2010年にウィリアム王子がキャサリン妃にサファイアの婚約指輪を贈ったことが報じられた時には、世界中でサファイアブームが巻き起こった。楕円形のサファイアが14個のソリティアダイヤモンドに囲まれたこの指輪は「ガラード」が制作したもので、元々はダイアナ元妃が所有していた。この指輪に秘められた物語をのぞいてみよう。
はじまりは、ヴィクトリア女王
何世紀もの間、サファイアは英国王室で大切にされてきた宝石だった。すべての始まりは1840年。アルバート公が未来の妻ヴィクトリア女王にサファイアのブローチ(台座はゴールドで、周りをダイヤモンドが囲んだもの)をプレゼントしたことだった。
サファイアが家宝に
英国王室御用達のジュエラー「ガラード」のクリエイティブ・ディレクターが明かした話によれば、ヴィクトリア女王は「(この贈り物を)大変気に入り、結婚式の日にドレスの前面にそのブローチを付け、サムシングブルーとして身につけていたようです」とのこと。ヴィクトリア女王は63年間の治世で多くの貴重な宝石を集めたが、このブローチはアルバート公が亡くなるまで大切にし続けた。そして、このブローチを家宝として常に君主の所有とすることを遺言に残したそう。
エリザベス女王のお気に入り
君主になったエリザベス女王はこのブローチを継承しており、頻繁に身につけているところをみれば、大変気に入っている様子。そして、このブローチが、ダイアナ元妃への婚約指輪を選ぶチャールズ皇太子にインスピレーションを与えた。
ダイアナ元妃に贈られた婚約指輪のインスピレーション源は?
「ガラード」は、「チャールズ皇太子はいつも母親の美しいサファイアのブローチを見ていました。ガラードを訪れてあの指輪を見つけ、パーフェクトだと思ったそうです」と語った。
受け継がれるサファイア
青い石の虜になり、母親のブローチが心に浮かんだチャールズ皇太子は、その指輪をダイアナ元妃に贈り、見事プロポーズに成功した。
タイミングが異なれば、メーガン妃の指輪になっていた可能性も!
あくまで噂の範囲だが、ダイアナ元妃の早すぎる死の際に、ウィリアム王子とヘンリー王子はそれぞれ彼女の遺品から2つずつ形見の品を選ぶことができたと言われており、ウィリアム王子は「カルティエ」の時計を、ヘンリー王子はサファイアの婚約指輪を選んだそう。
兄を想うヘンリー王子の粋なはからい
しかしながら、ウィリアム王子のケイト(現キャサリン妃)への思いを知ったヘンリー王子が、自ら指輪と時計の交換を申し出たのだという。キャサリン妃の指に輝くサファイアの指輪には、そうしたヘンリー王子の兄を想う気持ちも込められていた。
未来へつながるサファイアの歴史
2つのサファイアの家宝には王室の長い歴史が刻まれているが、今後はシャーロット王女がブローチを身につけたり、ジョージ王子が将来の婚約者に指輪をはめたりする姿を見ることができるのかもしれない。その時を楽しみに待ちたい。
photo : Getty Images
translation : Ai Ono