「頑張りすぎないってことを、すごく大事にしています。人に頼ったりとか、弱音を吐いたりだとか」
23歳にして"国民的女優"とも言える地位を築き上げている橋本環奈。
負けず嫌いで、完璧主義の努力家──。そんなイメージもある彼女だが「『完璧じゃなくてもいい』と思える自分を受け入れるようにしています」と話す。
メディアに出る以上は、ファンや視聴者に「元気を与えたい」。そんな思いで、いつもポジティブな発信を心がけてきた。
しかし予期せぬアクシデントに直面したり、落ち込んだりする瞬間がなかったわけではない。
彼女はそういったものとどう向き合い、折り合いをつけてきたのだろうか。
「どれだけ状況が悪くて悲観的になっていたとしても、明日とか明後日とか、その先どうなっているかは、まだ分からないわけじゃないですか」
「でも明日を作るのは今の自分なので、明日の自分のために今、何ができるかだと思うんです」
「それを1週間引きずるのか、1日で立ち直るのかで全然違うと思うんですよね」
「落ち込みの大きさにもよるし、もちろんなかなか立ち直れないこともあるから、そういうときはちょっとずつでいいと思うんですけど」
「1人で立てない時は無理して1人で立つ必要はないし、周りに支えてもらうことも大事だと思います」
そんな考えがベースにあったからだろうか。
これまでもたいていのことには大きく動じず、やり過ごすことができた。
2020年、2月3日に21歳の誕生日を迎えた頃から新型コロナウイルスの影響が広がり、世の中の状況が変化していった。
緊急事態宣言が発出されている時期もあったが、当時も決して悲観的になることはなく「わりと楽しみながら過ごしていた」という。
インドア・アウトドアのどちらでも楽しめる性格だったこともあり、外出自粛を求められても退屈することはなかった。
「料理する機会が増えたり、衣替えをしたり。おうちの片付けや掃除もずっとしていましたね。ラベルが全部前を向くようにそろえたりとか、整理整頓されているのが好きなんです」
「物に囲まれている方が安心する人もいると思うんですけど、私は殺風景な部屋のソファーでゆったりするのがリラックスできるんですよね」
「他には、ぬか漬けを始めました(笑)。発酵食品が健康に良いって聞いたので」
「コロナ禍になった時、私は20歳を過ぎたタイミングだったから、まだ良かったのかなと思うこともあります」
「でも私のことを応援してくださっているのは年下の方が多いから、特に学生だと、その時にしか味わえないことが多いじゃないですか」
「大会が中止になってどんなモチベーションで部活をやればいいのかとか、修学旅行にも行けなくて、ずっとマスクをして閉塞感のある中で限られた行動しか取れないとか」
「話を聞いていると、そういう悔しい思いや、つらい思いをした子が多いんです。しかもその気持ちを晴らす場所がないから、どうしても後悔が残ると思うんですよ」
「『仕方ない』とは思うんですけど、そんな状況を受け入れてしまっていいものかというのは、私もすごく考えていました」
だからこそ「寄り添うことを大事にしたい」。
そう考え、SNSやライブ配信などでファンと繰り返し交流した。
「リモートでできることをやってはいたんですけど、やっぱりどうしても、実際に会えるファンイベントとかと比べちゃうと…っていうのはありますよね」
「でも、そういうことを乗り越えた子たちだから、今の学生さんは強いのかもなと思ったりもするんです」
ファンと会える機会が減った分、届くファンレターの数は増えた。
特に「小学校高学年の女の子」からが多く、次に多いのは「中学生の女の子」だという。
「ドラマ『今日から俺は!!』(2018年放送)の頃から小学生のファンの方が増えたんですけど、便箋にシールを貼ったり、絵も描いてあったりして、めちゃめちゃかわいいんですよ!」
「『いつも応援しています』とか、『ママに言って家族で一緒に映画館に行きました』とか。どれも読んでいるし、それが私の力になっている部分もありますね」
