クルマで寝る旅スタイルが車中泊。近年ではサイクリングと組み合わせて楽しむスタイルも増えてきた。車中泊をするメリットとは? そもそも車中泊ってどこでできるの? 必須アイテム、快眠するコツ、マナーに関することなど、これから車中泊を楽しみたいサイクリストが知りたい情報を、車中泊専門誌「カーネル」の大橋保之編集長に聞いてみた!
宿代わりの車中泊から、旅としての車中泊へ
24時間トイレや電源などを備えているRVパークを利用すると安心。公認された車中泊駐車場だ車中泊とはクルマの中で睡眠をとること。早朝にポイントに到着したい釣りや、夜に移動してゲレンデのオープンから滑りたいスキーなどで、以前から行われていた。
自転車イベントやレースの前日入りなどで車中泊をすることも多い。そもそも車中泊は、なにか目的があって、そのために行う仮眠的なものが多かった。
また車中泊というと、貧乏旅行だったり、一歩間違うと路上生活に近いようなネガティブなイメージも以前はあった。
しかし、手軽かつフレキシブルにアウトドアの旅が楽しめるとあって、徐々に車中泊人気が増加。さらに、キャンプの進化系として、キャンパーたちがSNSで車中泊スタイルを披露したため、車中泊がより注目されるように。今は車中泊そのものをポジティブに楽しむ風潮になってきており、環境も整備されつつある。
ただし人が多くなるとマナー違反も残念ながら増える。守るべき基本を押さえて自転車乗りも車中泊を旅に取り入れてみよう。
車中泊のメリット
防災に車中泊の経験を生かせる近年は自然災害も目立つ。家が被災するなどして、車中泊を強いられることもないとはいえない。そんなときつちかった経験が生きる。
リーズナブルに旅できるまず宿代がかからない。すぐ走り出すので睡眠さえとれればという場合、車中泊で十分。装備も、DIYや百均アイテムを使うなどアイデア次第で安くあげられる。
テント泊ほど荷物が必要ないので自転車を運びやすいテントを使う通常のキャンプと比べると、車中泊なら圧倒的に荷物が少ない。荷室に余裕があるので自転車を運びやすい。
公共交通機関を使わずソロでツーリングを完結できる輪行のように鉄道なども使わずに移動でき、また宿にも泊まらない。遠方でのツーリングをある意味バブル方式で完結。
旅がフレキシブルになる宿の予約もいらず、宿にしばられない。近くのパーキングエリアで仮眠して現地へ向かうなどスケジュールも自由自在。
テントなどの撤収の必要がなくラクテントの設営や撤収など、手間をスルーしてサイクリングに集中できる。とくに雨での撤収などテントより車中泊のほうがだんぜんラク。
※ただし、就寝スペースの確保は必要
朝イチからサイクリングできる週末の場合、移動に金曜日の夕方〜夜間を有効に使えるので、サイクリングに絶好の場所で朝から走り出せる。
初級者はRVパークがオススメ
快適に安心して車中泊できる場所を提供するために、日本RV協会が推進しているRVパーク。道の駅やオートキャンプ場、日帰り温泉施設などに併設され日本各地に増え続けている。駐車場での車中泊を公認されている場所で、一泊2000円ぐらいから利用できる。以前は、車外での調理などは基本的にできなかったが、現在では施設によってはたき火ができたり、タープなどを使用できるRVパークも増加中。オートキャンプ場なら、もちろん車中泊もできる。
パーキングエリアや道の駅で泊まれる?
基本的に道の駅や高速道路のパーキングエリア/サービスエリアは、ドライバーの休息場所という位置づけ。なので、あくまで仮眠ということで睡眠をとることはできる。場所によっては入浴施設やコインシャワーが備えられていることも。ただし道の駅にクルマを置いてサイクリングに行くなどは、他の利用者の迷惑になるのでやらないように。
必須アイテムは?
三種の神器をあげるなら、マット、寝袋、シェード。まずは、クルマの中で脚を伸ばせるスペースを確保し、そこにリラックスできるマットを敷く。あとは季節に応じた温かさの寝袋。夏場ならブランケットや厚手のタオルでもいい。もちろん家で使っているものでもOK。
そして外からの視線をさえぎるシェードは、ココロのリラックスにやっぱり必要。クルマの窓ガラスに貼って、目隠しにするほか、断熱性も考えて厚みのあるものを使用したい。各モデルに対応した既成の製品もあるが、安くすませられる自作もよく行われている。
向いているクルマは?
車内で快適に寝るために考えられたキャンピングカーが快眠への近道なのはまちがいない。現在では、愛車をDIYで自分流にカスタムする人も増加中。自転車を積載するための装備や就寝用ベッドなどを装着。オリジナル仕様に換装する楽しみも車中泊のプラスアルファの魅力といえるだろう。ベース車両としては、トヨタ・ハイエースや日産・NV350キャラバン、そして軽バンなど、ワンボックスカーの人気が高い。さらに、無改造の一般車でも車中泊はもちろん可能。車種によって、シートで寝るか、ラゲッジで寝るかで快適度は異なるので注意。いかにフラットかつ水平な寝床を確保できるかがポイントといえ、「誰が何人寝るか?」でも大きく変わる。クルマや人数によって工夫するのも、車中泊のだいご味といえる。
暑くて寝苦しい季節はどう車内で寝る?
夏季の暑いシーズンは、寝る場所の標高を上げるテクニックがある。標高が100m上がると0.6℃気温が下がる。1000m上れば6℃下がるので、平地で29℃なら23℃となりかなり寝やすくなる。ニトリなどの涼感寝具を使う手も。最近はポータブルバッテリーやポータブルクーラーなども進化してきており、クルマのEV化も合わせると、車内で電気が使えることで近年かなり快適になっているはず。また冬季は、クルマの中は思った以上に寒い。厚みのあるシェードでガラス窓からの冷気をブロックする。ポータブルバッテリー+電気ブランケットなど火を使わない暖房器具も有効だ。
守るべきマナーは?
車イスマークに停泊しない屋根付きで広くても車イスマークの駐車スペースには停泊しないこと。また大型車エリアにとめるのもルール違反。
トイレなどの設備はきれいに使うこれも当たり前のこと。ましてやトイレットペーパーやソープなど装備を持ち去るなどもってのほか。
道の駅やサービスエリアなどでキャンプ行為はしないこと道の駅やサービスエリアなどはキャンプサイトではないので、車外での調理などキャンプ行為はNG。道の駅やサービスエリアなどでは長期滞在もしないこと。
ゴミは持ち帰る車中泊の旅でたまったゴミを、道の駅やパーキングエリアに持ち込んで捨てるのは不法投棄。
基本的にアイドリングはしないエンジン音、音楽や会話、ペットなど、騒音で注意すべき点は多い。環境面、騒音面を考慮して、アイドリングストップは車中泊の基本だ。とはいえ、猛暑や大寒波などで命にかかわる異常気象の場合は、迷わずエンジンオン。命より大切なマナーはない。ただし、本来はそうなる前に車中泊は諦めて、安全な建物に避難すること。
教えてくれたのはこの人
カーネル編集長/大橋保之さん
車中泊専門誌などを発行するカーネル株式会社代表取締役。キャンプ誌「ガルヴィ」(実業之日本社)の編集長も兼任。車中泊ブームでひっぱりだこだが、じつは編集部員としてBCにかかわっていたことも。車中泊やキャンプ情報を発信するWEBメディア『SOTOBIRA(ソトビラ)』も運営。
※この記事はBiCYCLE CLUB[2021年10月号 No.438]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。