耳そうじは好きですか? 私は大好きで、ついついやってしまうのですが、耳鼻科の先生たちのグループが、「耳そうじは基本的には不要」と伝える動画を作りました。「え~本当なの?」と疑問に思ったので、動画を作った先生に話を聞きました。
耳あかは移動して自然に外へ
そもそも耳あかは何からできているか、知っていますか? 実は耳あかは、鼓膜の皮膚が変化してできるものなのです。
鼓膜は耳の穴(外耳道)の奥にぴんと張られた膜のことで、人間が音を聞くために必要なものです。古いものから新しいものへと変わる「新陳代謝」によって、真ん中から外側に向けて少しずつ再生されます。そして外耳道の皮膚となり、数か月かけて耳の入り口まで移動。最後は自然に、体の外へと押し出されます。
そこで、静岡県内の耳鼻科医による「日本耳鼻咽喉科学会静岡県地方部会」の学校保健委員会は、耳あかが体の外に出ていくまでのようすを解説する動画を作りました。鼓膜の1か所に色を付けた状態と、ごみ(白い紙)を置いた状態で、耳そうじを一切せず、それぞれ5か月間観察し続けたようすを約12分の映像にまとめています。
この動画を見ると、色を付けた部分やごみが、少しずつ移動していくようすがよくわかります。
中をこすると炎症を起こす
そうはいっても、私は何日も耳そうじをしないと、耳の中がむずむずしてくるような感覚があるのですが……。学校保健委員会の委員長を務める植田洋さんに話を聞くと、この「かゆみ」がくせ者でした。
耳は人間にとって、大切な器官です。目を指でさわると痛いのと同じように、耳も本来は、さわると痛みを感じるようになっていて、鼓膜が傷つかないように守られているのだと言います。
しかし、耳かきや綿棒で耳の中をこすると、耳の中に炎症を起こすので、かゆみの原因になります。「『耳がかゆくてがまんできない』と耳そうじをして『気持ちいい~』と言っている人にはたいてい、耳の中で炎症が起きています」と植田さんは話します。
自然と外に出てくるはずの耳あかがたまってしまうのは、綿棒などで押すことで奥へと押しこまれてしまうからです。
昔から「耳に水が入ると病気になる」ともいわれていますが、植田さんによると、これはまちがい。外耳道も鼓膜も皮膚なので、水にぬれても問題ないと説明します。お風呂上がりやプールの後に耳の中の水をふく人も多いと思いますが、水は自然に乾燥するので、その必要はありません。タオルでふくと、耳あかを耳の奥に押しこんでしまいます。「耳の穴は、ノータッチ(さわらない)が一番です」
耳あかを奥に押しこみ続けると、固まって耳せんのようになってしまい、音が聞こえにくくなるなどの症状が出る人もいます。炎症が原因で、耳の中にかびが生えてしまうこともあるそうです。
耳あかを人に見られたらはずかしい、と思う人もいるでしょう。「エチケットとして気になるようであれば、外から見えている外側の部分を『たまーに』ふくぐらいはいいでしょうが、耳の穴はさわらないようにしましょう」と植田さん。「耳そうじはしない、とみんなの意識が変わっていき、耳あかがつまったり、かゆがったりする人がいなくなってくれれば」と願っています。
映像は、日本耳鼻咽喉科学会静岡県地方部会のホームページからダウンロードできるほか、動画投稿サイトのユーチューブでも公開しています。
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