単純明快な形は強い
例えば地震が起こった時や強い風が吹いた時、建物は縦方向や横方向に強い力を受けます。また、そのような力がかからなくても、常に上から下に荷重はかかっていて、常時2階の荷重は1階に流れ、またそれを地盤面に流しています。
地震や風で力が建物にかかった時に建物が踏ん張って耐えることと、上下方向の力の流れがスムーズであることが「耐震性の高い家」の一つの条件になります。その条件を満たすために、建物の形は「単純であるほどよい」と考えられています。
単純明快な形とは
それでは「単純明快な形」とはどのような形をいうか図で確認しましょう。単純明快な形とは、長方形を代表とする「整形」をいいます。この長方形に近いシンプルな形が「地震に強い形」です。反対に凹凸の多い形は複雑な形となります。単純明快な形の例、複雑な形の例を【図1】に示します。
地震に強い形……平面形状
【図1】の左側が「単純明快な形の例」です。上の「A」が平面図、下の「B」が立面図です。平面図は建物をある程度の高さで横にスパッと切り上から見た図のことで、立面図は建物を横から見た姿図です。
ここで示した平面図「A」はいくつかの長方形が組み合わさった形をしていますが、このように、建物の平面をいくつかの長方形に分割できるようであれば、今回定義するシンプルな形と考えてよいでしょう。
地震に強い形……立面形状
また、立面的に見た形について、1・2階が全く同じ形の総2階になっている形は、全体でみればシンプルな長方形ですので単純明快な形と言えます。しかし2階部分の面積が1階部分より小さくセットバックする場合は、図「B」のように、2階部分ができるだけ1階部分の真ん中にのっているほうが地震に耐えやすい、バランスの良い形となります。
地震に弱い形……平面形状
前述の【図1】の「C」に「複雑な平面形の例」を示しました。凸凹が多い形をしています。こういう複雑な形状をしていると、例えば横からの力を受けた時に、家が一体となって踏ん張れず、ある部分に力が集中してそこにねじれが生じ、その部分から損壊が始まるなど、弱点になってしまう可能性があります。
地震に弱い形……立面形状
複雑な立面形状の例として前述の【図1】「D」をご覧ください。2階部分がセットバックしていますが、1階の中央ではなく片側に偏ってのっています。
また、赤マルで囲まれた「い」の部分は、上に建物があるのに真下の部分に柱や壁がありません(図参照)。このように、2階の荷重を受ける1階部分がない形(=オーバーハンチング)は上の荷重がスムーズに下に流れず、建物のどこかに負担をかけています。大きな地震が起きた時、ここが弱点となり倒壊・崩壊を招く危険性を持っています。
弱点を補強しよう
以上に述べてきたように、平面形状・立面形状が複雑で、地震時に踏ん張りがきかない形をしているとわかったら、弱点となる部分を補強しましょう。補強の方法は、例えば通し柱や耐力壁を増やして変形に強くするなど、その建物の状況によってさまざまです。適切な補強をすることで、地震に強い家にすることができます。耐震補強は構造設計を専門とする建築士事務所などの専門家に相談してください。
増築時などに要注意
今回は、地震や風に耐える建物の形は「シンプル」で「単純明快」な形だとご説明いたしました。これから家を新築する人は、全体的な形が地震に強い形をしているかチェックしてみてください。また、増改築をする際にこのバランスが崩れやすくなるので、増改築の計画を立てるときも、全体的な形がシンプルであるかどうかも合わせて確認するようにしてください。
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文:井上 恵子