みなさんは自分の呼吸を意識したことがありますか。鼻から吸って鼻からはく「鼻呼吸」が正しい呼吸法ですが、口で吸ったりはいたりする「口呼吸」になっている人もいるのでは? 口呼吸が習慣になっていると、歯並びが悪くなりがちで、顔つきや姿勢、睡眠などにも影響します。(編集委員・根本理香)
正しくは鼻で吸ってはく「鼻呼吸」
人間以外のほ乳類は、口で息をすることができません。人間は話すことができるようになる中で、口も空気の出入り口として使えるようになったといわれています。
口呼吸がなぜ歯並びに影響するのでしょうか?
ポイントは「舌の位置」だと神奈川県鎌倉市の歯科医師・伊藤裕人さん(43歳)が解説します=イラストを見ながら読んでね。
正しい鼻呼吸をしているときは、舌は上あご部分にぴったりとついています。口呼吸で口が開いているときは、口の中で舌が下がった状態になります。
歯並びは、ほっぺやくちびるの筋肉が外から内側に向かって押す力と、舌が上あご部分を内から外側に向かって押す力のバランスで成り立っています。口呼吸で舌が下がった位置にあると、このバランスがくずれ、外側からの力のほうが強くなってしまいます。このため、上あごの成長がさまたげられて、せまくなり、歯がきれいに並ばなくなってしまうのです。
上あごがうまく成長せず、口を閉じる筋肉もあまり使われないので、面長で、たるんだ顔つきにもなりがちです。
伊藤さんは「最近は虫歯の子どもは減っているけれど、歯並びの悪い子どもが目立つ。歯並びのいい子のほうがめずらしい」と話します。歯並びをきれいにしようと歯列矯正する人も多いですが、口呼吸などのくせも直さないと、また歯並びが乱れてしまうそうです。
風邪ひきやすく、いびきも
鼻には空気清浄機と加湿器のような役割があります。鼻で呼吸をすれば、空気中のごみや細菌が体内に入りこむのを防ぎ、ちょうどよい湿度や温度の空気を肺に送りこみます。口呼吸だとそれができないので、風邪などの感染症にかかりやすくなるといわれます。
また、口呼吸をしていると、空気の通り道を確保しようとして首をつき出したような姿勢になります。睡眠中には舌の付け根が下がり、いびきをかきやすくなります。朝起きると口の中が乾燥してカラカラということになりかねません。
「あいうべ体操」
では、なぜ口呼吸になってしまうのでしょうか?
鼻がつまっている人だけでなく、以前鼻がつまっていたために口呼吸をしたのがくせになってしまったケースなどが考えられます。
鼻がつまっている場合は、まずは耳鼻科に相談して、解消しましょう。
鼻がつまっていない場合には、舌を上あごにつけて、口を閉じ、鼻から静かに呼吸することを意識しましょう。寝るときに口が開かないように医療用テープをはることも有効です。
舌や口の筋肉をきたえるための「あいうべ体操」を試してみるのもいいそうです=イラストを見ながらやってみてね。
「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく動かします。声は出しても出さなくてもいいです。「べー」で舌を口から思いきり出すのがポイントです。1日30セットを目安に続けてみましょう。
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