マイクロソフトは、11月10日に次世代ゲーム機「Xbox Series X」と「Xbox Series S」を発売する。「Xbox Series X」は最大解像度8Kに対応し、4K/最大120fpsのゲームプレイが行なえるハイエンド機。一方、「Xbox Series S」は最大解像度が4Kで、WQHD(2560×1440ドット)でのみ最大120fpsに対応する。
Xboxは、初代が2001年11月と18年前に発売し、その後2005年11月にXbox 360を発売、第3世代となるXbox Oneが2013年11月に発売し、(各ゲーム機には上位機種や普及版も存在する)今回が第4世代機になる。
CPUは既存のXbox Oneと同じくAMD製で、Zen 2ベースの8コアCPUを採用。GPUは10月28日に発表され、11月18日にグローバルで発売されるAMDの最新GPU「Radeon RX 6000」シリーズと同じく、RDNA 2ベースで12.15 TFLOPSのものを採用する。
TFLOPSとは演算性能を表す単位のひとつで、同じゲーム機でいうと、PlayStation 4(PS4)が1.84 TFLOPS、PlayStation 4 Pro(PS4 Pro)が4.2 TFLOPS、Xbox Oneが1.3 TFLOPS、Xbox One Xが6 TFLOPS。つまり、Xbox Series XはXbox One Xの2倍、ライバルのPlayStation 5(PS5)の10.3 TFLOPSよりも理論上は高い性能を有する。
また、Xbox Series XはAMD製のX570およびB550チップセットが対応するPCI Express 4.0(Gen 4)対応のNVMe SSDを搭載する。それだけでなく「Velocity Architecture(ベロシティー・アーキテクチャー)」と呼ばれる技術により、メモリー、SSD、専用ハードとDirectXのAPIを統合し、従来発生していた無駄な読み込みを軽減。結果ゲームの快適化やストレージの高速化を実現している。
形状は直方体でシックな黒で 落ち着いたデザイン
Xbox Series Xの形状は、151×151mmの正方形を上に延ばした直方体のような形状をしており、一見おしゃれな家電のような見た目をしている。
コントローラーは、ボタン配置に大きな変わりはないが、ビューボタンとメニューボタンの間に、ゲームプレイや中にスクリーンショットが撮影できるシェアボタンが追加された。
シェアボタンはPS4のコントローラーDUALSHOCK 4の「SHAREボタン」、Nintendo Switchの「キャプチャーボタン」と同等の機能を有する。短く押すか長く押すかでスクリーンショットや動画が撮影できる。この機能は、「Xbox アクセサリ」から変更可能。
機能としては「スクリーンショット撮影」、「ゲームクリップの保存」、「録画の開始/終了」の3つ。このうち2つを割り当てられる。ゲームクリップの保存は、押した時点から30秒前までさかのぼって動画の保存ができる。
動画の録画は30秒までという制限付きだが、USB3.0以上かつNTFSフォーマットの外付けストレージを接続し、「キャプチャ保存場所」に指定することで、最大60分の録画まで可能になる。
専用のカートリッジ型ストレージと USBストレージにて拡張可能
USBストレージとしてはSeagateがXbox用のGame Driveを販売している。元々Xbox One用として販売されていたものだが、Seagateの公式HPでXbox Series X/Sにも対応しているとアナウンスが出ているのだが、用意する時間がなかったため、以前ASCII.jpでレビューした同社のPS4用Game Driveでストレージの拡張を行なった。
USB外付けストレージは、Xbox Series Xに接続して使用する際、音楽や動画、画像の保存用とする「メディアに使用」とゲームやアプリの保存先とする「データ保存機器の初期化」のどちらで使うか聞かれる。「データ保存機器の初期化」に設定すると、ドライブ上のデータはすべて削除され、ゲームやアプリの保存先になる。
もちろん、その場合拡張ストレージ側にインストールしたゲームは、外付けストレージを取り付けていないとプレイできない。また、データ保存用のストレージとする場合は、USB3.0以上対応で容量が128GB以上必要だ。
ちなみに、スクリーンショットや動画のキャプチャーは、PS4ならUIや設定画面もキャプチャーできたが、ゲームプレイ中の画面しか行なえない。本体の設定解説動画などを作りたい場合は、別途キャプチャーユニットが必要だろう。
また、USB外付けストレージ以外にも、本機の背面にあるスロットに拡張カード型のストレージを挿して容量の拡張も可能。今回は拡張カードストレージを事前に入手できなかったため試せていないが、この拡張カードストレージは「Velocity Architecture」とシームレスに統合し、内蔵ストレージと同じく遅延がないとのこと。機会があれば検証して試してみたい。
コントローラーはサイズがやや小ぶりに 滑り止め加工などによりグリップ感も向上
