高校生の研究班が保存活動(岐阜県)
「美濃柴犬」は、岐阜県の美濃地方で古くから飼われてきた「地犬」です。とても数が少なく、一時は絶滅のおそれがありました。地元の高校生たちが保存活動に取り組み、去年は初めて繁殖に成功。6匹の子犬が生まれました。(近藤理恵)
一時は絶滅の心配/育てた2匹がママ
美濃柴犬は柴犬のような姿かたちですが、大きく異なるのは毛の色。「緋赤」と呼ばれる赤茶の毛が特徴です。美濃柴犬保存会によると、数は現在、260~270匹とされます。
若い世代も保存活動をしています。動物科学科のある岐阜県立大垣養老高校に「美濃柴犬研究班」があります。2019年に美濃柴犬保存会から、めすの子犬2匹をゆずり受けました。「杏子」と「椛」と名付け、生徒たちが育ててきました。
研究班のメンバーは現在10人。散歩したりごはんをあげたりするほか、しつけや体調管理などをしています。去年の秋、繁殖に初挑戦。11月に杏子と椛はそれぞれ3匹を出産しました。
子犬たちを世話するメンバーには自然と笑みがこぼれます。「椛たちが子犬の時から面倒を見てきたのでママになって感動しました。子犬たちはすっごくかわいい」と3年生。
種の保存に取り組む活動に興味を持ち、研究班に入った部員もいます。「これをきっかけに、もっと多くの人に美濃柴犬のことを知ってほしい」。メンバーは子犬の世話をしながら、体重や体調の記録を取り、今後の研究に生かします。
子犬たちは今月、一般家庭にゆずられました。メンバーは飼育マニュアルを作り、希望者への説明会を開きました。
命に責任を持つこと学ぶ
研究班にアドバイスもしている美濃柴犬保存会理事の片岡繁樹さんは「今回は運よく2匹とも出産ができてよかった」と喜びます。交配させても必ず妊娠するわけではなく、数を増やすことは簡単ではないそうです。「美濃柴犬は飼い主に従順な性格と、夕日をあびたときに先端が赤くかがやく毛色が魅力。これからも守り続けたい」
大垣養老高校の大石真一先生は研究班のメンバーに「命に対して責任を持つことを学んでほしい」といいます。加えて、繁殖を科学的にとらえる視点を身につけることも期待しています。
「犬たちの体の変化や検査を通して交配のタイミングを見きわめることも、もっと生徒に取り組んでほしい。去年は新型コロナウイルスの影響で学校の活動が制限され、それがあまりできませんでした。今後は、繁殖行動を科学的に分析することにも、もっと力を入れたい。そうすることで、交配の確率が上がり、美濃柴犬を増やす手だてになるかもしれません」
*地犬と日本犬|bold** 日本犬保存会は現在、柴犬や秋田犬、紀州犬など6犬種を「日本犬」として公認しています。「地犬」と呼ばれる、地域固有の犬は、美濃柴犬のほか長野県の川上犬、沖縄県の琉球犬などがいます。
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