世の中に流通しているあらゆる商品やサービスには、それを購入した消費者とメーカー側をつなぐカスタマーセンターが設けられている。電話する側はその商品やサービスの企業に電話していると思って話してしまいがちだが、実はカスタマーセンター業務を外部委託するケースはとても多い。そしてコロナ禍でEC事業がますます拡大する中、そのニーズも増加傾向にあるという。
通販システムの初期設定や倉庫選定、バックヤード対応、入金確認まで対応する
カスタマーセンターの役割として真っ先に思いつくのは、商品についての疑問や質問、時にはクレームなどにも対応する電話窓口業務。だがそれだけにとどまらず、通販に関係するさまざまな業務を担うケースもある。
「コールセンターといってしまえば電話だけの業務に思われがちですが、我々の業務では通販ビジネスを始めたい企業様のサイト制作にはじまり、システムの初期設定や倉庫選定まで行っています。カスタマー窓口としてはECからの問い合わせ注文、定期解約、注文キャンセル、ギフト、使用後のお悩み相談、ECバックヤード対応、受発注の処理や入金確認など。ほかにもメールやチャットでの窓口業務にも対応しています」
こう語るのはカスタマーセンターのアウトソーサー企業「キャトル・ペンシー」代表・筒井大和氏さん。こちらでは通販事業における倉庫との連携や受発注業務など、通販の工程業務のほとんどをワンストップで対応。それを強みとして、現在大きな注目を集めているのだ。
キャトル・ペンシー代表・筒井大和さん。写真は周年パーティーでの一コマだそう。
「当社はこういったフルフィルメントの対応実績が豊富にあることから、たとえ依頼業務範囲内が限られたとしても、全体を見据えたご提案ができるのが強みです。単なる下請けではなくパートナー企業としての関係性を築き、事業拡大という側面でも最短距離をつねに考える。その一環として時には弊社の目先の利益にとらわれず、コールセンターの縮小を提案することもあります」(筒井さん)
筒井さんはこの自社の方針について「待たずに動く提案型のカスタマーセンター」と命名している。現在、カスタマー対応だけであれば、AIを導入すればある程度の対応が可能になっており、お客様からの反応や口コミを集めたければ、誰でもSNS上で自由に検索することもできるだろう。そんな時代だからこそ、人対人で対応するカスターセンターに求められるのはどういった役割なのか?キャトル・ペンシーはつねにそれを問い続けているのだ。
クライアントとお客様、中立的な立場だからできること
そもそも企業にとってカスタマーサポートというのはどういう位置づけなのか?それについて筒井さんは「会社の顔であり、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)が一番集まる場所」と断言する。VOCとはいわゆる顧客の声。どんなクレームでも企業にとっては、“貴重なご意見”なのだ。
「収集されたVOCというのは、ポジティブなものとネガティブなもの両方あると思いますが、SNSで誰でも発信できる口コミとは、密度は違うと思います。たとえ少数でも優良なものが多いですし、一対一のコミュニケーションで得られる情報や価値は、むしろ現在のほうが高まっているのではないでしょうか」(筒井さん)
またカスタマーサポートの現場を総括するキャトル・ペンシーの鹿兒嶋央寛さんは、現場の立場でこう語る。
「コールセンターはクレームが多いというイメージがあると思いますが、少ないか多いかといわれれば、やはり多いです。とはいえ今の時代にメールやチャットで済ませるのではなく、わざわざ電話をかけてくるからには、何かよっぽど言いたいことがあるのだろうと思っています。もちろんクレームを言われるのは精神的にきついところはありますが、我々は受注側のクライアント様側ではなく、ある意味お客様の間にいる中立的な立場。両方の側にも立てる、クレームもよりよいものにできると自負しています」
自分たちがストレスを抱えていたら、電話の奥にいる方にハッピーは与えられない
キャトル・ペンシーが目指すのは、人と人との想いのこもったコミュニケーション。それを達成する方法として徹底した“オペレーターズ・ファースト”を理念にあげ、アルバイトでもプライベートの趣味にかかる費用を補助する「文化手当」を支給している。
キャトル・ペンシーの平均年齢は30歳と若い。
「人生で知らないことに手を付ける習慣がないと自分の範囲内だけで動いてしまい、学びも気づきも少なくなる。映画や読書によって自分の人生を豊かになれば、仕事にも絶対にいい影響があると考えています。おかげで弊社は離職率も低くて長く働いてくれるし、そうなるとスキルも上がる。そう考えると安い投資だと思っています」
こう語るのは、副社長兼営業部長の西寿理さん。ほか従業員には資格取得のための費用を負担したり、誕生日に追加で有給休暇が取得できる制度もあるという。さらに筒井さんも続ける。
「自分たちがストレスを抱えていたら、電話の奥にいる方にハッピーは与えられない。それは創業当時から考えていることです。それはすべてのクライアント様とお客様に喜んでもらえるベースと考えています」
EC事業の最先端を担い、つねに顧客の声に耳を傾けるカスタマーセンター業務。これらを担うアウトソーサー企業は今後ますます存在感が高まるだろう。今回お話を伺ったキャトル・ペンシーの強みは将来、EC業界にどのような影響をもたらすのか? この先も注目したい。
キャトル・ペンシー
取材・文/高山 惠