やや脱線したが、Xbox Series Xのコントローラーは、Xbox Oneのコントローラーとほぼ同じ大きさだが、グリップ部分がスリム化し、やや小ぶりに感じる。
また、Xbox Series Xの十字キーは独立しておらず、斜め入力がよりし易くなっているように感じる。さらに、底面には3.5mmイヤホンジャックが新たに実装されている。これにより、DUALSHOCK 4のように手元でイヤホンを挿して音を聴けるようになった。
さらに、従来のLRボタンやトリガーはツルツルした手触りになっていたが、今回のLRボタンはシボ加工が施され、トリガーボタンはLRボタンと異なる小さな丸い凹凸のある滑り止め加工が備わり、手触りだけでLRかトリガーかがはっきりわかる形に進化した。加えて、USB接続部がマイクロUSBからType-Cへと、今時に変更されている。
グリップ部分もトリガーボタンと同じ加工が施され、ホールド感が増したように感じる。無線での動作は、電池で駆動するところは変わらない。
ライバルのPS5やNintendo Switchは充電式だが、以前にXboxの開発者が電池駆動の方が劣化が少なく長持ちするためと、その理由を明かしているとおり、電池だと使える時間も長く、劣化しても交換が容易というメリットもある。その理念は変わっていないようだ。
基本機能に劣化部分はなし 高性能なパワーでより快適に
ホーム画面や基本機能は、設定項目まで詳細に比較したわけではないが、従来機のXbox Oneシリーズと大きく変わらない。
自分好みにカスタマイズも行なえるが、四角いアイコンが並び、最後に使用したゲームやアプリのアイコンが左端に大きく表示される。インストールされたゲームは「マイコレクション」に収納されている。
最も上部には自分が良く使うアプリや設定のアイコンが並び、コントローラーで下にスライドさせると「Microsoft Store」や同社のサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」の情報が表示される。
Microsoft StoreやGame Passのアイコンを選択すると、詳細なページに遷移する。
Xbox Game Passは、100本以上の高品質なゲームが月額楽しめるサブスクリプションサービス。PCのみと、ゲーム機のみのサービスは月額850円、PCとゲーム機、どちらでも使え、オンラインマルチプレイに必要なXbox Live Goldも含まれる「Xbox Game Pass ULTIMATE」が月額1100円で利用できる。
差額を考えれば、「Xbox Game Pass ULTIMATE」が非常にお買い得でオススメ。現在は最初の1ヵ月は100円で利用できるため、Xbox Series X&Xbox Series S購入を機に加入するというのもイイだろう。
従来どおりUHD BDや音楽CDなどのメディアや mp3、mp4の音楽、動画ファイルも再生可能
光学ドライブはXbox One X同様にUltra HD Blu-ray(UHD BD)に対応。UHD BD作品の再生はもちろん、DVDや音楽CDの再生もできる。
また、USBメモリー内のmp3やmp4動画の再生もアプリの「メディア プレーヤー」経由で行なえる。こうしたBlu-ray作品などの再生や、音楽・動画ファイルの再生は、従来機と何ら変わらない。PS4はmp3の再生や音楽CDの再生ができなかったので、こういったメディアプレーヤーとしての高い汎用性は、Xboxの魅力のひとつだ。
編集部にはXbox One Xはなく、初代Xbox Oneのみがあったため、それと比較したところメディアプレーヤーでmp3ファイルを開くと、Xbox Oneだとサムネイルの表示に時間がかかったが、Xbox Series Xだと瞬時に表示された。こういった細かい快適さも、より高性能になった恩恵だと感じる。
Xboxアプリを使えば簡単にリモートプレイも可能
もちろん、リモートプレイにも対応する。スマホの場合、Xboxアプリをインストールし、Xbox Series Xと同じネットワークに接続、同じアカウントでログインすれば、簡単にリモートプレイが行なえる。
リモートプレイ開始前に、スマホとコントローラーをBlutoothで接続するように促されるので、スマホのBluetooth接続画面でコントローラーと接続。ペアリングは、コントローラーのType-Cポートの傍にあるボタンで押し、Xboxのロゴが点灯から点滅に変わったら行なえる。
今回の期間では無線LANの環境が悪い編集部でしか検証できなかったため、通信環境までテストしなかったが、Wi-Fi接続であれば遅延も少なく快適にプレイできそうだった。ただし、Xbox Series Xは、ライバルであるPlayStation 5が最新規格のWi-Fi 6(IEEE802.11ax)に対応しているのに対して、無線LANがWi-Fi 5(IEEE802.11ac)まで対応になっている。そのため、有線LAN接続経由と、無線LAN接続での快適度も異なり、無線LAN接続経由ではリモートプレイにおいてPlayStation 5より劣る可能性は高い。
クイックレジューム機能により ゲームを続きからプレイすることが超快適に!
