7月11日の「セブンイレブンの日」、一人の元セブンオーナーの遺体が見つかった。今年3月31日に閉店した東日本橋1丁目店の齋藤敏雄さん(享年62)。家族との関係が崩れ、閉店後は生活保護を受けながら一人で暮らしていたという。
対照的なことに、セブンはこの日、沖縄進出を果たし、全都道府県への出店を完了させた。メディアでは晴れ晴れとした表情の沖縄のオーナーたちが紹介されていた。
齋藤さんも2010年に店舗をオープンしたときは同じ気持ちだったようだ。生前の本人によると、売上を少しずつ伸ばし、近隣にある他チェーンが撤退していったという。家も購入し、より良い生活ができると胸を膨らませていた。
しかし、2013年に店から100mほど先にセブンの別店舗ができてから状況は一転。利益が減り、従業員の取り合いも起きたという。最終的には店を中心とした半径200mほどに別のセブンが4店舗あった。
閉店後は、近距離に複数店舗を出店する「ドミナント戦略」の弊害を訴え、記者会見も開いていた。
●店舗跡地には近隣住民による献花台
店の跡地には、7月19日から近隣住民らによって献花台がつくられている。時折、訪れた人によって、枯れた花が処理され、新しい花が供えられている。
一方、四十九日を過ぎたことから、ビル管理会社とセブン本部は献花台の移動を求めている。テナントの契約が切れるためだ。
●自殺は誤り
なお、東日本橋1丁目店では、2014年に夜勤明けの長男が自ら命を断っている。齋藤さん自身も今年2月末、本部から閉店を告げられると、家族に保険金を残して死のうと北海道に一時失踪していた。
遺体がセブンイレブンの日に見つかったこともあって、献花スペースには「自害」とする文書などが置かれ、ネットにも自殺という情報が流れている。
しかし、妻の政代さんに司法解剖の結果を見せてもらったところ、死因は「病死及び自然死」。急性虚血性心不全の疑いがあるという。自殺が疑われるような異常は見つかっていない。
生活苦もあり、齋藤家は2018年に別居。家族の協力が得られないため、齋藤さんは売れ残ったコンビニ弁当を食べて長時間働いていた。糖尿病や心臓の持病があり、勤務中に緊急搬送されたこともあった。しかし、人手不足ですぐに現場復帰していた。
こうした働き方が少なからず身体を蝕んでいったのだろう。
●相次ぐオーナーの死
齋藤さんには献花台がつくられたが、死亡したことが表にならないコンビニオーナーは少なくない。
たとえば、セブン共済会の資料によると、2012年7月1日〜13年6月31日の1年間に支払われた「弔慰金」は43件で平均2120万円ほど、従業員の「死亡保険金」は4件で平均1550万円ほどだった。直近の共済会資料では、弔慰金などの内訳はなくなっている。
社労士で元経産省職員の飯塚盛康さんは、書籍『コンビニオーナーになってはいけない』で、セブン共済会と中央省庁のグループ保険を比較した。取材に対して次のように話す。
「2012年度のセブンの店舗数は1万5072店。未加入の店舗もあり、仮に加入率が50%とすると死亡保険事故率は0.57%(弔慰金のみで計算)です。これは激務で知られる経産省の約6倍になります」
コンビニ加盟店ユニオンなどによると、今年に入ってからも青森県や群馬県などでセブンオーナーや従業員の死亡が報告されているという。
業務との関係性などについて、セブン本部は「遺族のこともあり、コメントは差し控えたい」としている。
亡くなる原因はさまざまだし、加盟店の経営力や家族関係が影響する部分もあるだろう。だが、現状のコンビニ業界では「オーナーは命を縮めやすい仕事」とは言えるはずだ。