メモリー関連の超老舗メーカーとなる米国Micron Technology(マイクロン テクノロジ)のSSD・メモリーブランドで、鉄板のSSD、メモリーとして国内にすっかり定着している“Crucial”ブランド。2014年中盤に発売された「MX100」シリーズは、高いパフォーマンスとMicron製NAND採用による信頼性とともに、SSD全体の価格帯を大きく下げた。「SSD = Crucial」という認識を国内に生み出し、今やSSD市場を牽引している鉄板ブランドになっている。
そのCrucialブランドによって、2018年初頭から投入され始めたクライアント向け最新SSDが、店頭・通販問わずPC関連ショップで必ず見かける「Crucial MX500」シリーズなのだ。
2016年に初のTLC NAND採用SSDとして発売し、長らく人気だった「Crucial MX300」シリーズ。「Crucial MX500」シリーズはその後継モデルにあたり、TLC NANDフラッシュメモリーの積層数を従来の2倍になる64層に増やした第2世代3D NAND(Micron Technology)を採用。従来モデル同様の高パフォーマンスを発揮しつつ、より高い信頼性と耐久性を実現していることが特徴だ。しかも、MXシリーズらしい大容量で、なおかつ昨今のデータストレージのSSD化にもマッチする1TBタイプの場合、店頭想定価格2万8000円前後という優れたコストパフォーマンスを実現している点も見逃せない。
Crucialの最新クライアント向けとなる「MX 500」シリーズは、SSDのデファクトスタンダード的な位置づけになっている点も魅力で、最近の格安系SSDと異なり、用途を選ばすに高いパフォーマンスを発揮する。サポート面の不安も皆無といってよく、日本語によるカスタマーサポートに、詳しい取り付け手順を解説した動画やPDFマニュアルを提供している(参照:Crucial SSDをパソコンに取り付ける方法、3D NAND採用の高速SSD)。
そのうえ、耐久管理やファームウェアの更新、メインメモリーを活用した高速化などが行なえる同社製SSD専用ユーティリティツール「Crucial Storage Executive」を用意と、SSDを初めて使う方も、これまで使ってきた方のどちらも安心して導入できる。
最新の64層NANDで安心の5年保証を実現
「Crucial MX500」シリーズが対応するインターフェースは、まだまだ主流で扱いやすいSATA 3.0(SATA 6Gb/s)を採用。データストレージ用途も視野に入る2.5インチモデルでは最大2TBを用意し、容量250GB/500GB/1TB/2TBの4種類をラインアップしている。M.2タイプでは標準的なType2280規格(幅22×長さ80mm)を採用し、容量250GB/500GB/1TBの3種類を用意している。
このラインアップ豊富な「Crucial MX500」シリーズの最大の特徴となるのが、従来の3D NANDの32層から64層に積層数を増やしたMicron最新の64層3D NANDになる。SATA 3.0(SATA 6Gb/s)インターフェースの上限となる500MB/秒台のシーケンシャルリード・ライトに、9万IOPS台のランダムリード・ライト。そして最新NAND、SSDコントローラー、新たな基板設計により、「Crucial MX500」の容量2TBモデルでは、前モデルの「MX300」と比べ、TBW(総書き込み容量)が300TB増加した700TB(1日あたり383.5GB)を実現。MTBF(平均故障間隔)も30万時間向上した180万時間になり、製品保証期間に到っては容量問わず、3年から5年間に延長されている。
「Crucial MX500」シリーズのスペック
型番 CT250MX500SSD1 CT500MX500SSD1 CT1000MX500SSD1 CT2000MX500SSD1
容量 250GB 500GB 1TB 2TB
フォームファクタ2.5インチ/M.2 Type2280(幅22×長さ80mm)2.5インチ
NAND64層 3D NAND(TLC)
コントローラSilicon Motion SM2258H
インターフェースSATA 3.0(SATA 6Gb/s)
シーケンシャルリード560MB/秒
シーケンシャルライト510MB/秒
ランダムリード9万5000 IOPS
ランダムライト9万 IOPS
MTBF180万時間
TBW(総書込容量) 100TBW 180TBW 360TBW 700TBW
ハードウェア暗号化AES256ビット暗号化、TCG Opal 2.0準拠、IEEE-1667準拠、Microsoft eDrive
保証期間5年間保証
Crucialの独自技術・機能を組み合わせた「Crucial MX500」
