正月料理に欠かせない餅。
お雑煮などで食べる人も多いが、のどに餅を詰まらせて救急搬送される高齢者が相次いでいる。
搬送者は「正月3が日」の1月1〜3日が多く、2年間で100人以上の高齢者がこの3日間で死亡しているというデータもある。
窒息は命の危険に直結する。もし、あなたの周りの人が餅をのどに詰まらせてしまったら、どのように対処すればいいのだろうか。
2年間で661人の高齢者が死亡
画像はイメージです
東京消防庁によると、餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人は、2017〜21年で401人。
そのうち9割以上の367人が65歳以上の高齢者だった。
月別では、2〜11月の救急搬送者は10〜20人台だが、12月に59人となり、1月は159人に急増している。
また、消費者庁が2018〜19年の2年間を分析したところ、餅をのどに詰まらせるなどして死亡した高齢者は661人に上った。
事故発生日は正月3が日が127件、正月は67件だったという。
救急搬送された2人に1人が重症以上
餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人
さらに、東京消防庁のデータをみると、餅などをのどに詰まらせると重症化する可能性が高い。
2017〜21年に救急搬送された401人のうち、死亡は29人(7.2%)、生命の危険が切迫する重篤は163人(40.6%)、生命の危険が強い重症は38人(9.5%)だった。
つまり、救急搬送された2人に1人(57.3%)が重症以上だった。
もし餅がのどにつまってしまったら……
画像はイメージです
では、万が一のどに餅などが詰まった場合はどうすればいいのだろうか。
政府広報ラインによると、次のような症状がある時は気道がふさがれている可能性がある。咳きこんだり、苦しそうにしている。声を出せず、喉をつかむ動作をする(チョークサイン)顔色が悪い
せきをすることができれば可能な限りせきをさせたほうがいいが、せきができなかったり、強いせきがでなかったりした場合は「窒息」の疑うが強い。
助けを呼んで119番やAEDを持ってくるように依頼しなければならないほか、助けがくるまでの間、直ちに異物を除去する必要がある。
特に今は新型コロナウイルス「第8波」の真っ只中。総務省消防庁によると、搬送先がなかなか見つからない「救急搬送困難」は昨年12月19〜25日、東京消防庁管内で2927件(前年同期比916件増)だった。
東京消防庁の救急車出動率も連日95%を超えている。万が一のことへの備えは重要だ。
画像はイメージです
背部叩打法
異物を除去する作業は主に2つある。
一つ目は、背中を力強く叩いて詰まったものを吐き出させる「背部叩打法(はいぶこうだほう)」という方法。
手のひらの付け根部分で、左右の肩甲骨の中間あたりを強くたたくことを繰り返す一般的なやり方となる。
背部叩打法(政府広報オンラインから)
腹部突き上げ法
背部叩打法で取り除けない場合は、「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」がある。
上腹部を手前上方に強く突き上げる方法だが、乳児や妊婦、高度肥満の人には使用できない。
手順は次の通り。相手の後ろに回って腕を脇からとおし、ウエスト付近に手を回す。一方の手で握りこぶしをつくり、親指側をへそより少し上に当てる。その握りこぶしをもう片方の手で握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる
ハイムリック法をした場合、腹部の内臓を傷めている可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、速やかに医師の診察を受ける必要がある。
119番で命が助かった事例も
腹部突き上げ法(政府広報オンラインから)
119番対応をした消防職員の指示で命が救われた事例もある。
朝日新聞によると、東京都大田区で昨年、80歳代の男性が雑煮をのどに詰まらせた。
119番した男性の家族は東京消防庁通信指令室の職員の指示に従い、男性の背中をたたいて餅を取り除いたという。
政府広報オンラインは、餅を食べる際の注意点について次のことを呼びかけている。
餅は小さく切って食べやすい大きさにする。先にお茶や汁物を飲んで喉をうるおす急いで飲み込まず、ゆっくりとかむかむ力や飲み込む力が弱い高齢者などと一緒に食事をする場合、見守る。
なお、喉に詰まった異物を取り除く方法として、ネット上で「掃除機による吸引」をみたことがあるがある人もいるかもしれない。
この方法は、衛生上の問題や口の中をけがする危険性などから、推奨していない消防も多いという(大学病院医療情報ネットワークの研究より)。