息苦しいほどに暑い8月のデーゲームで、33歳が若手に交じって右腕を懸命に振っていた。横浜DeNAの三嶋一輝投手(33)。難病の手術から驚異の回復ぶりを示して開幕1軍入りすると、救援陣の一角としてシーズン序盤のチームの好調を支えた。しかし6月末に出場選手登録を外れると、以降はファームで調整を続けている。今、1軍は苦境にある。胸中を聞いた。
躍動の影で「体は悲鳴」
表情と声は明るかった。「上(1軍)で投げていた最後の時よりも状態はいい。真っすぐも151、2キロは出ている。あとはちょっとしたことだと思う」。7月末には1週間で4試合に登板するなど、調整は順調のようだ。「早く状態を戻して上がってきてほしいということだと感じるし、そうしなきゃいけない」
春はチームの順位を映すように三嶋の投球も順調だった。4月だけで3勝を挙げて、12試合連続無失点も記録した。国指定の難病である黄色靱帯(じんたい)骨化症の手術からの復帰を目指す最初の1年であることを忘れさせるような躍動だった。その影で、メスを入れた体は少しずつ、しかし確実に悲鳴を上げていたという。
「正直に言うとだいぶ疲れがあった。投げた後の体の張りやバランスはやっぱり手術前と違うし難しい。朝起きた時に、今までこんなにしんどかったかな。何でこんなに体が動かないんだろうって」。術前に投げていた自身のボールはもちろん覚えている。だからこそ、「こんなもんじゃないのにな、もっとできるのにな」という葛藤が渦巻いた。
三嶋は「自分しか分からないと思う」とこぼす未知の領域で、自身の体と向き合っている。そして、もちろん分かっている。「プロとして戦うなら準備とかで補っていかないといけない。甘えるつもりはない」。今の体に合ったトレーニングを模索する日々だという。
過酷さ知るからこそ
三嶋が1軍を離れて以降、救援陣の苦境が続いている。山崎はクローザーから配置転換。伊勢や入江も苦闘が続き、連動するようにチームはついに4位に転落した。「リリーフ陣はみんなしんどそう。それは感じている」。戦っている場所の過酷さを知るからこそ胸を痛めている。
プロ11年目。クローザーにセットアッパー、開幕投手だって務めた。何度壁に当たっても、投げ続けてきた。「経験のある人間だからこそ何とかチームを鼓舞できるようにしたい。(1軍に)戻った時にリリーフ全体の状態が上がるような選手にならないといけない」。横須賀でその時を待っている。
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