お姫さま お菓子物語
マントノン侯爵夫人Marquise de Maintenon(1635~1719年)
1635年、フランソワーズ・ドービニェは、フランス西部の町、ニオールの監獄で生まれました。父のコンスタン・ドービニェが、敵国イギリスに通じていたため投獄されていたのです。母のジャンヌ・ド・カルディヤックは、看守のむすめでした。
早くに両親を失ったフランソワーズは、老作家のスカロンと結婚。貧乏な結婚生活でしたが、彼女の優しい人柄と楽しい話術で、お客さまがたえませんでした。お肉がなくて困ったとき、「奥さま、もう一つお話をなさってください。そうすればお肉がないことにみなさま気づかないでしょう」と従者がいったというエピソードが残っています。
夫の死後、ルイ14世の子どもたちの養育係として宮廷に入ります。社交術のすばらしさを王さまに認められたフランソワーズは、マントノンの名前と侯爵夫人の爵位、財産を得ます。その資金で貧しい貴族のむすめを教育する王立学校を創設し、礼儀や作法を教えました。ベルサイユ宮殿のサロンは、優しい人柄と機知に富んだ会話で、いつもにぎわっていました。
また、お料理やお菓子作りが好きな夫人は、オーブンを発明した人としてフランスの百科事典に残っています。数々のオーブン料理や、めずらしいデザートが登場したときの王さまたちの驚きの声が聞こえてきそうですね。
83年、王妃マリー・テレーズが亡くなると、ルイ14世は、マントノン夫人と結婚。しかし、身分ちがいの結婚は、公にされることはありませんでした。1715年、ルイ14世が亡くなると、後を追うように、19年、83歳の生涯を静かに閉じました。
☆シャルロット・マントノン
リボンを結んだ帽子のようなシャルロット・マントノン。スポンジシートで縁どりしたケーキの中には、香ばしいアーモンドをまぜこんだチョコレートクリームがぎっしりつまっています。このチョコレートクリームは、ゼラチンを使わず、チョコレートと泡立てたバター、生クリームで固めています。
チョコレートは、ルイ14世のきさきだったマリー・テレーズが、結婚のときにスペインからベルサイユ宮殿にもちこんだものだといわれ、またたくまにヨーロッパ中に広がりました。マリー・テレーズが亡くなった後、ルイ14世と結婚したマントノン夫人は、王さまの心をなぐさめるために、マリー・テレーズゆかりのチョコレートを使ったお菓子を作りました。
それがこのシャルロット・マントノンです。あたたかで、ユーモアに富んだマントノン夫人の人柄を伝えるお菓子です。
〈材 料〉
(15センチ丸型1台分)
※スポンジシート
卵……3個
グラニュー糖……70グラム
薄力粉……60グラム
バター……25グラム
※フィリング(中につめるもの)
皮つきアーモンド……40グラム
スイートチョコレート……100グラム
バター……60グラム
生クリーム……240グラム
粉糖……60グラム
※仕上げ
粉糖……適量
リボン
〈作り方〉
① ボウルに卵とグラニュー糖を入れ、湯せんにかけて温め、白っぽく、もったりするまで泡立てる。
② ①の中に、ふるいにかけた薄力粉と溶かしたバターを加え、さっくりとまぜる。
③ ②をクッキングシートをしいた天パンに流し入れ、180度のオーブンで12~15分焼く。
④ 皮つきアーモンドは、オーブンで香ばしく空焼きし、あらくきざむ。
⑤ スイートチョコレートは、湯せんにかけて溶かす。
⑥ バターと粉糖を泡立て器でよくすりまぜる。
⑦ ⑥がふんわりしたらその中に④と⑤を加える。
⑧ 生クリームを六分立てに泡立て、⑦に加え、まぜ合わせる。
⑨ スポンジシートを直径8センチの丸型で2枚ぬき、残りは8センチ×4センチの長方形に切る。
⑩ 長方形のスポンジを型の内側にはりつけるように並べて、底に丸型のスポンジを1枚しく。
⑪ ⑩の中にフィリングをつめ、残りの丸型のスポンジでふたをし、冷蔵庫で冷やし固める。
⑫ 皿に型の底を上にしてのせて型をはずし、上から粉糖をふり、写真のようにリボンを結ぶ。
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【監修】今田美奈子(いまだ・みなこ)洋菓子・食卓芸術研究家
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