「レッツノートRZ8 CF-RZ8」は、パナソニックのノートPCラインアップで最も小型な10.1型ディスプレーを搭載するモバイルノートPCだ。ディスプレーをくるんと畳むとタブレットスタイルで使えるフリップ方式の2in1 PCで、起動速度も速いモダンPCである。唐突だが、筆者はこのCF-RZ8こそ、真に使える2in1 PCだと考えている。本稿ではレッツノートの歴史を振り返りながら、その理由を語ろうと思う。
レッツノートRZ8の主なスペック
型番CF-RZ8KFMQRCF-RZ8KDEQR
本体カラーブラックシルバー
OSWindows 10 Pro 64bit
OfficeOffice Home & Business 2019
液晶ディスプレー10.1型(1920×1200ドット)
CPUCore i5-8200Y(2コア/4スレッド、1.3~3.9GHz)
メモリー8GB LPDDR3(拡張スロットなし)
ストレージ256GB SSD(SATA)
LAN機能IEEE802.11a/b/g/n/ac無線LAN、1000BASE-T有線LAN
LTE対応〇 -
バッテリー駆動時間公称約11.5時間(JEITA2.0)
サイズ250(W)×180.8(D)×19.5(H)mm(突起部除く)
重量約780g約750g
実売価格28万5500円前後23万2800円前後
「レッツノート」と言えば10型台が源流でしょう
10型台のディスプレーを搭載するシリーズはレッツノートの源流とも言える。レッツノート(Let'snote)の名前を最初に掲げたモデル「AL-N1」から、初代「銀パソ」の「CF-C33」、スリムノートPCの先駆けとなった「CF-S51」、そして今や伝説となった名機「CF-R1」と、10型前後(CF-S51は11.3型だが……)のディスプレーを搭載したモデルは、モバイル利用を重視するユーザーに高い評価を得てきた。
特に“R”シリーズは、1kgを切る軽量さや長時間バッテリー駆動に加え、ボンネット天板などの採用によって堅牢性をいち早く訴求し、競合するモバイルノートPCと差別化していたのが印象深い。2002年に登場したRシリーズは、その後他のシリーズが入れ替わろうとも、その系譜は長きに渡ってレッツノートシリーズのモバイル重視ラインアップとして新製品が出続けていた。
しかし、2010年に、“こじゃれた”10.4型ディスプレー搭載モデル「CF-J10シリーズ」が登場し、Rシリーズは終息した……。
はずだったが、熱烈なるRシリーズユーザーからの復活を願う要望に応えたのかそうでないのかは定かでないが、2014年に「CF-RZ4」として復活する。ディスプレーサイズは当然ながら10.1型。本体の重さはさらに軽くなって800gを切っていた。そして、何より大きな変化だったのが、タブレットとしても使える「2in1 PC」に生まれ変わったことだった。古参Rシリーズユーザーの多くはRZシリーズを「2in1になったRシリーズ」と認識したはずだ。
レッツノートシリーズの2in1 PCとしては、CF-RZ4の8ヵ月前に12.5型ディスプレーを搭載して光学ドライブを内蔵した「CF-MX3」が登場している。さらに遡ること4年前には「CF-C1」というコンバーチブルPCもあったが、まだ2in1 PCという言葉が積極的に使われていない時代だった。
CF-MX3とCF-RZ4で共通しているのがノートPCとして使う「クラムシェル」形状と、タブレットとして使う形状の切り替え機構として「フリップ方式」を採用していることだ。フリップ方式とは、ディスプレーを360度開けるヒンジを搭載し、タブレットとして使う時はディスプレーを本体底面側に「パタン」と折りたためるようにしている機構だ。RZシリーズの他にも、レノボの「Yogaシリーズ」やデルの「XPSシリーズ」、「Inspironシリーズ」、そして日本HPのハイエンドノートPCラインアップなどでも採⽤している。
ちなみに、2in1 PCでノートPCとタブレットを使い分ける方法にはいくつかの方式がある。フリップ方式以外では、キーボードを組み込んだ「底面部分」とディスプレーを組み込んだ「天板部分」が分離する「デタッチャブル」(着脱)方式や、ボディー背面にキックスタンドを設けたタブレットのディスプレーカバーにキーボードを組み込んだ方式もある。
デタッチャブル方式は価格を抑えた2in1 PCで多く採用されており、ディスプレーカバーにキーボードを組み込む方式は、Microsoftの「Surfaceシリーズ」で広く普及し、今日ではその形態を模倣したモデルが多数のPCベンダーから登場している。
これらの方式、どれがベストということではなく、それぞれに長所短所がある。
2in1 PCの⻑所と短所
デタッチャブル方式は、先に述べたように機構部分がシンプルなので価格を抑えられるほか、タブレットスタイルではキーボードユニットを分離しているので軽くなる。一方で、クラムシェルスタイルの状態では合体したタブレット本体部分を⽀えるため、底面部分はクラムシェルオンリーのノートPCと比べても重くせざるを得ない。さらに、タブレットスタイルとクラムシェルスタイルを切り替えて使う場合は、タブレット本体もキーボードユニットも持ち歩く必要があるため、結果的に携行重量は重くなりがちだ。
