空からのたより
5月はだんだん日差しも強くなってきますが、木陰に入るとさわやかな風がふき、外ですごすのが気持ちいい時期ですね。季節は春から夏に向けて変わり始めている最中で、あと半月もすれば、全国的に雨の季節「梅雨」に入ります。
ところで、梅雨入りを前にくもりの日もだんだん増えてきますが、晴れた日はそうでもないのに、くもりの時や雨が降る前などは、ふわっと風に乗って花のいい香りがしたり、土や草木の香りをいつもより感じたりすることはありませんか? 私が小学生のころは、家のまわりが田んぼに囲まれていたせいか、くもっていたり、雨が降ったりする前は土や草の香りがしていたことを思い出します。
くもりの日や雨が降る前に香りが強くなるのは理由があります。一つは、湿度が大きく関係しています。くもりや雨が降る前は、空気中に水蒸気が多くなります。湿度が高く水蒸気が多くなると、香りの分子が空気中にとどまりやすくなるため、香りが強く、長い時間にわたり感じられやすくなります。
逆に湿度が低く水蒸気が少なくなると、空気中に香りの分子が広がりやすくなるので、香りも弱く、香りが感じられる時間も短くなります。
晴れた日とくもりの日を考えてもよくわかるかもしれませんね。晴れた日は、空に雲がほとんどありません。晴れた日は太陽で暖められた地上の空気が、上空に向かって流れていきます。香りの分子はこの空気の流れに乗って空の上へと広がっていくので、香りがとどまる時間も短く、香りの強さも弱く感じられます。
でも、くもりの日は雲が空気の流れを止めるので、地上付近で空気が対流します。このため、香りの分子が長い間、同じ場所に残り、香りの強さが強く感じられるのです。
さて、今の季節は全国的にバラの花が見ごろをむかえていますね。バラは芳香剤に使われるなど香りが強く、リラックスできるいやしの効果もあります。バラがさきほこる庭園やバラ園などがありますね。晴れた日に赤やピンクなど色とりどりのバラを観賞するのもいいですが、香りをじっくり味わいたいなら、くもりの日に観賞するのもおすすめです。
古庵潤子(ふるあん・じゅんこ) 日本気象協会気象予報士松山大学卒業。テレビ局勤務を経て、現在は、日本気象協会で新聞のコラム執筆などを担当している。ヨガインストラクターとしても活動中。
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