街中のあちらこちらで、フレッシュマン&ウーマンたちの初々しい姿が華やぐ季節。そんな彼らの社会人としての登竜門のひとつに、「TODO(タスク)管理」がある。新人研修の充実した会社なら、心配も不要だろう。しかし筆者などは、「ビジネススキルは実務を通して自ら習得すべし」をモットーとする、放し飼い養鶏場のような会社で育った。そのため、いまだに自分のTODO管理に不安がいっぱいだ。
ということで今回は、「タスク管理のキモを学びたい」「仕事の処理能力や効率化をアップさせたい」「使えるTODOリストと出合いたい」などと熱望する、新社会人から中堅&ベテラン社会人にまで、ぜひとも紹介したい一冊をご用意した。それが『3倍速で終わる! シンプルTODOリスト仕事術』(Shin/ポプラ社)である。
現在、外資系コンサルティングファームのマネージャー職に就きつつ、オンラインコミュニティの主宰者や講演などでも活躍する著者による、ビジネス書では稀有な、TODOリストに特化した本である。とはいえ、いろんなTODOアプリの紹介本などではない。本書は、TODO(つまり仕事、タスク)が効率的かつスピーディーに遂行できない主な原因を提示し、その問題を解決させるための、実践的な知恵の数々が学べる一冊なのだ。
●「仕事が終わらない原因」は主に5つある
著者が指摘する「仕事が終わらない原因」は、主に5つ。それが「仕事の目的を把握していない」「具体的なTODOが見えていない」「具体的なTODOを整理できていない」「TODOの処理速度が遅い」「TODOが多すぎる」である。そして本書は、この5つの原因を解消するためのノウハウを中心に、TODO管理&処理のキモを伝授してくれる。
ここでは、「具体的なTODOが見えていない」を解消するための知恵を取り上げてみよう。というのも、やはり何事にもスタートが肝心で、上司などからタスクを与えられたら、速やかにゴールに向かってすべきこと(TODO)を考え、実行していきたいからだ。そのためには、具体的なTODOが見えていなければ話にならない。
その対処法が、「具体的なTODOを見える化」することで、やるべきことが「ロジックツリーの作成」だ。
●ロジックツリーを作ってTODOを見える化させる
ロジックツリーとは、わかりやすく例えれば組織表である。社長(室)をトップに、下部にいろんな組織が広がり、末端には各部署名が名を連ねているのを見たことがあるだろう。
例えば、ダイエットを目標にしたロジックツリーを考えた場合、トップにはダイエットと書く。次のポジションには、「摂取カロリーを減らす」「消費カロリーを増やす」という2つの目標を書く。次には、では朝、昼、晩の食事メニューをどうするかや、ジムや家でのトレーニングメニューなどを考えることで、具体的なダイエットのためのTODOリストがどんどん増えていくわけである。
本書にはダイエットから仕事で使えるサンプルまで、いくつかのロジックツリー例があるので、それを参考にして自分でやってみると、たしかに「具体的なTODOが見える化」ができる。
●スケジュールとリンクした「シンプルTODOリスト」が使える
そして、具体的なTODOが見える化したら、次にはそれを「TODOリスト」で管理して、スピーディに処理をすることを勧める著者。その際に使いたいのが、著者考案の「シンプルTODOリスト」(本書を購入すれば、特典として無料でダウンロードができる)だ。エクセルを使ったこのTODOリスト、筆者も実際に使ってみたが、じつに画期的だ。
工夫されているのは、TODOリストと1日のタイムスケジュールが計算式でリンクされていること。これにより、単にTODOのリストアップだけに終わらず、それをいつ処理すべきなのかが考えられるようになり、実行にも移せるようになる。
本書には他にも、複数のTODOがあった場合の優先順位の付け方を明快にする「コスト/コントリビューションマトリックス」というアイデアの紹介や、シンプルTODOリストの使い方ガイド、TODO処理速度を向上させる7つの方法、TODOを減らして生産性をあげる3つのステップなど、TODO対策の知恵の数々が詰まったTODOバイブルだ。
TODOに悩むのはもうイヤだ──、そんな方に手にしていただきたい一冊である。
文=町田光
イラスト=Miyako Kugue
『3倍速で終わる! シンプルTODOリスト仕事術』(Shin/ポプラ社)