地上1224フィート(約373メートル)からの眺めをしのぐのは難しい。インテリアデザイナーのケリー・ビアン氏はニューヨーク市マンハッタンにある超高層マンション、432パーク・アベニューの92階にあるペントハウスについて連絡を受けた際、そのような内装を試みることはしなかった。
「あの眺望と競争しようなんて、少しでも思ったらだめということね。本当に心奪われる眺めで、まるでこれまでで最も美しいニューヨークの映画を見ているような感じだから」と同氏は話した。
価格が4000万ドル(約45億4500万円)のマンションの内装について連絡があったのは「7カ月ほど前」だという。ビアン氏は通常、モデルルームのデザインはしないが、住宅用タワーとして西半球で最ものっぽのこの建物に足を踏み入れ「空間を見た瞬間にとりこになってしまった」と話す。「長い間、ニューヨークで暮らしてきたけれど、こんな眺めは見たことがなかった。最高」なのだという。
寝室3部屋で面積3977平方フィート(約370平方メートル)のこのマンションには、一辺が10フィートの窓が複数あり、それぞれが窓台を備えてそこに座って外を眺めることができる。「これで窓それぞれが部屋の中の目的地になる」とビアン氏は説明。奥行きのある窓が額縁効果ももたらしてくれ、そのまま見たらめまいが起きそうな眺めを「癒やし」に変える視覚トリックを演出するという。「高所恐怖症の人を知っているけれど、あのマンションなら大丈夫」と太鼓判を押す。
ビアン氏はまた、部屋に差し込んで常時変化する自然の光線によく合う色彩をアクセントカラーとして内装に使っている。
ここにはビアン氏デザインの注文ソファのほか、キッチンにアンナ・カーリン氏デザインのチェス型スツール、リビングにザ・ハース・ブラザーズのサイドテーブル、暖炉スペースの壁際にはアーティストのヨランド・バットー氏による作品が置かれ、これらも内装の一部に含まれる。
厳密に言えば最上階を4階分下回るものの、このマンションはペントハウスの一部と見なされる。96階にある8255平方フィートのマンションは最近、8770万ドル(1平方当たり1万623ドル)で売れたと伝えられ、それと比較すれば1平方当たり9995ドルはバーゲン価格だ。ただし、ビアン氏が選んだ家具はこの価格に含まれていない。
買い手が誰であろうと、ビアン氏はこの空間に「愛着を感じるようになった」という。「素敵な人の持ち物になるといい。そして、私を招いてくれるといいけれど」と話した。