HTCのVIVEでのVR体験を快適にする純正アクセサリー「VIVE デラックス オーディオ ストラップ」(以下、オーディオストラップ)の評判が良い。アミューズメント施設でVIVEとオーディオ ストラップを使用するところも多く、目にした方、体験したことがある人は多いのではないだろうか。
本製品の価格は1万2500円と、アクセサリーとしては若干高価に感じるかもしれない。しかし、実際に使用してみたところVIVEの必需品と言える程の大きな満足感を与える製品だった。
では、オーディオ ストラップの優れた点は一体何なのだろうか。HTCはオーディオストラップの利点を下記の表現で謳っている。
・フィット感の調整を簡単に行えるダイヤルと、安定感のある構造
・高さと角度の調節が可能なヘッドフォン付き
・HMDの重さが分散され、ケーブルの取り回しが改善
実際の使用感としても、概ね上記に同意できる。装着した際のヘッドマウントディスプレー(HMD)全体の「重量バランス」の最適化と、人を選ばずジャストフィットする「装着感」の向上を体感できる。さらに、上記に記載されていない大きな魅力として「HMD装着の時短」も可能となるスグレモノだ。
ユーザー体験は非常に優れている本製品だが、HMD本体への付け外しでやや苦戦する方も少なくないだろう。取り外しも何回か行なって馴れると簡単だが、これから購入しようという人のために、改めて取り付け方法について解説したいと思うので、ぜひ参考にして欲しい。
まず最初にVIVEに初めから取り付けられている標準ストラップを取り外そう。本体側面にある「VIVE」と記載されているバックルを下に回すと「カチッ」という音がして、そのままバックルを外すことができる。左右両方のバックルを外したらストラップを外すことが可能だ。
次にVIVEの本体上面にある「HTC」と書かれたカバーを取り外す。このカバーはやや固めだが、多少力を入れて前に滑らせるようにすると外すことができる。
カバーを外すと端子にケーブルが接続されているのが見える。向かって一番左側にある音声ケーブルのみ端子から取り外そう。そして、オーディオ ストラップの左側から伸びているケーブルを、先ほど外した音声ケーブルの端子に接続する。
注意点としては、各端子の間のスペースが狭いので、無理やり接続しようとして、ケーブルを傷つけないように気を付けたい。また、オーディオ ストラップの頭頂部を固定するバンドは、先ほどの「HTC」と書かれたカバーに通して固定する。このバンドも頭が大きい人や小さい人に合わせて長さを調整できる。頭の小さい方に体験してもらう際には覚えておくと良いだろう。
ここまでくれば、オーディオ ストラップの取り付けは、ほぼ完了だ。ケーブルは右のヘッドホンの上にあるクリップで固定する。クリップにはケーブルをはめ込むことができるようなスペースがある。そのスペースにケーブルを通す。さらに、VIVE本体の後ろにあるマジックテープを使い固定して、ケーブルのまとめも完了。
最後にVIEの両側面にオーディオ ストラップのバックルを取り付けたら完了だ。このバックルはカチっと音がするまで上から押し込めばOKだ。上手く取り付けられれば本製品を上に持ち上げる様に動かすことができる。装着する際はオーディオ ストラップを上に持ち上げて、VIVEを自分の目の位置に合わせた後に固定する。
この一連の取り付けの流れも、馴れれば5分も掛からずに終わらすことも可能だ。展示用などに複数台のVIVEにオーディオ ストラップを取り付ける場合であっても、それほど時間は掛からないだろう。
オーディオ ストラップは一見すると固めのプラスチックだが、プラスチックの内側には柔らかいクッションが備わっているので、着け心地は快適だ。頭の後ろにあるダイヤルでヘッドバンドの締め付けを調整でき、「少し締めすぎかな」と思う程度にキツクしても、締め付けられる感覚が少なく、しっかりとホールドすることができる。
VIVE標準のゴムバンドよりも装着感はしっかりしており、展示会などで他人に装着する際にも大きな利点となる。VIVEのルームスケールの特性を活かした激しく動くVRコンテンツを体験をしたり、初めてVRを体験するユーザーが驚きのあまり頭を激しく動かしても、外れにくいのでとても魅力的だ。
自分で使用する場合と違い、他人に体験してもらう場合には安全面には気を付けたいところ。展示会やビジネス・サービスでVIVEを使う場合に考えなければならない安全面対策でもオーディオ ストラップは大きな力を発揮する。
