夏休みの行楽シーズン真っ最中。クルマでどこかに出かけるとなればカーナビが役立つ。しかし、スマホでなんでもできる時代、スタンドアロンのカーナビの存在感は薄れている。そんななか、折衷案でもあるApple CarPlayを試してみた。さらにパケット消費もチェックした。
Apple CarPlayはクルマのディスプレーを使ったスマホ操作
2014年に発表されてから、最近になってようやく普及の兆しを見せてきたApple CarPlay。要はクルマに備え付けのディスプレー上で、スマホの機能を使うというもの。そんなのスマホをホルダーでクルマに固定しても同じじゃないかと感じる人もいるかもしれないが、単純なスマホ上の機能と比べて、クルマでより安全に運転するためにアレンジがされたものとなっている。
Apple CarPlayにおいて無料で使える主なカーナビはアップル純正の「マップ」のほかに、「Googleマップ」と「Yahoo!カーナビ」もある。Apple CarPlay上ではインターフェースがほぼ共通化されているので、カーナビのルート選択やスマートフォン画面の表示などが違いとなる。
今回、試用のために使ったフォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランでは、運転席からベストなポジションに位置するうえ、大型化によって見やすい9.2型ディスプレーが魅力的なのに加え、クルマのオーディオやマイクも一体化するため、案内音声が聞きやすい、ハンズフリーも通話しやすいなどの点において、基本的な使い勝手が高まっている。
また、通信状態もクルマのディスプレーで確認できる。今回は格安SIMであるIIJmioのeSIM版サービスを登録してデュアルネットワーク状態になったiPhone XSを用いたが、2つのSIMともアンテナピクトが表示されるほか、Wi-Fi接続であればその状況も表示する。
iPhoneとクルマとはUSBケーブルで接続するので、センターコンソールのトレイに転がしておけばよく、しかも充電も同時にされるので、バッテリー切れの心配もない。
カーナビの使いやすさと、スマホの情報の細かさやリアルタイム性能、将来のアップデートなどをいいとこどりしたものと言えよう。
実際の2~3時間の走行で20~30MB程度の消費
スマホでカーナビというと、どうしても気になるのが通信量の問題。地図情報もルート情報も途中の渋滞情報もすべてモバイル回線から得ているため、結構な通信量を消費してしまうのではないかと心配していた。
ところが、2~3時間、200kmほどの走行で消費されたのは20~30MB。往路がYahoo!カーナビで約18MB、復路がGoogleマップで28MB、後日、似たような時間を走行してアップル「マップ」は33MBとなった。設定画面のアプリごとの容量を見た結果だ。
走行条件は時間帯や渋滞具合などが異なるため、渋滞状況の変更によるルート変更の頻度も違う。そのため、単純にどのカーナビアプリが通信量が小さいという判断はできないが、休憩含めて2~3時間の走行で30MBくらいが目安となるのではないだろうか。
この程度の消費なら、観光地エリアを丸一日クルマで走り回るというような場面でもギガバイトを超えるような消費にはならず、カーナビを使うからといって大きな容量を用意する必要もなさそうだ。
Apple CarPlayでは同時にSiriも使える
便利なのはカーナビが利用できるだけではない。使えるアプリは制限されるものの、「ミュージック」で音楽再生も同時に可能で、iPhoneの音楽再生機能が利用できる。
また、クルマのステアリングの音声対応ボタンを押すことでSiriの利用が可能となる。目的地検索などこれもできることに限りがあるもの、普段から使い慣れた音声インターフェースが使えるのも便利だ。
なお、海外に行って借りたレンタカーがApple CarPlayに対応したものであれば、海外でもApple CarPlayを利用して、自分のiPhoneを使ったカーナビを利用できる。これはかなり便利なのではないだろうか。
Android Autoもほぼ同様の使い勝手
また、Apple CarPlayに対応する機器の多くは同時にAndroid Autoにも対応している。フォルクスワーゲンのカーナビやディスプレーもそうだが、同時対応という機器は多い。そのためAndroidスマートフォンもUSBポートに接続すれば、Apple CarPlay同様にカーナビなどの機能が使える。
Android Autoの弱点は、ナビアプリが主要なものではGoogleマップにほぼ限定されること。Googleマップのルートで問題ないならよいが、従来のカーナビに比較的近い印象のあるYahoo! カーナビやその他のアプリの利用ができないのが残念。各種のアプリがクルマで使えるというよりも、クルマでGoogleのサービスを使うために特化した内容となっているのだ。
Apple CarPlayに対応するクルマはどんなものがある?
