宝石商のファミリーに生まれた福王寺朱美さんと、著名な日本画家の祖父と父をもつ、一人娘の彩野さん。共に芸術を身近に感じて育ったお二人の“ちょうどいい”関係と、継承されていくエレガンス哲学とは?
正反対だからこそ共鳴するエレガンスの新しい形
オフホワイトを基調にした心地よいムードの自宅リビングにて。朱美さん(右)はスカート、彩野さんはワンピースで、ピンクカラーをリンクさせた春らしいコーデ。
専業主婦だった福王寺朱美さんが、大好きな物作りを極めたいと一念発起し、家業でもあったジュエリーの道を選んだのは40歳の時。ブランド「アーカー」を設立し、仕事に没頭する毎日だったとか。
「当時私は中学生。母親が働くのは珍しい時代でしたし、寂しくて文句を言ったことも」と彩野さん。大学生になると、朱美さんいわく〝情熱的なおたく〟の一面を生かして、プレス担当に。
「経験はゼロでしたが、ファッションが大好きで雑誌マニアでした。毎月50冊以上読み込んで、キャプションは暗記(笑)。放課後に商品を持って編集部を回ったり、連載を持つ機会も」
〝好き〟を発信する娘と、ディスプレイも手作りする職人肌の母。「好みも真逆。私が作る華奢なジュエリーは似合わないと、大きくて派手なデザイン画を見せに来て。それがとても素敵で!」と朱美さん。
「〝コレカワイイね〟というものは驚くほど一致するんです」という彩野さんは、21歳で自身のブランドもローンチ。2018年に「アーカー」がTASAKIグループに入ると、朱美さんからバトンタッチしてクリエイションを手掛けるように。二人のちょうどいいバランスで、一緒にビジネスを成長させてきました。
昨夏は二人で海外を旅し、お揃いのベルベット生地でオートクチュールのドレスを注文。「一緒にお洋服を作るのは初めて。娘との時間も思い出深く、最高の経験でした」と朱美さん。「尊敬する母と、一緒に何かを生み出す楽しさは特別。今後もお互いの〝好き〟を生かして、HAPPYをお届けしていきたいと思います」
初めて一緒にオーダーしたオートクチュールのドレス
シャネルのオートクチュールドレスをまとって。「敬愛するカール・ラガーフェルドの、オマージュのようなデザインに一目ぼれ!」と彩野さん。朱美さんは肩の大きなリボンが優雅。
福王寺朱美さん
Akemi Fukuoji
[AHKAHファウンダー、Filrouge代表取締役]
Profile●東京生まれ。シアトル大学留学。米国宝石鑑定士の資格を取得し、1997年、ジュエリーブランド「AHKAH」を設立。現在は芸術支援とクリエイターを育成する会社「Filrouge」を運営。
福王寺彩野さん
Ayano Fukuoji
[AHKAHディレクター]
Profile●1981年東京生まれ。成城大学在学中より「AHKAH」のPRとして活躍。博物館学芸員。文化勲章受章者の福王寺法林氏を祖父に、日本画家の福王寺一彦氏を父に持つ。
Photos : TOMOKO MEGURO, HAYATO, Hair & Make-up : HIRONORI TANAKA[LA DONNA]
25ans(ヴァンサンカン)6月号掲載(2020/4/27発売)