『意味がわかると怖い4コマ』(湖西晶/双葉社)
ネット上には数え切れないくらいの「怖い話」が溢れている。得体の知れない怪異、人間が持つ根源的な悪意、都市伝説……。この時期になると、怖いもの好きとしては一通りそれらを読み耽ってしまう。時間が経つのも忘れ、気がつけば朝になっていることもしばしば。窓の外が白みはじめるのを見て、安心して眠りに就く自分もいる。読んだら後悔するとわかっていても、やっぱり怖い話はやめられないのだ。
なかでもちょっと頭を使う怖い話がある。それが「意味がわかると怖い話」。検索するといろいろ出てくるのだが、これはよくよく読み込んでみると、実は深い意味が隠されているというもの。そして、その真実に気づいたとき、さらなる恐怖が訪れるのだ。
そんな怖い話を集めたマンガが『意味がわかると怖い4コマ』(湖西晶/双葉社)である。本作は日常生活で起こるあらゆるエピソードを4コマ形式で描いている作品。一つひとつはそこまで怖くはない。というか、さらっと読むと、「いったいなにが怖いの?」と疑問符がつくだろう。けれど、そこで終わらせてはいけない。たった4つのコマにちりばめられている情報の断片を集め、組み合わせていくと恐ろしい真実が浮かび上がってくるのだ。
たとえば「もったいない」と題されたこちらのエピソード。パッと見、自殺しようとしている女性と、それを止めようとしている善意ある男性のやりとりだ。しかし、最後のコマの男性のセリフをよく読むと、違和感に気づく。自殺の名所にもかかわらず、自殺した人はひとりもいない。つまり、「自殺」ではなく、すべてが「他殺」ということ……? そう捉えると、この男性の笑顔が途端に不気味なものとして映るから不思議だ。
こちらは「ショウカキ」という一編。どうやら街で連続殺人が起きているらしい。しかも、被害者の腹部からは胃や腸が持ち去られているという猟奇的な事件だ。するとそこに、ひとりの訪問者が。「ショウカキ イリマセンカ?」との問いかけに、女性は「いりません」と断言する。……ちょっと待って。この女性は「ショウカキ」を「消火器」と変換しているが、もしかしたら「消化器」の間違いかも。だとするならば、扉の向こうにいるのは……。
個人的に結構キタのが、この「うちのこ」だった。ちょっとヤンチャな印象のある若い夫婦のスマホに「子供の霊」が写っているらしい。バズ狙いでそれをSNSにアップしようとするふたりは、一緒に写っている「自分たちの子」の顔を隠す。……けれど、隠したのは、幽霊のようにやつれてボロボロになっている子供の顔。つまり、こちらは生きている側ということだ。でも、どうしてこんなにボロボロなのか。その答えは4コマ目をよく読むと理解できるだろう。
このように本作には「意味がわかると怖い話」が大量に収録されている。しかも、その一つひとつに解説がつく。いくら考えても意味が理解できなかった場合は、解説を頼ることで恐怖を味わうことができる。
この夏、ちょっと変わった怖い話を楽しみたい人には、本作をオススメしたい。ジワジワ迫りくる恐怖がきっとやめられなくなるはずだ。
文=五十嵐 大
(c)湖西晶/双葉社
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