在宅時間が増え、出演作を見返したファンから感謝や応援の声が多く届く一方で、橋本自身も配信サービスなどで映画を視聴する機会が増えた。その中で、エンタメの力を改めて実感したという。
「外に出られず、フラストレーションがたまったりしている中で、作品を見て感動して大号泣したり笑ったりすることで発散してくれた人も多くて」
「私自身も、おうちで映画を見る時間が増えたんですよ。それで、めちゃくちゃ笑ったり泣いたりみたいなことをしていたら、やっぱり勇気付けられるし、感情がこんなに動くってすごいなって、純粋に思いましたね」
「結局、衣食住とは違って、なくても困らないものではあると思うんですよ。時間やお金に余裕がないと、触れにくいものだったりすると思うし」
「でも、それでも映画や音楽は生活をより豊かにすると思うし、夢や力強さみたいなものは私自身がすごく感じました」
橋本演じる森崎明日香と高校の同級生の6人が突如訪れた脅威へと立ち向かっていくホラー作品だが、青春映画としての側面もある。
海辺を走ったり、放課後にパフェを食べながらたわいない会話をしたり。
ある意味では普通の日常が、恐怖との対比で余計にまぶしく映る。
「やっぱり大人になるにつれて熱くなることに恥じらいを持ったりとか、自分の中で折り合いを付けて諦める瞬間もあったりすると思うんです。でも学生の頃の輝かしさや全力で挑む姿とかは、キラキラしていてすごくすてきだなと思うし、そういう感情は忘れたくないですね」
そんな時間を過ごす中で、6人の関係性は徐々に変化していく。
それぞれが抱えていた孤独や寂しさと向き合いながら、成長していく過程も描かれている。
「6人はクラスの中ではバラバラで、カーストも違う。分かりやすく孤独を抱えている人がいれば、それを表に出さない人もいる」
「そんなふうに、みんな何かしら悩みを抱えていると思うので、そこに寄り添える作品にもなったらいいなと思います」
明日香たちが直面した絶望、感じていた孤独、もどかしさ、やるせなさ。
これらは日常の中で、誰もが持ち得る感情でもある。
そうしたネガティブな気持ちを抱えている時こそ、エンタメに触れたり、好きな人を応援したりすることで、少しでも和らげてほしいと考えている。
「つらい時ほど、"推しの力"は偉大だよなって思うんです」
「推しに支えられるというか、自分が応援している人が元気でいてくれたらそれでいい、みたいなファンの方もいるので、ありがたいなと思いつつ、私はその何人分もの活力を抱えているとも思うわけです」
「だからこそ、普段からみんなを元気付けられたらいいなって思うし、公の場でネガティブな言葉を吐きたくないという気持ちがあるのかもですね」
「ファンの方に自分の弱みを見せて支えてもらうんじゃなくて、みんなが思っていることを吸収して、跳ね返せるぐらいの強さがないといけないのかなと思っています」
決してファンが自分へぶつけてくれる思いを負担に感じているわけではなく、それに応えられる自分でありたい。
そこは「誤解しないでほしいんですけど」と付け加えた。
「言葉にすることによって『そう思っていたんだ』って実感することがあると思うんです。だからこそ、ネガティブな言葉を吐いていると、くすんでいく気がするんです」
「愚痴とかが増えちゃうと、より嫌な気持ちになっちゃうから、結局自分が吐いた言葉で自分が傷つくんですよ」
他人に傷つけられるよりも「自分自身の言葉で傷つく方が害が大きいんじゃないかな」。そんなふうに感じることもある。
「自分を好きになるとか、自信を持つことってすごく大事だけど、簡単なことではないじゃないですか。誰しも自信がなかったり、思うようにいかなくて不安になったりするのは当たり前だと思うんです」
「それとどう折り合いをつけるとか、どうポジティブに変換するかっていうのは、日常のささいなことからだと思っています」