専用のバランス電源でハイレゾ音源の高音質を引き出すOJI SpecialのDAC「8128B DDAC Unit」と独立電源ユニット「BDI-DC PS1」
■連載/ゴン川野のPC Audio Lab
独立電源で静けさを追求したハイエンドDAC
OJI Specialは国産ハイエンドメーカー山陽化成のオーディオブランドである。同社はヘッドホンアンプの音を追求するために、データプレーヤー、DAC、マスタークロック、クロック同期システムなどをトータルで製品化している。
今回、発売されたのは外部クロック同期型のDACユニット「8128B DDAC Unit」とそれを駆動するための独立電源ユニット「BDI-DC PS1」である。この2製品はペアで使う事が前提となっている。OJI Specialのポリシーである完全バランス出力により、広いダイナミックレンジと高いS/Nを手にした製品で、独立電源ユニットは左右独立大容量電源を搭載して合計4つの機器への電源供給がおこなえる。

上からデジタル接続のためのDDC「8128B TCSS Unit」、独立電源ユニット「BDI-DC PS1」、DACユニット「8128B DDAC Unit」

ヘッドホンアンプには4トランス8電源の「BDI-DC44B2」を使用した
総額250万円超えのシステムから静寂が生まれた!
設計者の西尾仁孝さんによれば、DACの問題点はデジタル信号とアナログ信号の両方を扱うため、互いの回路が干渉して悪影響を与えるノイズ源となってしまうことだという。これは電源部にも言えることで、理想はデジタル用電源とアナログ用電源を分けることだ。「BDI-DC PS1」は独立したアナログ専用電源でMILスペックのコネクタを採用した専用ケーブルを使って「8128B DDAC Unit」に電源を供給する。160VA×4という大容量を確保しているが、さらにハイコスパな1つの機器のみに電源を供給する100VA×1の独立電源の製品化も検討されている。
「BDI-DC PS1」は電源のアースに乗ってくるノイズに注目して、これを徹底的に抑える設計になっている。他のオーディオ機器がアース付きのプラグを使っている場合は、コンセント経由でアースが共有され大問題になっていることもあるという。それでは、徹底したノイズ対策がおこなわれたシステムの音はどう変化したのだろうか、早速、試聴してみよう。
ヘッドホンはbeyerdynamic「T1 2nd Generation」を接続。Tony Bennett、Diana Krall「Love Is Here To Stay/'S Wonderful」のCDを聴いた。オープン型のヘッドホンで聴いているのだが、S/N感が良く繊細で粒立ちのいい音が、空間から浮かび上がって来るようだ。試聴環境がもっと静かで、密閉型のヘッドホンを使えばさらに静寂感が際立つに違いない。同じ楽曲をPCMのハイレゾ音源(96kHz/24bit)で改めて聴いてみると、その情報量の違いに驚く。別のシステムで「BDI-DC44B2」を聴いた時はCDでもこんなに音がいいのかと驚いたのだが、今回はハイレゾとCDの音の違いが明確に現れた。ハイレゾ音源では空間が広々と感じられ、男性ボーカルの出音から違いが分かる。音の粒子が細かくなった分だけ緻密さが増して、細かい響きやボーカルのニュアンスが再生され、音全体の密度感が高まっているため繊細なだけでなく声の厚みボディが感じられる。
ヘッドホンを持参したAudioQuest「NightHawk Carbon」に変更すると、中低域に厚みが出て、音の輪郭がハッキリ描かれるようになった。静寂感に関してはノイズフロアが下がり、ダイナミックレンジが広くなったように感じられる。情報量と静寂感に関しては、ヘッドホンアンプの上流にある「8128B DDAC Unit」+「BDI-DC PS1」の実力が発揮されたと考えて間違いないだろう。ヘッドホンを聴くためだけに、これだけシステムを拡張するのにはやや抵抗があるが、新製品はDACなので、メインシステムに接続すればスピーカーでの再生もできる。そう思うと夢が広がる。機会があれば、静寂の中から空間に浮かび上がる音をスピーカーでも体験してみたいものだ。

ヘッドホンはbeyerdynamic「T1 2nd Generation」とAudioQuest「NightHawk Carbon」を使用
写真・文/ゴン川野