ルームスケールの話が出たので、ベースステーションを設置するのに便利な製品にも触れてみたい。ルームスケールは、2つのベースステーション間を実際に移動することで、VR内でも移動が可能になる機能。ベースステーションは三脚などのスタンドを使って設置するか、壁に穴を開けて直接埋め込むこむ。ルームスケールの最小構成は2×1.5mで、三脚はその範囲外に置く必要があるため、実際にはその最小構成範囲よりも、広いスペースを取ってしまう。ベースステーションの設置箇所は高さ2mという制限もあり、日本の狭い住宅事情では、三脚を立てるのも難しいこともある。また、壁に穴を開ける方法では、できる限りキレイに部屋を使いたい人にとっては厳しく、よしんば容認できたとしても、部屋の構造によっては穴の開けられる壁を見つけることが困難だったり、そもそも賃貸で穴を開けることがNGという部屋に住んでいる人もいるだろう。
そんなベースステーションの設置だが、下記で紹介する「クリップ式の雲台」を別途購入して設置する方法もある。これなら棚やカーテンレールなどにベースステーションを設置できる。価格も三脚を購入するよりも安価な上、クリップも硬めなのでしっかりとベースステーションが固定できる。
VRの体験中にベースステーションが動いて揺れてしまうと、直接的な酔いの原因になるので、しっかりとした固定は重要だ。また、ルームスケールの設置方法などはVIVE公式のチュートリアルが参考になる。
ベースステーションの設置に便利なクリップ式の雲台
・HYPERKIN VR Quick Clip for HTC VIVE VR機器用クランプマウント(1963円)
・MyArmor どこにでも挟める クリップ式 雲台(860円)
装着し易すく、装着感も良好なオーディオストラップだが、ではオーディオの性能はどうなのだろうか。オーディオについては個人の好みや趣向性も大きいが、オーディオストラップは高音、中音、低音までよく聴こえるように設計されていて、非常にバランスの取れた音が楽しめるようだ。これは幅広い用途のユーザーに適した音の出し方を追求した結果だろう。
バランスのとれた音の出し方の場合、低音が弱く聴こえるケースが多いが、本製品は低音の出力も十分。また、音の空間性の広がりもあり、とても聞きやすい印象だ。人の声などもクリアーで聞き取りやすい。ただし、重低音の響きはやや弱めなので、FPSなどのゲームで爆発音やズンズンと響くような重低音を求める人には、重低音を重視したヘッドホンを使うと良いだろう。
試しに「Fruit Ninja VR」をオーディオストラップで体験してみたところ、日本刀でフルーツを斬った時の「グシャァッ」とした音、日本刀の切れ味を表現した「シャキィン」とした音の良さが十二分に味わうことができた。高音も低音も問題ない印象だ。むしろHMDが頭を激しく動した際でもぴったりと固定されているので、より一層楽しむことができた。
大きめのヘッドホンだと耳周りを邪魔に感じることもあるが、オーディオストラップにはそのような欠点も無い。またヘッドホンの形状がオープン型なので、長時間装着しても疲れにくく、周囲の音が聞こえるのも良い。展示会・体験会ではアテンドの指示が聞こえるためスムーズな運営が可能だ。
なお、オーディオストラップの重さは約230g。高級なヘッドホンであれば、これよりも重量のあるものも多い。ちなみに筆者の使っているヘッドホン「ソニー MDR-ZX660」は約200gと、オーディオストラップよりも少々軽い程度で、ほとんど変わらない重さだ。頭を固定するストラップヘッドバンドとヘッドホンがついて、標準的なヘッドホンとそれほど重さが変わらないのも魅力だ。
VIVEを装着してオーディオパッドを耳に当てるだけで準備が整う点も優れている。標準品では、HMDとヘッドホンを装着する手間が掛かってしまう。この手間が軽減されるのも大きな利点だ。オーディオパッドの位置を調整することが可能で、高さ調整もできる。さらにオーディオパッドを外ハネさせることができるので、簡単に装着・付け外しができる。HMDを被りながらでも位置調整が可能だ。
また、例えばヘッドホンのケーブルが頭や腕、肩の辺りに当たってしまったり、絡まったりしたことがある人も多いのではないだろうか。HMD一体型だとそういった心配も無用だ。ヘッドホンの収容スペースを新しく作る必要もない点も、特にVR体験以外のシーンでもヘッドホンを使用するユーザーにとっては喜ばれるポイントだろう。
まとめると「VIVE デラックス オーディオストラップ」は、VIVEのユーザー体験を格段に向上させる製品だ。使わない理由が無いと言ってしまっても異論は少ないだろう。それ程にオススメできる製品。まだ、標準のヘッドバンドを使っている人で、激しい動きの際に使い辛いなどの不満を抱えているなら、一度試してみてはどうだろうか。
●関連サイト
VIVE デラックス オーディオ ストラップ