また、本体とキーボードユニットを着脱するには固定用のロック機構を解除してコネクター位置を合わせるなどの手間がかかり、着脱そのものがすぐにできない=クラムシェルスタイルとタブレットスタイルの切り替えが面倒になるという側面もある。実際、私もデタッチャブルの2in1 PCを使っていた時期があったが、結局早々にしてクラムシェルスタイルオンリーとなった。
タブレット本体背面のキックスタンドとキーボードを組み込んだディスプレーカバーの組み合わせは、Surfaceシリーズのおかげで今や2in1 PCの主流となった感もある。タブレット本体が自立できるおかげでキーボード側は軽くでき、携行重量を抑えられる。
そして、最近のキーボード組み込みディスプレーカバーは剛性もそれなりに有しているので、通常の力加減でタイプする限り、長文の入力作業でも不快になることはなくなってきた。タブレットスタイルとクラムシェルスタイルの切り替えも、カバーを「ぺろん」とめくって背面に「(磁力で)ぺたっ」と固定するだけと簡単だ。
一方で、キーボード部分、特に本体との接続部分はソリッドではなくフレキシブルな構造なので、膝の上などで使う場合は形状そのものが固定できずキーボードがすこぶる使いにくい。もちろん、Microsoftは新型のSurface Proのキーボードは膝の上でも使えると訴求しているが、それは「使えなくはない」という次元に過ぎない。
また、剛性を有するといっても、構造そのものは薄く、かつ、多くのモデルではチルドをかけて「浮いた」状態で使うようになるため、タイプしているとふわふわとたわんでしまうきらいもある。加えて言うならば、キックスタンドを本体背面から張り出して使う仕組みになっているがゆえに、設置する場所に要する面積がカタログスペックにある「幅と奥行き」のサイズから多めになる場合が多い。特に街カフェのコンパクトなテーブルにフードメニューと一緒に置きたいときに問題になるケースがしばしばある。
「真に使える2in1 PC」の条件とは
RZ8が採用するフリップ方式は、とにかくクラムシェルスタイルとタブレットスタイルの切り替えが簡単素早くできるのが最大の長所だ。ディスプレーを「がばっ」の「ぐりりん」と開き切る、もしくは閉じるだけでクラムシェルスタイルとタブレットスタイルを使い分けられる。これは、意外と電車で利用しているときに便利だ。立っているときはタブレットスタイルで使い、運よく目の前の席が空いて座れたらそのままぐぐっとディスプレーを閉じてクラムシェルスタイルで使い続けられる。
「そのまま」切り替えられる手軽さは、場⾯に応じたクラムシェルスタイルとタブレットスタイルの切り替え頻度が⾼くなることにつながる。また、キーボードは通常のノートPCと同じ機構で搭載しているため、剛性も十分でタイプした感触は一般的なノートPCと変わらない。そのため、入力作業における効率は他の方式と比べるとだいぶ高い。
一方で、タブレットスタイルにおいても「しっかりとした」キーボードが一緒なので、重量は重くなる傾向にある。2in1 PCにおけるタブレットスタイルは、机上に置いて使えない時に出番となるが、このときに本体を持って支えられないほど重いモデルだと、2in1 PCの意味がなくなってしまう。
経験から言わせてもらえば、1.3kgを超えるフリップ方式の2in1 PCだと電車で立ちながら片手で持って使うのは「まず無理」という次元で、同じレッツノートラインアップのCF-MXシリーズ(こちらは2016年秋冬モデルのCF-MX5で終息)の1.17kgでなんとか片手で持てるレベルで、長時間の使用は「やっぱ無理」という状況だった。
それに対して、800g前後のCF-RZ8はかなり扱いやすい。実際に私の自宅からアスキー編集部に向かう50分ほどの電車移動において立ちっぱなしのタブレットスタイルで使用してみたが、最後まで「片手にPC、片手に吊り輪」のスタイルを維持できたほどだ。
クラムシェルとしてもタブレットとしても“真に使える”RZ8
というわけで、ここまで長々長々と2in1 PCにおけるスタイル変更方式の種別とそれぞれの長所短所を述べてきたが、最終的に言いたいののは、「タブレットスタイルでもクラムシェルスタイルでも“真に使える”2in1 PC」としてCF-RZ8は令和の代でも稀有な存在ということだ。
また、CF-RZ8にはLTE対応モデルもあるため、外出先でいちいちテザリング接続せずにモバイルデバイスとして使える点もポイント。タブレットならiPadやAndroidモデルもあると思うが、デバイス1台で完結させたいなら2in1 PCがオススメで、なかでもCF-RZ8が超オススメなのだ。
あ、そうはいっても1つだけご注進。CF-RZ8の排熱スリットは背面のほぼ中央に設けてある。タブレットスタイルをCF-RZ8を縦長方向で手にしたとき、このスリットが本体を握る手のひらに熱い排熱をまともに吹き付けてくる。なので、心持ち下側を持つように心がけたい。そうするとモーメントで実際より重く感じてしまうのだが、そこはご愛嬌ということで……。
■関連サイト
パナソニック「レッツノートRZ8 CF-RZ8」製品ページ
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