前述したように、Xbox Series XはGen 4のNVMe SSDを搭載し、「Velocity Architecture」という技術により、従来機よりもCPUの処理やストレージの転送を効率化し、結果高速化を実現する。
そのため、ゲーム機の起動速度や、ゲームの起動時間が気になるところ。本来、ゲームの起動時間というと、ゲームタイトルを選択して起動、メーカーロゴなどが表示され、スタート画面が立ち上がるまでの一連の時間を計測する。
Xbox OneやXbox Series Xは、電源モードのデフォルトが「クイック起動」モードになっている。そのため、デフォルト設定のままであれば、メニュー画面の「プロフィールとシステム」にある「電源」から「本体の電源オフ」にした場合、PS4のスタンバイのようなクイック起動状態になっている。家庭によっては、ゲーム機は使ったら電源ケーブルを抜き片付ける人もいるだろうが、電源ケーブルは挿しっぱなしでこのクイック起動のままで使用する人も多いだろう。前述したリモートプレイやゲームのインストール、本体の最速起動などは、このクイック起動であれば使える。
ちなみに、Xbox本体の電源ボタンを長押しした場合(短押ししたらクイック起動)は、完全なシャットダウンになるが、今回は電源ケーブルを抜き差ししてからの起動と、クイック起動からの起動の2種類でゲームの起動速度を計測した。計測は検証した11月3日時点での最新アップデートを適用してから実施している。
結果、Xbox Oneはシャットダウンから起動まで約1分ほどの時間を有したが、Xbox Series Xはおよそ20秒で起動した。一方、クイック起動からの起動は、Xbox Oneが約8秒、Xbox Series Xが約8.5秒ほどとほぼ誤差レベルの差。おそらくだが、Xbox Series Xは後述する「クイックレジューム」機能を備えているため、そのスタンバイ状態にするなんらかのプロセスにより、若干の遅れが生じてXbox Oneと同等の速度に収まっているのではと予想する。
次にゲームの起動時間を確認したい。ゲームの起動というと、通常はゲームを選択して、ユーザーが選択できるタイトル画面が出るまでを計測するが、Xbox Series Xにはゲームを最後にプレイしたところから素早く起動する「クイックレジューム」機能を備えている。
この機能では、ゲームAを途中までプレイし、ゲームBを始め、またゲームAに戻った場合、ゲームAは途中までプレイしていたところから開始される。そのため、ゲームAを選択した際は、ゲームAのロゴやタイトル画面は起動せず、ゲームAの中断セーブデータに直接アクセスしたような感覚で、ストレスフリーでゲームプレイが継続できる。
今回の検証時、原因不明だが当初動作していた事前に提供されたXbox Series X対応の最新ゲームが起動しなくなったので、Xbox Series X対応のゲームでの検証はしていない。4K以上の高解像度でリフレッシュレート120Hz以上、HDR対応といった次世代ゲーム機の映像美&快適さを実現するディスプレーの貸出も間に合わなかったので、そうした検証はXbox Series X対応の最新ゲームレビュー記事などでご紹介したい。
そのためクイックレジューム機能を使った検証は、Xbox Game Passで提供されている「ベア・ナックルIV」(英題:Streats of Rage 4)と、「Bloodstained: Ritual of the Night」の2作品で実施。Xbox Oneでゲームをプレイする際、ゲームを選択し、タイトル画面が表示するまでの時間と、Xbox Series Xのクイックレジューム機能により、ゲームプレイ画面が表示されるまでの時間を比較する。
結果は上記のとおり。「ベア・ナックルIV」では約4.5倍、「Bloodstained: Ritual of the Night」に至っては約14倍もの差が付いた。実際に、XboxOneの方はゲームをプレイするに至るには、タイトル画面からセーブデータ選択画面に遷移し、セーブデータを選んでそこからまたロードを挟むので、さらに時間がかかるため、実際にはこの比較は対等ではない。