今回、試用のために使ったフォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランでは大型のタッチパネル式の液晶画面が備わっていて、Apple CarPlay/Android Autoも全車に備わっている。カーナビ搭載仕様とすることも可能で、試用したクルマもナビが付いていたが、カーナビがなくてもApple CarPlay/Android Autoは使え、操作性は同じだ。
Apple CarPlay/Android Autoが備わるクルマは輸入/国産車を問わず増加中だが、現時点ではまだ輸入車の方が力を入れている印象。カーナビのための日本向けローカライズが不要になることや、車両情報表示に液晶画面を備えるクルマが多くなっていることから、Apple CarPlay/Android Autoは相当浸透している。
一方で国産車はというと、ディスプレーを持たず、カーナビは後付けを基本としている車種もあるため、そのままでは対応しているクルマはさほど多くないという印象だ。トヨタもSDLによるスマートフォンとのリンクを優先させ、Apple CarPlay/Android Autoには乗り気とは思えないことが、そう感じさせる原因かもしれない。
それでも、安心してほしいのはApple CarPlay/Android Autoに特化した後付オーディオが、パイオニアから「FH-9400DVS」「FH-8500DVS」として製品化されており、標準的な2DINの取り付けスペースさえあればクルマの新旧を問わず利用が可能になる。カーナビ機能や地上デジタル放送の受信機能がないため、配線が少なく、取付工賃も安い。
そして、クルマが古くなったときこそApple CarPlayやAndroid Autoの出番。クルマの寿命は長くなっているのに対し、カーナビは地図データ更新の問題など、時間の経過で徐々に役に立たなくなっていく。Apple CarPlayやAndroid Autoの規格が変化しなければ、かなり長い期間、最新システムをクルマで使うことができそうだ。
もちろんApple CarPlayやAndroid Autoのデメリットもある 位置情報取得の性能では単体のカーナビにはかなわない
Apple CarPlayやAndroid Autoをがあると、もはやクルマにカーナビ機能は不要。クルマにはスマートフォンと接続できるディスプレーさえあればいいと考えるかもしれないが、もちろんデメリットもある。スマートフォンを忘れたら何もできないという根本的な問題のほか、位置情報がスマートフォンの性能に依存するなどの問題がある。
具体的にはトンネルのようにGPSの位置情報が取得できない場所では、自車位置が正確ではなくなる。クルマに備え付けのカーナビでは通常、ジャイロと車速信号によってGPSの信号が途切れてもクルマの場所が特定でき、トンネル内の分岐位置もしっかりと案内される。しかし、スマートフォンのカーナビではトンネル内はほぼ動作せず、トンネル内の分岐となるとお手上げ。もし、トンネルの多いルートなら通常のカーナビを使ったほうが便利だろう。
なお、このデメリットはスマートフォンをホルダーに装着してカーナビをさせる場合と同じだが、今後、クルマとの接続規格であるSDL(Smart Device Link)との対応によって解決する可能性もあり、将来への期待としたい。
カーナビとして使うことで、スマホの利用機会は増える 増える分のデータ通信には格安SIMやeSIMでオトクに
Apple CarPlayやAndroid Autoは登場からだいぶたち、クルマとスマートフォンの融合としては定番となりつつある。今後はさらにクルマとの接続規格であるSDLも普及して、クルマに乗っているときでもデータ通信が必要な時代へと確実に進行する。
そんな時代でも、格安SIMを活用することで、通信量の不安なく利用できるのは心強い。ぜひ、有効に活用してみてはいかがだろうか。