親のタバコは受動喫煙のみならず、情緒面や子どもの喫煙率にも影響が
喫煙する大人が周りにいる場合、子どもは「二次喫煙(セカンドハンドスモーク):受動喫煙」と「三次喫煙(サードハンドスモーク):残留受動喫煙」にさらされます。
「二次喫煙」とは、喫煙者が吐く煙、そして、燃えるタバコの先から出る煙を吸入することです。そして、「三次喫煙」とは、喫煙した場や、その場に存在した物や人に付着した煙を吸入することをいいます。
例えば、付着した煙は、車の座席、部屋の家具、身体や髪の毛などから見つけられます。
こうした煙は、約4000の化学物質を含み、その中の多くは危険なものとされ、また50以上が発ガン性物質と分かっています。そして、周りの大人が喫煙するたび、子どもは、これらの化学物質にさらされています。
喫煙が子どもの身体面に与える影響
では、喫煙は具体的に、どのような影響を子どもに与えるのでしょうか?
「アメリカ小児学会(The American Academy Pediatrics :AAP)」は、妊婦の喫煙や二次喫煙は、流産、未熟児、突然死(SIDS)、そして学習障害や注意欠陥・多動性(ADHD)に繋がる可能性があるとしています。
また、子どもの二次喫煙は、中耳炎、咳、風邪、気管支炎、肺炎、虫歯などにかかったり、その疾患をこじらせるリスクが高くなるといいます。そして、長期的には、肺がんや心臓病なども引き起こす可能性があると発表しています。
喫煙が子どもの情緒面に与える影響
テキサス大学教授フランク・バンディエラ氏によると、アメリカの8歳から15歳の青少年を対象とした研究では、二次喫煙は、子どものウツ、不安症、パニック障害などのメンタルヘルスに影響を与えるとされています。
また、ブリストル大学のマリエ・ブリオン氏率いる研究によると、英国の中流家庭とブラジルの低所得者層を比べたところ、両方のグループで、母親が喫煙をしている場合、喫煙しない場合よりも、子どもが攻撃的で、ルールを破り、いじめをし、カンニングや問題行動を示すリスクが平均で53%上昇したといいます。
一方、父親の喫煙が、子どもに与える影響は、母親の半分ほどだったといいます。
そして、コロンビア大学の研究では、親が喫煙者の場合は、そうでない場合より、ティーンが少なくとも1回喫煙をする確率が3倍多くなり、喫煙者となる確率は2倍多くなるといいます。また、母親が喫煙者の場合は、ティーンの娘が喫煙者になる確率が4倍になるとされています。
喫煙が子どもと大人の認知面へ与える影響
フロリダ州立大学の研究チームによると、父親がニコチンにさらされることで、子どもと孫に、認知面での欠陥がみられるようになったといいます。これは、父親の精子の鍵となる遺伝子に変異が起きたためだろうと結論づけられています。
また、イギリスのノーザンブリア大学の研究によると、二次喫煙にさらされた非喫煙者は、さらされなかった非喫煙者よりも、記憶テストにおいて約20%多くのことを忘れやすかったといいます。また、喫煙者本人は、非喫煙者より、30%以上多くのことを忘れやすかったといいます。
子どもは大好きな親がいつまでも健やかであって欲しいと願っている
喫煙が子どもに与えるこれらの影響を踏まえた上で、親として何ができるでしょうか?
■禁煙する
喫煙が子どもの身体面・情緒面・能力面へ与える影響を理解し、できるならば、禁煙したいです。どうしても禁煙できない場合は、子どものいない屋外で喫煙するようにしましょう。
とはいえ、どこで喫煙したとしても、身体には煙がついており、子どもには三次喫煙のリスクがあることを覚えておきたいです。また、子どもは、大好きな親が、いつまでも健やかであって欲しいと心から願っていることを思い出していきましょう。
■二次・三次喫煙を防ぐ
たとえ喫煙所に喫煙する人がいなくても、立ち入らないようにします。子どもの乗る車は禁煙にし、知り合いに子どもの前では喫煙しないよう頼みましょう。また、レストランや乗り物でも、禁煙席を選択するようにします。
喫煙について子ども自らの頭で考え判断する力を育むためには
親が喫煙者であってもなくても、タバコの危険性について子どもが自らの頭で考え判断する力を育むことが大切です。頭ごなしに「吸ってはいけない」と話すより、喫煙の影響や状況について、客観的な資料を用いて、話し合いたいです。
目指したいのは、子どもが親の意見に「従う」ようにするのではなく、子どもが自らの頭で考え、判断する力を育むことです。
次のような内容について話し合ってみましょう。
■喫煙の影響について
上にあげた身体・情緒・認知面への影響の研究について話し合ってみます。また、喫煙者と非喫煙者の肺や歯の画像等を視覚的に見比べるのも、子どもにも理解しやすく、記憶に強く残ります。

■喫煙の開始年齢について
日本では、喫煙者の50%が、18歳以下から吸い始め、90%が20歳までに、98%が25歳までに開始するという事実を理解し、「最初の一本を吸わない」大切さについて話し合ってみます。
■友達に誘われたらどうするかについて
どんな具体的な言葉で断るか、また、断っても理解しない友達からは距離をおくという選択肢について話し合います。
■喫煙について親自らの後悔や困難について
米国の医学博士ローレン・ワクシュラグ氏率いる研究によると、親が喫煙の悪影響についてティーンに説教するよりも、喫煙について過去後悔した自らの経験や、現在禁煙できない葛藤などを赤裸々に告白した方が、その6カ月後にティーンが喫煙しなくなる確率が上昇したといいます。
子どもは、親の「言葉」より、実際の「行動」からより学びます。
これからを生きる子どもたちが、大人の喫煙により必要のないリスクを背負うことがないよう、できることを実行していきたいですね。
●参考文献:子どもの前でタバコ…親が喫煙する家の子どもが抱えるリスク(https://allabout.co.jp/gm/gc/478521/)記事下段に記載
文:長岡 真意子(子育てガイド)