土曜日の朝、大阪で生放送を終え、
駐車場からタクシーに乗り込もうとした時、母から着信があった。
「おばあちゃんが亡くなったの」
すぐには理解できなかった。
コロナが落ち着いたら、会いに行こうと思ってたのに。
私が小さい頃、母方の祖母は、高台の一軒家に一人暮らしをしていた。
庭からは街の風景を見下ろすことができて、
中央線の電車が通るたびに、家の中まで音が聞こえてきた。
とにかく明るくお喋りで、
保育士をしていたので、よく童謡を歌ってくれた。
3歳年下の妹が生まれる時、私はこの家にひとりで預けられていた。
母と離れるのは初めてで、心細かったのだと思う。
居間の隅に布団を敷いてもらい、
当時大好きだった、バイキンマンとドキンちゃんのぬいぐるみを、
顔の両側に置いて眠っていた。
トントントンという音で目を覚まし、台所のほうを見ると、
エプロンをした祖母が朝ごはんの支度をしている。
この風景が、私の中で、最も古い祖母の記憶。
まだ幼稚園に入る前のことで、それ以外のことは何も覚えていないのだが、
その瞬間の風景だけは、今でも鮮明に蘇る。
本当にパワフルな人だったから、
100歳まで生きるんじゃないかと、家族皆で笑いながら話していた。
ちょっと早かったんじゃない。
まだまだ話したいことがあったのに。
写真は、祖母と1歳の私。
おばあちゃん、また会おうね。
その時まで、ゆっくり待っていて。
Natsumi Uga
テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年よりフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初の冠番組『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日)、『テンカイズ』(TBSラジオ)、MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)などに出演中。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事はDIME7月号に掲載されたものです。