ピアノから見いだした役目
「ピアノの音って最高!」と衝撃を受けたのは2歳くらい。CDなどを「もう一回聞きたい、もう一回」とせがんだ。家にもピアノがあり、人さし指1本でメロディーをかなではじめた。
「帰ってきたらパカッとピアノのふたを開ける。ぼくにとっては大きなおもちゃでした」
母方のふるさとの国ハンガリーにはピアニストになりたい人のための学校があると聞き、すぐに「行く」と決めた。6歳で家族とはなれ、祖父母とくらしはじめた。
地元の小学校は金髪で色白、青い目の子どもばかりで、仲間外れにされた。午後は音楽好きの友だちと本格的に学ぶことができた。
「午前中は苦痛で午後以降は楽しい。ギャップのある生活でしたけど『ぼくにはピアノしかないんだ』という新たな原動力につながり、どんどんピアノと音楽の世界にのめりこんでいきました」
あこがれの国立リスト音楽院大学には飛び級で11歳で入学した。5年で学び終え、東京の高校へ。このころ親せきにすすめられて朝小を読んでいたという。「ルビ(ふりがな)がふってあるので漢字の勉強になりました」と笑顔で語る。
日本で生活するうちに、ハンガリーと比べて芸術が身近ではないと感じた。ピアニストとして日本を中心に活動して「芸術の魅力を発信することで、もっと身近なものに変えていくお手伝いができるのかな」と、自分の役目を見いだした。「世界で5本の指に入るピアニストになる」という目標も、小さいころから持ち続けている。
8月にはバレエ音楽がテーマのコンサートを開く。「バレエを習っている子が生演奏を聴いたり、音楽を習っている子がバレエダンサーの話を聞いたりすると、また新たな発見につながるのかなと想像するんです」
金子三勇士の「弾む♪ワルツ」
~名曲バレエ音楽の世界~
8月8日に東京オペラシティで開催
音楽とおどりは、おたがいにとって「なくてはならない存在」。そこでバレエ音楽を演奏し、バレエダンサーの柄本弾さんとおしゃべりするコンサートを企画した。「くるみ割り人形」「ロミオとジュリエット」「椿姫」の曲や、ドビュッシーの「月の光」などを演奏する予定だ。
かねこ・みゆじ
1989年生まれ。ハンガリーの国立リスト音楽院の課程を終え、16歳で東京音楽大学付属高校に編入。2010年にデビューアルバム発売。ラジオ番組「リサイタル・パッシオ」に出演中。
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