iPad Proが相棒の専用アクセサリー「Magic Keyboard」を得たことで、タブレットの枠を超えて、あるいはMacBookやノートPCのライバルという立ち位置すら通り越して、まったく新しいデバイスに生まれ変わろうとしている。発売後からMagic Keyboardを使い込んで、現在までに筆者が発見したことをレポートしたいと思う。
打鍵感はやはり大満足。MacBookと2台で仕事のメインマシンにできそう
Magic Keyboardを使い始めてから1週間以上が経っているが、キーボードとしての使い心地には概ね満足している。特に打鍵感は不満を感じるところがない。筆者がメインで使っているバタフライ式キーボードのMacBook Airと同等以上にキー運びが軽やかなので、長文を書いていても疲れないのがいい。
iPad Proに装着した時の総質量はMacBook Airとほぼ変わらないので、筆者は持ち運びにも不便を感じていない。ただ、Magic Keyboardが届いてからまだ外出して長時間iPad Proを持ち歩く体験をしていないので、判断にはもう少し時間を掛けたい。
タイピングの信頼感が向上したおかげで、Apple Pencilで手書きの草稿を書いた原稿をテキストエディタで仕上げて、カメラで撮影した写真を画像編集アプリ「Pixelmator Photo」で調整後に、ファイル一式を入稿するという日々の仕事がiPad Proだけでもスムーズにできそうだ。以前のように外に出かけて、記者会見やイベントを取材できる機会が再び来たらぜひiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせとMacBook Airのどちらがよりポータビリティに優れているか、比べてみたいと思う。
フローティングカンチレバーがiPadによる映像体験を変えた
Magic Keyboardを使うようになってから、iPad Proで動画を見る時間が増えた。理由は明らかで、Smart Keyboard Folioやほかのスタンドに乗せて視聴するよりも高い没入感が得られるからだ。
Magic Keyboardには、iPad Proを装着した状態で宙に浮かせたようなスタイルになる「フローティングカンチレバー」が新たに採用されている。キーボードを開くと画面が前に迫り出してくるようなポジションに固定されるので、映像の迫力が一段と増すのだ。
iPad Proは画面を横に構えた状態で、本体の左右側面にスピーカーが向くデザインとしている。ステレオ再生の分離感がとても良いので、Apple Musicで配信されているミュージックビデオやYouTubeを再生してみると人の声が実にリアルに楽しめることがよくわかる。
さらにiPad ProはDolby Atmosコンテンツの再生にも対応しているので、Apple TV+にも出揃うDolby Atmos対応のコンテンツを再生すると、高い位置から振ってくるような包囲感が味わえるだろう。
音の劣化の原因にもなる不要な振動をデスクトップなど、iPadを置いた平面に伝えないフローティングカンチレバーを採用するMagic Keyboardだからこそ、iPad Proの高品位なステレオスピーカー再生へのこだわりが伝わってきた。
そして細かいことだが、Magic Keyboardを使い始めてからトラックパッドによるマウス操作がメインになったため、iPad Proの画面に指で直接タッチすることが減った。すると画面に指紋がほとんど付かなくなるので、映像にも深く没入感できるのだと思う。
iPad Proでテレビ番組を見る機会も増えた
iPad Proで映像を楽しむ習慣が身に付いてくると、ちょっとした空き時間にテレビも見るためにもiPad Proを使いたくなってきた。レコーダーで録り忘れて見逃した番組を「TVer」アプリでチェックする時にiPad Proを活用している。外出できるようになったら、自宅のレコーダーにネットワーク経由でつないでテレビ番組をリモート視聴できる環境も整えたいと思う。
筆者はiPad Proで長めの映像を視聴する時には、電源ケーブルをつないで見ている。Magic KeyboardにはiPad Proにパススルー充電ができるUSB-C端子が搭載されているので、iPadからぶらりと下がるケーブルが視界に飛び込んできて気になることがなくなったこともうれしい。
iPad Proにはやはり「アップルのヘッドホン」がベストマッチするのか?
夜間にコンテンツを視聴する時には内蔵スピーカーのボリュームを下げるよりも、ワイヤレスタイプのヘッドホンやイヤホンを使った方が迫力あふれるサウンドを気兼ねなく楽しめる。iPad Proとシンプルにワンタッチでペアリングができることを考えれば、アップルのAirPods ProかBeats by Dr.Dreのノイズキャンセリングヘッドホン「Solo Pro」などがおすすめだ。
アップルが独自にヘッドホンを開発しているといううわさも、さまざまなメディアから聞こえてくる。もし本当にアップル初のヘッドホンが登場するのであれば、筆者はぜひWi-Fi機能を載せてほしいと期待している。ヘッドホンを自宅のWi-FiルーターにつないでApple Musicの音楽ストリーミングを直接聴いたり、AirPlay 2にも対応してくれればiPad Proからコンテンツをキャストして、Bluetoothの電波が届きにくい場所でもリスニングが楽しめれば便利さが実感できそうだからだ。
拡張性豊かなiPad Proの可能性をMagic Keyboardが示している
Magic Keyboard側のUSB-C端子は給電専用に設けられているが、こちらにケーブルを挿してチャージしている間も、iPad Pro本体のUSB端子はフリーになる。iPad ProにUSB接続の360度カメラや無指向性マイクなど対応するアクセサリーを装着すれば、動画配信や音楽製作のワークステーションとしての機能も強化できそうだ。
驚くほどユニークな専用アクセサリーを装着して、iPad Proを強化したりカスタマイゼーションを楽しむ方向にもテクノロジーが発展して欲しい。Magic KeyboardはiPad Proを未知なるデバイスに進化させる道筋を示しているデバイスなのではないだろうか。