうした価値観が特集の通奏低音となっている。
例えば、比較するなら他者ではなく、まずは過去の自分と、との指摘は納得できる。ダイエットでも、他者のスタイルに較べてどうかよりも、1年前より何キロ減った、というデータは自己肯定に繋がる。あるいは、他者に褒められる機会を待つのではなく、これは自分の得意分野だ、と感じることがあれば、それを積み上げて自分の強みとする。
インターネットで「人間関係」と検索すると、同時に「苦手」「うまくいかない」「ストレス」といった言葉が関連ワードの上位に出てくる。同じ悩みを共有する者は多くおり、あのDaiGoですら以前は内向的な性格だったという。
では、具体的な処方箋は? 本特集で述べられる自己肯定感もちろんだが、筆者はもうひとつ、「認知の歪み」を知る大切さを唱導したい。「~すべき思考」「行きすぎた一般化」「マイナス化思考」など、偏った思考パターンを認知し、バイアスを減らす必要性だ。
宗教や科学でもそうだが、何かを信じることで人は変化や危機に強くなれる。自分の得意分野を深め、これなら誰にも負けないと信じられれば、それは自己肯定に直結する。例えばだが、マラソンでもスポーツ観戦でも映画鑑賞でもいい、これについては一家言あると言える趣味があるだけでも、だいぶ救われるはずだ。
人は放っておくと、ネガティブな出来事のほうが印象に残りがち。不安を取り除くためには、その日うまくいったことや幸福感を確かめることが大事。特に寝る前に思いだすと、幸せな記憶が脳に定着しやすい。本特集はそう述べる。
自己肯定感をも身につけても、誰もがハキハキと前向けに主張できるわけはない。「コミュ障」という俗語で接触や対話が苦手な人を差別・非難するなどもってのほか。皆が自己肯定感でいっぱいの多様性なき世の中など息苦しい。ただ、手探りで他者との接点を見出し、意志を伝える努力は必要だ。トライ&エラーを繰り返しながら、そのスキルを上げていくことは肝要だろう。
文=土佐有明
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