しかしながら、Xbox Series XまたはXboxOneを日常的に使った際、XboxOneではどうしてもゲームをプレイする際はタイトル画面を挟む必要があり、Xbox Series Xではクイックレジューム機能により、素早く自分が最後にプレイしたところから始められる。
逆に、自分が最後にプレイしたデータでは納得がいっておらず、別のセーブデータからプレイしたい場合は、ゲームプレイ画面でメニューを開き、セーブデータロード画面で別のセーブデータをロードするという手順が必要になる。このようにクイックレジューム機能を使うと、従来のゲーム機とはまったくゲーム体験が変わってくる。実際に、プレイ中のゲームから別のゲームの起動がどれぐらい早いのかは、次の動画で確認して欲しい。
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マイクロソフトの公式動画でも明らかになっていたが、動画で見てもらえれば、今までのXboxシリーズ、他社のゲーム機とも全く異なり、ストレスフリーで複数のゲームを楽しめることが分かってもらえるかと思う。ただし、おそらくだが仕様上ログイン認証が必要なゲームは、この機能が動作せず、毎回タイトル画面が表示して、ログインする必要があると思われる。機会があれば、そういったゲームでの動作も確認したい。
Xbox Series Xは、初代Xboxから最新作までの機種の後方互換性を有している。全てのタイトルとは言及していないが、マイクロソフトは初代Xboxも含む数千本のタイトルがプレイ可能としている。そこで、最後に筆者がまだ所持していたXbox 360用のKONAMIの対戦格闘ゲーム「Rumble Roses XX」のメディアを用意し、インストールしてその起動時間も計測してみた。
ちなみにダウンロード版の動作は分からないが、今回のメディアを使った場合、Xbox Series Xにてクイックレジューム機能が働かず、ゲームを選択するとXbox Oneと同様にロードが入り、毎回タイトル画面が表示された。いろんなパターンを検証してみないとはっきりとしたことは分からないが、メディアを使った場合、それが実行のキーになるので、中断データの保存ができないのだろうと容易に想像できる。
結果は上図の通り。ロゴが表示されるアニメーションの時間などは変わらないので、そうしたデータの読み込み時間の差がHDDとSSDで出たといったところだろうか。
といったところで、今回のレビューは終了したい。Xbox Series XはUIこそXboxOneシリーズとほぼ変わらないが、今まではハイエンドなPCでしか体験できなかったリアルタイムレイトレーシングに対応するパワーを備え、CPUやストレージ、メモリーを効率化する新機能や、新しいクイックレジューム機能により、ストレスなく素早くゲームを起動、快適に楽しめるゲーム機に進化した。
また、サービスも充実。XboxOne用のゲームを購入しても、Xbox Series X/S版も購入したことになる「スマートデリバリー」や、PCでもXboxでも利用できるサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」に、スマホやPCを使ったリモートプレイなどがある。
さらに、2021年には国内でも利用できるようになるとアナウンスされたクラウドゲームサービス「Project xCloud」(これは「Xbox Game Pass ULTIMATE」に含まれる予定)など、ゲーム機のみならず、PC、スマホといったガジェット全てでゲームを楽しめる全方位の構えだ。
正直のところ、今まで日本ではあまりパッとしないイメージがあったが、Xbox Series Xのみならず、Xbox Series Sもスペックの割に安価でSNSなどでも話題を呼び、抽選予約初日には完売する勢いを見せている。また、マイクロソフトは今年9月に「エルダー・スクロールズ」や「フォールアウト」、「DOOM」シリーズなどを手掛けるベセスダ・ソフトワークスを約7900億で買収することを発表し、話題を呼んだ。
今後、魅力的な独占タイトルが販売されたりすれば、人気の向上も十分あり得る。新たな続報にも期待したい。