星野リゾートの「アメニティ調査」結果を踏まえ、星野代表はホテル業界の脱プラについて提言した。
オンライン取材よりキャプチャ
「日本もそろそろ、ホテル業界全体でアメニティの無料提供を廃止して、有料で必要な方に必要な分を販売するという形式に切り替えていったらいいんじゃないか」
星野リゾートが2022年4月13日に開いたオンラインプレス発表会で、星野佳路代表はこう語った。
プラスチック資源循環促進法(プラ新法)が4月1日に施行され、使用済みプラスチックの削減対応を迫られるホテル業界に向けた提言だ。
提言に至ったのには理由がある。星野リゾートがプラ新法施行直前に実施した、独自の「アメニティ調査」の結果だ。
星野リゾートは2022年3月29〜31日、首都圏(1都3県)の20〜69歳の男女1030人(直近1年間に宿泊をともなう国内旅行を1回以上実施)に対し、ホテルのアメニティに関する調査を実施。その一部を今回の発表会で公表した。
星野氏が一例として紹介したのは、ホテルのアメニティの代表格とも言える「歯ブラシ」に関する実態だ。
今回の調査で宿泊時に歯ブラシを持参するかどうか聞いたところ、持参するという回答が42.6%、持参しないが57.4%と、4割以上が、プラ新法の施行前から持参していることが明らかになった(【図1】)。
【図1】星野リゾートが実施したアメニティ調査より。プラスチック資源循環法施行前から、歯ブラシ持参で宿泊しているという人が4割を超えた。
出所:星野リゾート発表資料
この結果は、星野氏にとって意外だったようだ。
「思っていた以上でした。私たちのホテルには全室、人数分の歯ブラシを置いていましたが、すでに持ち歩いているという方が43%もいるというのは、非常に大きなこと」(星野氏)
ただ、環境意識が高く普段から積極的に実践しているかそうでないかで、回答に偏りが出る可能性もある。その点についてヒアリングした結果が【図2】だ。
【図2】質問に対する該当項目数が8〜10個の回答者を環境意識・行動が「高」、6〜7個が「中」、0〜5個を「低」に分けて分析。「高」が回答者全体の23.5%、「中」が36.7%、「低」が39.8%となった。質問の内容は「買い物にはエコバッグなどを持参」「ごみは必ず分別する」「ものを購入せず、レンタルやシェアで済ませる 」「タンブラー/水筒を持ち歩く」など10項目。
出所:星野リゾート発表資料
その結果を踏まえ、回答者に【図3】の説明文を提示した。
【図3】脱プラに関する取り組みについて、もしホテルがこんな提案をしたら顧客はどんな反応を示すのだろうか。調査では、好意的な反応が寄せられた。
出所:星野リゾート発表資料
「もしホテルがそうした提案をして、客室に歯ブラシなどのアメニティを一切置かないようにするとしたら、顧客はどう反応するだろうかということを調べました」(星野氏)
まずは、【図3】の提案をしたホテルに泊まりたいと思うかどうか。その結果が【図4】だ。
【図4】【図3】の説明文を読んでもそのホテルを選ぶかどうか。調査の結果は、環境活動が活発であるかどうかに関わらず、約4割が「選ぶようになる」と回答した。
出所:星野リゾート発表資料
普段から環境に配慮した行動を実践している「高」では「『選ぶようになる』に近い」「やや『選ぶようになる』ほうに近い」を合わせ、「選ぶようになる」という回答が5割超。
中・低においても「選ぶようになる」が「選ばなくなる」(選ばないほうに近い、やや選ばないほうに近いの合計)を上回り、環境活動が活発であるかどうかに関わらず「選ぶようになる」傾向にある、と取りまとめている。
「こうした提案、取り組みに対して、本当にネガティブに感じる方が意外と少ないんだと思いました」(星野氏)
さらに、【図3】のアメニティを廃止するホテルに対する印象については、その傾向がもっと顕著に現れている(【図4】)。
【図5】【図3】を読んでホテルの印象が良くなるのかどうか。過半数が「良くなる」と回答した。
出所:星野リゾート発表資料
環境活動に熱心な「高」の回答を見ると、7割近い人が「印象が良くなる」と回答。全体を見ても過半の人が「印象が良くなる」と答えている。
「環境活動をあまりしていない(低の)人でも、50%弱が(そうしたホテルに対する)印象が良くなると言っている。印象が悪くなるという人は非常に少ないんです」(星野氏)
この調査結果を踏まえ、星野氏は「社内を説得するのが大変で、星野リゾートとしての方針をまだ出せていない」としながらも、次のように語った。
「先ほど私が提案した取り組みについて、日本はもう踏み切れる段階に来ているんじゃないかと思っています。これを機に、全国のホテル業界の方々に『みんなでやろうじゃないか』と提言していきたいと思っています」(星野氏)
(文・湯田陽子)