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今年最も活躍し、メディアをにぎわせた人物に贈るDIMEトレンド大賞「話題の人物賞」に神田松之丞さんが輝いた。今年で32回を数えるトレンド大賞の歴史の中で、講談師への贈賞は今回が初となる。500年以上続く伝統芸能でありながら近年は〝消えゆく文化〟と嘆かれた講談界に再び火を灯した稀代の新星に、ブレークの理由をたっぷりと語ってもらった。
講談師
神田松之丞さん
1983年生まれ。2007年11月、三代目神田松鯉に入門。2012年、二ツ目昇進。2017年よりTBSラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』(毎週金曜21:30~22:00)がレギュラー化。2018年に第35回浅草芸能大賞新人賞、2019年に平成30年度花形演芸大賞金賞を受賞。2020年2月、真打ち昇進とともに六代目神田伯山を襲名予定。近著に『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)、CDに『松之丞ひとり~名演集~』(SPACE SHOWER MUSIC)がある。
落語の観客に講談はおもしろいと思わせたかった
「すべて結果論ですから」と謙遜するが、ここ数年の躍進は目覚ましい。100年にひとりの天才、今、最もチケットが取りにくい講談師――その芸を一目見ようと、連日寄席の前に若い観客たちが長い列を作る。
「当時は、落語と講談の間に厚い壁を感じていました。新規客の多い落語と比べて、講談は年配の常連客ばかり。新規のお客様は根づくことなく、落語のお客様が講談に流れることもありませんでした。その壁を取っ払う講談師がほしいと思ったんです。若くて生意気で、演芸に精通して、しかも落語家以上に枕(本題に入る前の話)がおもしろい。そういう講談師が現われたら、落語のお客様は講談を聞きにくるはずだ、と」
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講談は言葉で聞き手を物語へ導く稀有な芸能
「寛永15年の~などと、いきなり本題を切り出せば、新規のお客様は物語に入り込めないわけです。講談の魅力はいろいろありますが、一言でいえば共感の芸。壮大なセットを組んで物語の世界を作り上げる映画に対して、講談はたったひとりの人間の話す言葉でイメージをかき立て、物語の世界へと引き込む稀有な芸能。これを成立させるために、野暮にならないギリギリのところまで情報を補足しながら、話の筋を現代にわかりやすく噛み砕くように努めています」
「私の高座を聞きに来たお客様は、ただ座っているだけでいいんです。高座に上がって5~6秒以内に1回笑っていただけたなら、あとは話に引き込みやすい。演芸の世界では〝呼び屋〟と呼ぶんですが、講談という文化に初めて触れるお客様に対してアプローチしている講談師は、私のほかにいなかったのかもしれませんね」
本当のブレークは少し先の未来にある
「腕のある先生方を、私を通して知っていただけたらうれしいです。コツコツと講談界で尽力した先生が目立つのは業界にとって大事なことですから。僕はまだ未熟ですが、現代人にわかりやすく、おもしろい話を聞かせる〝呼び屋〟であり続けることに矛盾を感じませんし、ほかに担う人がいないので。
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松之丞さんは「渋谷らくご」2014年12月の会より出演。落語家10人、講談師1人のユニット「成金」など、落語家と積極的に共演することで、落語と講談の壁に風穴を開け続けた。
取材・文/渡辺和博 写真/橘 蓮二(高座)