引っ越しの春、別れなど辛い経験した人も多いかと思いますが、動物たちも辛い経験をしているようです。引っ越しによるストレスで大好物のアジを控えないといけなくなった“ホッキョクグマ”など、動物たちの辛い引っ越し事情について取材しました。
取材班が向かったのは、愛知県豊橋市にある「のんほいパーク」。大好きな魚をめがけて、この園で人気のホッキョクグマが豪快にプールに飛び込んでいました。ホッキョクグマを見つめていた子どもは。
「かわいい」
Q.ホッキョクグマのどんなところ好きですか?
「白いところ」(子ども)
このメスのホッキョクグマ・キャンディ(26)は、繁殖のために送られていた北海道・札幌市にある「円山動物園」からその役目を終えて、先日8年ぶりに帰ってきたばかりだといいます。
この再会を楽しみにまっていた客は。
「ああ、おかえりー。よかったね。豊橋のほうがいいね」(女性客)
「娘が帰ってきたという感じです。もう涙もんです」(男性客)
動物たちの引っ越しは、とても繊細
しかし久しぶりに我が家に戻ったキャンディですが、少し悩みがあるそうです。
「急にうちにあるアジとかを食べてしまうと、おなかをくだしてしまったりする。最初戻ってきたときは(札幌の動物園と)同じエサをあげて、徐々にここであげているエサに切り替え、おなかを整えていってあげたいと思う」(のんほいパーク 白井雅之さん)
引っ越しのストレスの影響が出ないようにするため、以前は大好物だった「アジ」のエサを控えているというキャンディ。現在は、北海道で与えられていたホッケを食べやすいようにカットして、エサにしているといいます。
実は、動物の引っ越しは私たちが思っている以上に繊細なものなのです。名古屋市千種区にある「東山動植物園」の人気イケメンゴリラ・シャバーニも、去年新しいゴリラ舎に引っ越したときには、さまざまな不調を起こしていました。
「麻酔で眠らせて、寝ているうちに新しい施設に移動させました。食欲も落ちてしまって、ストレスのあまり下痢するなど、15キロくらい体重が落ちました」(東山動植物園 今西鉄也さん)
一時は、激やせしてしまったシャバーニ。果物など甘い物を与えることで、現在は食欲が回復したといいます。
「それまでの環境に慣れていた動物が引っ越すと、引っ越し先に慣れるのに時間を要したり、体調を崩したりする。“どうしたらいいのか”ということを、絶えず気にしている」(東山動植物園 今西鉄也さん)
そこまでして引っ越す理由は? “絶滅危惧種を増やし、守りたい”
そんな大変な思いをしてまで、動物たちを引っ越しさせるワケとは。その答えのひとつが、三重県鳥羽市にある「鳥羽水族館」にありました。この水族館では3月22日、メスのセイウチ・ミーが大分県にある水族館から約16時間かけて、はるばる引っ越してきました。他のセイウチも見守る中での引っ越し作業は、クレーンを使った大がかりなものでした。
「スタッフがエサをあげながら誘導し水槽に入れたが、その時エサは食べなかった。大丈夫かなと思ったが、その1時間後もう一度あげたら完食したので、一安心した」(鳥羽水族館 川口直樹さん)
大変な思いをして引っ越ししてきた、ミー。実はオスのポウと、繁殖のためのお見合いがまもなく控えています。セイウチは絶滅危惧種に指定されていて、国内ではわずか26頭しか飼育されていません。海外からの輸入も困難なため、リスクがあっても国内の施設で引っ越しをして、その数を守らないといけないのです。
「(引っ越しは)リスクもあるが、それよりもポジティブに増やしていこうと考えた。(これまで)セイウチの出産はしたことがあるが、育成には成功していない。まず育成を成功させるのが第一の目標です」(鳥羽水族館 川口直樹さん)
セイウチが発情する期間は、残り1か月程度。ミーは、少しずつオスとの同居時間を増やしていき繁殖を目指すということです。
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