「Crucial MX500」では、SSDコントローラーに3D NANDに最適化されていると思われるSilicon Motion製の「SM2258H」を採用。Crucial SSDの高パフォーマンスや信頼性、耐久性を支えてきたNANDフラッシュの一部をSLCキャッシュとして使い高速化する「Dynamic Write Acceleration」や、突発的に電力供給が途絶えた際など、データ破損を防止する「Exclusive Data Defense」、熱が籠もりやすいノートPCへの搭載時も安心なドライブ内の温度を制限する「適応型熱保護」機能も備えている。万が一の盗難、紛失時に備えられる暗号化機能は、パフォーマンスの低下少ないハードウェアベースとなっており、AES256ビット暗号化やMicrosoft eDriveなどをサポートしている。
最新の64層 3D NAND&Silicon MotionのSSDコントローラー「SM2258H」に、Crucialの独自技術と既存の技術、機能を組み合わせた「Crucial MX500」は、デフォルトSSDとしてあらゆる用途に対応できるだろう。特に、TBWが大幅に向上した1TBと2TBモデルは、パフォーマンスに加え、信頼性と耐久性が気になる用途での安心感は抜群だ。大容量化が著しいゲームのデータストレージをはじめ、RAWデータで保管する写真好き愛用のクリエイターPCなどに向いているだろう。
さらに、TBモデルは1日あたりの書き込み容量は1TBが約197.2GB、2TBなら約383.5GBを実現しているので、普及を始めた爆速な10Gネットワーク装備のNASとの組み合わせにもオススメしやすい。
HDDよさようなら! 容量2TBモデルのパフォーマンスをチェック
ここからは、2.5インチ「Crucial MX500」の最大容量となる2TBモデル「CT2000MX500SSD1」を使って、そのパフォーマンスを見ていこう。
各種ベンチマークによる計測は、AMD Ryzen 7 2700Xを搭載するSocket AM4プラットフォームで実行している。SSDはOS起動用を別に用意し、「CT2000MX500SSD1」には何もデータを書き込んでいない状態にしている。
ベンチマーク計測に利用したPCのスペック
CPU AMD Ryzen 7 2700X
(8コア/16スレッド、定格3.7GHz、最大4.3GHz、TDP 105W)
マザーボード ASUS「ROG CROSSHAIR VI EXTREME」(AMD X370)
メモリー SanMax「SMD4-U16G48M-26V-D」(DDR4-2666、8GB×2)
ビデオカード NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition(GDDR5X 11GB)
SSD
(メインストレージ) Kingston「SSDNow KC400 256GB」(2.5インチ、256GB、SATAIII)
SSD Crucial「CT2000MX500SSD1」(2.5インチ、2TB、SATAIII)
電源ユニット Seasonic「SS-750KM」(750W、80PLUS GOLD)
OS Windows 10 PRO(64ビット)
定番ベンチマーク4種で、パフォーマンスを確認する
「CrystalDiskMark」や「AS SSD Benchmark」、「HD Tune Pro」などといった定番ストレージベンチマークソフトを使って、パフォーマンスをチェックしていこう。
まずは定番中の定番となる「CrystalDiskMark 6.0.1」を実行だ。テストデータを1GiBに加え、キャッシュ溢れによる速度低下がないか、16GiBも実行してみた。
シーケンシャルのリードが562MB/秒、ライトは514.7MB/秒。ランダム(4KiB Q8T8)のリード400.5MB/秒(約10万 IOPS)、ライト372.3MB/秒(約9万3000 IOPS)と、いずれも公称値オーバーの結果となった。16GiBはランダムの4KiB Q32T1の値が下がっているが、キャッシュ溢れによる劇的なライト性能の低下は見られなかった。16GiB(16GBクラス)で問題なければ、日常用途では気になることはまずないはず。この点は後述の「HD Tune Pro」でも確認していこう。
続いては「AS SSD Benchmark 2.0.6694.23026」を実行して確認していこう。テストは通常のBenchmarkに加え、データ圧縮率の影響を確認する「Compression-Benchmark」も実行している。
