日本の子ども・若者の自己肯定感は高い?低い?
社会で生き抜く力や自己実現、プライベートの充実など、その人が豊かな日々を送る資質のひとつとして知られる自己肯定感や自己有用感。日本の子ども・若者は他の先進国と比べ、これらが顕著に低いことが明らかになりました。学校教育や家庭環境から見えてくる背景とは?
諸外国との比較で、自己肯定感・有用感は最下位
子ども・若者の現状を紹介する内閣府の「令和元年版 子供・若者白書」(※平成30年11~12月、日本を含む7つの国の満13~29歳までの男女に対しインターネット調査を行い各国約1000人からの回答を集計)。これによると、「自分自身に満足している」の項目で、「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」と答えた日本の子ども・若者の割合は55%。
また、「自分には長所がある」の項目で、「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」と答えた人の割合は37.7%でした。日本の子ども・若者は、諸外国と比べ、自己肯定感や自己有用感を感じる人の割合が最も低いことがわかりました。
さらに、「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」に「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」と回答した人の割合も、調査した7か国中最も多いことが明らかとなりました。
偏差値重視の学校教育とそれをとりまく家庭環境が要因?
二人の子どもを持つ親として、この結果はとてもショックでした。しかし、日本の教育制度とそれをとりまく家庭環境が、このような状況をもたらした一因となっているのではないでしょうか。
日本はひと昔前まで、「いい大学を出て、いい会社に就職することが良し」という風潮がありました。時代の流れとともに働き方やライフスタイルの多様化が進み、このような風潮は薄れてきてはいますが、管理型の一斉授業、偏差値重視の学校教育や教育環境については、変化のきざしはなかなか見えません。
テストや受験でうまくいかないと「自分はダメな人間だ」といった劣等感を抱きやすく、この蓄積が、自己肯定感、自己有用感の低下につながっていることが推察できます。
子どもが小さい頃は、「毎日元気でいてくれれば幸せ」と感じていた親も、小学校、中学校と進むにつれわが子の成績が気になりだし、できないところに目がいってしまいがち。個人の価値感よりも“世間体”を気にする社会構造も手伝い、周りと比べてわが子についダメ出ししてしまうことも、子どもの自尊感情を低下させている気がしてなりません。
子どもの自己肯定感・自己有用感を育む親の姿勢とは
「自分は価値のある人間だ」と思える感覚を高めるために、子どもにどう関わればよいのでしょうか、親である自分自身への戒めも含め、考えてみました。
1:偏差値(数字)に振り回されない子育てを心がける
子どもの成績が気にならない親はいないと思いますが、「(勉強はあまり得意じゃないけど)周りのことを思いやれるやさしさがある」「コミュニケーション能力がある」など、その子が本来もっている良さを再確認し、言葉に出してほめましょう。
2:子どもを一人の人間として尊重する
当たり前ですが、子どもは親の所有物ではありません。上から目線で「〇〇しなさい」「××はダメ」など命令したり否定したりしてばかりだと、子どもは自分で考える意欲をなくし、“指示待ち”になりがち。一人の人間として尊重し、「共感して受け止める」「応援する」スタンスで関わることを心がけましょう。
3:親が自分の人生を楽しむ姿を見せる
親自身が人生を楽しみ、仕事でも趣味でも地域活動でも、生き生き取り組む姿を見せることも大切です。親が自己肯定感を高めていくことにより、子どもの自己肯定感も高まるはずです。
自己肯定感や自己有用感はすべての力の土台であり、幸せに生きていくために欠かせない力。次代を担う子ども・若者のためにできるのは、私たち大人(親)が、1日のうち5分でも10分でも、幸せを感じられるような日々を送ること、子どもを尊重し、「プラス」の視点で関わることなのではないでしょうか。
文:長島 ともこ(子育て・PTA情報ガイド)