ひつじを数えるより眠れる?
カナダのサイモン・フレーザー大学のリュック・ボードワン博士が、簡単で効果のある睡眠法を開発しました。「認知シャッフル睡眠法」といいます。何をシャッフルするかというと、脳の中をシャッフルするのです。
私たちは、頭や身体を一生懸命に使っているときには眠くなりません(話したり歩いたりしているときに急に眠りこんでしまう人は、過眠症の可能性があります)。脳には、脳を活動させて起きていようとする「アクセル」と、活動を静めて眠ろうとする「ブレーキ」があります。
日中は、脳のアクセルが踏み込まれているので起きていられます。しかし、面白くない会議や授業のときには脳が退屈してアクセルを緩めます。さらに、ブレーキを踏んでしまうので眠気に襲われます。会議で発言したり、手を動かしてノートをとって勉強したりするときに眠くならないのは、脳のアクセルが踏み込まれたままの状態だからです。
同様に、就寝時に布団の中で悩み事や考え事をしていると、脳の活動が高い状態で維持されるので、脳の覚醒アクセルを踏み続けていることになり、なかなか寝付くことができません。
そんな時に「認知シャッフル睡眠法」を行うと、言葉に関連した情景を思い浮かべるだけなので、脳のアクセルが緩んで眠くなります。脳は2つ以上のことを同時に考えられないので、認知シャッフル睡眠法をしていると悩み事が意識に浮かびにくくなるという利点もあります。
単語に関連する画像をイメージする
本来の認知シャッフル睡眠法は、アルファベットで行う入眠法ですが、ここでは日本人向きに、日本語にアレンジして解説してみましょう。
■1. 寝床についたら、簡単な単語をひとつ思い浮かべる
単語は何でもかまいません。ただし、仕事やストレスに関連するような言葉、たとえば「会社」「締め切り」「プレゼン」「人間関係」などの言葉は避けた方が良いでしょう。一例として、はじめの言葉を「芸術の秋」にしてやってみましょう(この言葉にストレスを感じる人は、他の言葉を探してください)。
■2. 選んだ単語の「最初の一文字」から始まる単語の映像を思い浮かべる
「げいじゅつのあき」の最初の「げ」から始まる単語を思い浮かべます。たとえば、「劇画」「ゲソ天」「げらげら」「元気」「現代」……。そして、その単語から思い浮かぶ画像を数秒間イメージします。
濁音「゛」や半濁音「゜」がつく単語が難しければ、それらがつかない単語(例えば「げ」→「け」)に変えて探しましょう。関連がある単語はなるべく避けて、つながった話にならないようにすることも大切です。
■3. 次に「二文字」目から始まる単語の映像を思い浮かべる
「げ」から始まる単語が思い浮かばなくなったら、次に「い」から始まる単語を探します。「家」「イカ」「息抜き」「犬」「色鉛筆」……。ここでも、1つの単語が浮かんだら、それに関する画像を数秒間イメージします。そのイメージに飽きたら、次の単語を探します。単語が思い浮かばなくなったら、次の文字に移ります。
「を」や「ん」から始まる単語は、飛ばしてもかまいません。「ん廻し」や「ンゴロンゴロ保全地域」「をかし」「ヲタク」などが思い浮かべば、使ってもかまいませんが、あまり無理をすると眠れなくなります。単語の中に同じ文字があるときは、2つ目以降の文字は飛ばしてもかまいません。
多くの人は、一文字目の単語で認知シャッフル睡眠法を行っているうちに眠ってしまいます。はじめの単語が終わってもまだ眠気が不十分なときは、二文字目の単語に挑戦しましょう。あまりこだわらずに、気楽に楽しくやったほうが早く眠れますので、お試しください。
文 : 坪田聡