圧縮率の影響を確認する「Compression-Benchmark」では、テスト中に何度か300MB/秒程度まで落ち込んでいるが、おおむね490MB/秒台で安定している。同様な脈動は前モデルのMarvellコントローラーでもあったものの、残念ながら数値の幅はもう少し小さかった。横並びの比較はできないが、Silicon Motion「SM2258H」の影響だろう。
通常テストではシーケンシャルリード491.83MB/秒、同ライト483.75MB/秒。ランダム(4K-64Thrd)のリード9万6338 IOPS、ライト9万640 IOPSとシーケンシャルは公称値を下回ったが、ランダムはしっかりと公称値通りの数値を出している。「CrystalDiskMark 6.0.1」の結果も含め、シーケンシャル、ランダムともにパフォーマンスに不安なしだ。
「ATTO Disk Benchmark」でシーケンシャルリード・ライトの最大転送速度を調べる
次はシーケンシャルリード・ライトの最大転送速度を確認できる「ATTO Disk Benchmark」の結果を見ていこう。
ここまでと同じく、高パフォーマンスを維持しており、32KBからリード/ライトともに500MB/秒台に達し、256KB以降では大きなブレなく、公称値となるリード560MB/秒、ライト510MB/秒の転送速度を維持できている。
「HD Tune Pro 5.70」で全領域の転送速度を計測
ベンチマークの最後は「HD Tune Pro 5.70」だ。元々はHDDの最外周と最内周の速度差を見るための“Benchmark”だが、SSDでも使用できる。全領域の転送速度などを確認していこう。
リードの転送速度は、ほとんどフラットで平均440.4MB/秒になったが、ライトは380MB/秒~410MB/秒の間を上下している。さらに1600MB~1700MBの間で、145.4MB/秒まで落ち込む傾向にあった。なお、最小値は計測のたびに異なっていたが、発生箇所は容量1600MB~1700MBの間なのは同じだった。
また、「File Benchmark」をデータ容量100GBで実行し、TLC NAND採用SSDの多くでみられるキャッシュを超える容量での速度低下をチェックしたが、ダウンすることはなかった。MLC NANDのようなブレのないフラットな転送速度とはいかないが、大容量の連続書き込み時も400MB/秒台を維持しているので、2TBモデル「CT2000MX500SSD1」は、非常に容量の大きなファイルを扱うクリエイター向けPCにもオススメできるだろう。
TBを外に持ち出したい! 外付け時のパフォーマンスも調べてみた
SSDは、パフォーマンスだけでなく、その軽さと耐衝撃性が魅力だ。TBクラスを外付けで運用すれば、データ容量がどうしても限られるノートPCで、いつでもどこでも大事な写真や動画にアクセス可能というわけだ。
そこで、次世代USB規格のUSB 3.1 Gen2接続をサポートするUSB外付けケースに、「CT2000MX500SSD1」を取り付けて気になるリード・ライトパフォーマンスを確認してみた。また、持ち歩きの際には万が一の紛失などが不安だが、Windows 10 Proが標準で備えるBitLocker機能(AES 128ビット)を使えば、外付けストレージデバイスも暗号化できるので安心だ。
以下は、「CrystalDiskMark 6.0.1」によるベンチマーク結果だ。理論値10GbpsとなるUSB 3.1 Gen2。内蔵時のSATA 3.0(SATA 6Gb/s)インターフェース接続と比べ、ランダムが190MB/秒程度まで落ち込むものの、シーケンシャルはリード563.1MB/秒、ライト495.2MB/秒とSATA 3.0(SATA 6Gb/s)接続時に迫るパフォーマンスになっている。
また、PCの多くが対応しているUSB 3.0接続時も、400MB/秒の高速なリード・ライトを発揮するので安心だ。
BitLockerによる暗号化時は、USBの接続方式に関係なく、若干ダウンする傾向にあるが、実運用では気にならないレベルといえる。
「Crucial MX500」は、SSDのスタンダードモデルだ
「Crucial MX500」は、コストダウン最優先され、スペックに不明瞭な点も多々あるローエンドSSDが増える中、公称値通りのパフォーマンスを発揮し、連続書き込み時の速度低下もない。しかも、サポート面での不安もないため、「Crucial MX500」はまさにSSDのスタンダードモデルといえるだろう。
特に、1日あたり383.5GB書き込んでも5年間使用できるTBW(総書き込み容量)700TBを実現する2TBモデル「CT2000MX500SSD1」は、データが命といえる写真や映像のクリエイターは狙い目といえるのだ。
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