高所得と自信の強さが関連
お金で幸せを買えるか否かについては賛否両論あるが、少なくともお金を持っていることは自信の強さに関連する、という研究結果が報告された。
これまでの5件の報告をまとめて分析した結果であり、米国心理学会(APA)発行の「Emotion」に3月4日掲載された。
調査対象国162カ国、対象人数160万人以上に及び、論文の筆頭著者であるシンガポール国立大学のEddie Tong氏は、「このテーマに関するこれまでで最も包括的なデータ解析の結果である」としている。
この研究によって、収入の高さは、自信や決断力のような自分自身に対するポジティブな感情などと関連していることが分かった。
反対に、収入の低さは、悲しみや不安、羞恥などのような自分に対するネガティブな感情と関連していることが明らかになった。しかしその一方で、他者への感謝や思いやり、怒りなど、人間関係に根差した感情とは、収入の多寡との一貫した関連が認められなかった。
5件の研究のメタ解析から、収入の多さは自分へのポジティブな感情と正相関し(r=0.12、95%信頼区間0.10~0.14)、自分へのネガティブな感情とは逆相関していた(r=-0.13、同-0.13~-0.13)。
また、収入と包括的なポジティブな感情との間に正の相関が見られた(r=0.08、同0.06~0.10)。ただし、包括的なネガティブな感情とは相関がなかった(r=0.03、同-0.05~0.00)。
この結果は、より高い収入がこれらの感情を引き起こすことを証明するものではなく、それらの間に有意な関連性があるということのみを表している。
ただしTong氏は、「高い収入がわれわれのポジティブな感情と関連しているという事実を過小評価してはならない。より多くのお金を持っていることは自信と力強い決断の支えとなる。その一方で、収入が少ないことは自身へのネガティブな感情に関連している」と、APA発行のニュースリリースの中で述べている。
今回の解析に含まれた5件の研究のうち1件は、4,010人の米国在住成人を対象に、収入の多寡と感情の変化との関連を縦断的に検討していた。
ベースライン時点の高収入は、約10年後に自分に対してポジティブな感情を持っていることの有意な予測因子であり(β=0.08、P<0.001)、自分にネガティブな感情を持たないことの有意な予測因子だった(β=-0.07、P=0.002)。
これらの結果を総括してTong氏は、「人々の収入を増加させながら経済を拡大する政策は、個人の幸福感を後押しするかもしれない」と語っている。
ただし同氏は、「高収入であることは、思いやりなどの他者との協調とは関連しない。そのような政策が、社会の調和の形成につながるものではない」とも述べている。(HealthDay News 2021年3月5日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.apa.org/pubs/journals/releases/emo-emo0000933.pdf
Press Release
https://www.apa.org/news/press/releases/2021/03/higher-income-pride-confidence
構成/DIME編集部