香港で「史上最大の移住ブーム」? 世界で最も高い住宅市場では2021年、空き家が増え、家賃が下落する
- 中国による弾圧が強まる中、香港市民はイギリスへ逃れている。
- 最新の報道によると、こうした"大量流出"によって、香港の非常に高いことで有名な家賃が2021年に10%下落する可能性があるという。
- 空き家率もここ18年で最も高くなる可能性がある。
香港は長い間、その天文学的に高い不動産価格で有名だった。2020年には世界で最も高い住宅市場に10年連続でその名を挙げられた。
しかし、香港の不動産市場にとって、2021年は"大きな変化の年"になる可能性がある。2020年6月に中国が香港国家安全維持法を施行して以来、香港市民はイギリスに押し寄せている。1月にはイギリスで新しい特別ビザが申請できるようになり、香港市民はより移住しやすくなった。イギリス政府はこの新たなスキームの下、今後5年で30万人以上の香港市民がイギリスに移住すると見込んでいると述べた。
こうした中、香港の非常に高いことで有名な家賃が10%下落、空き家率もここ18年で最も高くなって、香港の不動産市場に大きな変革がもたらされる可能性があると、サウスチャイナ・モーニング・ポストはブルームバーグ・インテリジェンスの最新レポートを引用して報じた。
世界で最も"高い"都市の1つからの大量流出
香港の生活費の高さや住宅供給の不公平はしばしば報じられてきた。富裕層が豪邸に何百億円という大金をつぎ込み、「ベルサイユ宮殿のような」別荘を建てる一方で、多くの市民は小さな「棺桶住宅」に住むしかなかった。
新型コロナウイルスのパンデミックや何カ月にも及ぶ社会不安ですら、香港の2020年の価格にさほど影響しなかった。家賃は2020年も高いままで、ロイターによると、その住宅価格は2019年5月から2020年10月の間に4%しか下がらなかった。
Lee Mumford/Agora
しかし、2021年は"別の話"になる可能性がある。2020年に民主化を求める人々が終身刑になる恐れのある香港国家安全維持法を中国が施行したことを受け、「BNO」として知られるイギリス海外市民パスポート —— これがあるとイギリスで生活することは可能になるが、自動的に就労する権利が与えられるわけではない —— を申請する香港市民が記録的な数にのぼった。
イギリス政府はこうしたパスポートを2020年が始まってから10カ月の間に、香港市民約20万人に発行していて、これは1分あたり約5冊のパスポートが発行された計算だ。
2021年1月、イギリスは香港市民に対して、イギリスで生活し、働くハードルをさらに下げた。政府の発表によると、BNOを所持する人たち向けに、イギリスに住んで働き、6年後に市民権を申請できる新たな特別ビザを導入した。この特別ビザは、香港の自宅からオンラインで申請することができる。
イギリス政府の調べによると、合計約300万人の香港市民にBNOを申請し、イギリスに移住する資格があるという。
中国はイギリスのこうした動きを非難し、中国はBNOをもはや有効な旅行証明として認めないだろうと述べた。
裕福な香港市民は、ロンドンの高級物件を購入している。
Dan Kitwood/Getty Images
移住ブーム
香港市民がここ1年でイギリスに流入したことで、ロンドンでは高級物件への需要が高まっていると、現地の不動産業者は2020年夏、Insiderに語った。
ロンドンで2020年に1000万ポンド(約15億円)以上で売れた家は、香港と中国の買い手に「独占」されていたと、高級不動産を扱うBeauchamp EstatesはInsiderが入手した1月のレポートで指摘している。
一方、ブルームバーグによると、香港では2021年、6万6683件の住宅が"空き家"のままになる可能性があるといい、2020年の5万2370件から大きく増える見込みだ。
「これは香港史上最大の移住ブームです」と香港の移住コンサルタント、アンドリュー・ロー(Andrew Lo)氏は3月、Nikkei Asiaに語った。
「18歳から80歳まで、社会のさまざまな階層の人たちが皆、移住について話しています」
[原文:Empty apartments and plummeting rents in the world's most expensive housing market: How the exodus out of Hong Kong could change its real-estate scene in 2021]
(翻訳、編集:山口佳美)