アメリカ(米国)産の牛肉が、年明けから一部のお店で安くなりました。米国との貿易の取り決めで、輸入したときにかかる「関税」が下がったためです。この値下げから関税や貿易のしくみについてみてみましょう。(中田美和子)
外国の輸入品にかかる税金
大手スーパーのイオングループは「関税引き下げ還元」として、米国産の牛肉2品目を9日から値下げしました。100グラム約300円と約150円の商品が、それぞれ20円ずつ安くなっています。
関税は外国から輸入する商品に対して、価格の何%という形でかけられる税金です。去年の秋に結んだ「日米貿易協定」で、米国産の一部の農産物の関税が今年から下げられていきます。スタートを切ったのが牛肉で、38・5%から26・6%に下げられました。
輸入する商品の価格は、関税以外に、日本のお金と外国のお金の交換の比率、輸送にかかる費用、商品そのものの値段の上がり下がりなどが関係します。イオンの広報担当者は「今後、キウイフルーツ、オレンジ、ベリー類などの関税が下がります。さまざまな要因をみながら、値段に反映していくことになるでしょう」と話しています。
国内産業保護や財源のため
青山学院大学の地球社会共生学部教授で、貿易について教える岩田伸人さんに関税について聞きました。
貿易で輸入するものには2種類あります。一つは、国内になく、よその国にしかないものです。もう一つは、国内にもあるけれども、よその国でつくったほうが安くできるものです。
関税は、輸入をした国の政府に納める税金です。はらうのは輸入する業者ですが、最終的には商品の値段に乗せられるので、商品を買う人がはらっていることになります。
関税の目的は二つあります。一つは国の財源にするためです。もう一つは国内の産業を守るためで、先進国ではこれが主な目的になっています。
世界は自由貿易へ
海外からの安い輸入にたよっていると、国内で同じものをつくる産業はどんどん元気がなくなってしまいます。そこで、輸入する商品が安くなりすぎないように関税をかけ、国内の商品が競争に負けないようにします。
しかし世界では今、「もっと自由に貿易をしよう」という大きな流れがあります。2018年末には日本をふくむ6か国の間で関税が下げられ、オーストラリア産やニュージーランド産の肉が店頭にならぶようになりました。
補助金で農家支援
日本は農地がせまいうえに人件費のしめる割合が高いといわれ、農産物を安くつくれません。関税が下げられると、値段で太刀打ちできない国内の農家は困ります。また、食料をよその国にたよりすぎると、輸入が止まったときに大変です。そのため、政府は農家に補助金を出して支援します。
一方でお店は、日本産だけでなく米国産、オーストラリア産など、値段や品種に、さまざまな品ぞろえができるようになります。買い物をする人にとっては選択の幅が広がることになります。
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