ドラマや映画に引っ張りだこの若手女優、堀田真由さん。2020年に出演したNHK連続テレビ小説『エール』では、華麗なダンスシーンも話題になりました。そんなダンスはもちろん、堀田さんの美しい立ち居振る舞いやスタイルの秘密は、どうやら6歳から16歳まで10年間続けていたバレエにありそう……! そこで今回、堀田さんの原点ともいえるバレエとの出会いから好きな作品、当時の思い出など、バレエにかけた青春を振り返っていただきました。
さらに、声優初挑戦でヒロインを演じた映画『ブルーサーマル』について語っていただきます。(撮影:アライテツヤ 取材:石黒容子 構成:羽柴観子)
バレエを始めたきっかけは「タカラジェンヌに憧れて」

──堀田さんは6歳から10年間、バレエに打ち込まれたそうですね。出演されたNHK朝ドラ『エール』(2020年)では、ご経験を生かしたダンスシーンも話題になりましたが、バレエを始めたきっかけを教えてください。
私の祖母は宝塚が好きだったので、幼少期の頃一緒に舞台を観に行ったりしていたんです。そこで観たタカラジェンヌの方々に憧れて、「私も舞台に立ちたいな」と思うようになりました。それで、「宝塚に入るにはバレエを習わなければ!」と思って(笑)、バレエを始めることになりました。
──宝塚がきっかけだったとは! ご出身が滋賀県なので、兵庫県にある宝塚の劇場は身近だったのですね。バレエでお気に入りのバリエーションや作品を教えてください。
自分が演じたなかで好きだったのは『パリの炎』というバリエーションです。白いチュチュに、フランスの国旗色のトリコロールカラーがたすきがけになっているシンプルな衣装で踊ったんですが、すごく情熱的で、だけど繊細な作品で。そういうところが好きでしたね。
──フランス革命を題材にした作品なんですね。
そうなんです。私が通っていたバレエ教室では毎年バリエーションを踊るフェスティバルがあったのですが、そこでいかに自分らしい演目を踊るかというなかで先生と相談して選んだ、とても思い出深い作品です。
──憧れているバレリーナはいましたか?
将来的にバレリーナになりたいというわけではなく、ただ単純に楽しくてやっていたので、「この人になりたい」みたいに憧れるというのはなかったんです。でも、クリスマスの時期には『くるみ割り人形』は観たくなりますね。熊川哲也さん率いるKバレエカンパニー版のDVDなども観たくなります。
バレエの影響で、芸能界に入る前から過密スケジュール

──バレエが好きだからこそ、つい頑張りすぎて疲れてしまいそうなときはありましたか? そんなとき、どう乗り越えられたのでしょうか。
そうですね……私の場合、通っていた教室が家から車で30分ほどのところにあったので、往復で1時間はかかるんですね。学業と両立しながら週4日通い続けるのはなかなか大変でした。学校が終わってからバレエ教室へ行って、レッスンが終わるのは22時ぐらい。0時前に帰宅してそこから勉強して、テストを受けて……。バレエを嫌いになるというよりは、時間的な問題で友だちと遊べなかったのが辛かったですね。でも、子どもの頃からスケジュールがぎゅっと詰まった生活を送っていたので、今の業界に入ってからも大変だなと感じることはそんなに多くありませんでした。
──幼い頃から過密スケジュールだったのですね(笑)。さらに、「バレエを頑張っていて良かった」と思える瞬間はどんなときなのか教えてください。
朝ドラ『エール』でダンスホールの踊り子役をやらせていただいたり、ドラマ『チア☆ダン』(TBS系、2018年)ではチアリーダーの役を演じたり、ダンス経験者だからこそできる部分があったのかなと思います。「表現」の引き出しの多さという面では、バレエをやっていた幼少期の頃に培ってきたので、それが今の仕事にも生かせているのかもしれません。


──なるほど。今の堀田さんにとって「バレエ」とは? 懐かしいものなのか、憧れなのか……どんな存在でしょうか。
どちらかというと憧れですね。舞台で踊る人は今でも尊敬しています。お仕事が忙しいのでなかなか難しいんですが、私も時間を見つけてもう一度バレエを習いたいと思っています。バレエには映像作品とはまた違う面があるので、原点に戻って感覚を取り戻したいですね。
『ブルーサーマル』で声優初挑戦 「人生何が起きるかわからない」



映画『ブルーサーマル』
2022年3月4日(金)公開
高校までスポーツに打ち込んできた都留たまき(通称:つるたま/堀田真由)は、青凪大学への入学をきっかけに、恋をして充実したキャンパスライフを送ろうと決意する。だが、体育会航空部の主将・倉持潤(島﨑信長)に勧誘されてグライダーに体験搭乗したところ、一面に広がる≪空≫の美しさにたちまち魅了されて同部に入部する。なにかと面倒を見てくれるがいつも衝突してしまう先輩・空知大介(榎木淳弥)を筆頭に、個性豊かな部員たちに囲まれながら、空とグライダーの魅力にはまっていく。
──3月には、空に恋して、大学の航空部で夢を追う大学生の青春を描いたアニメ映画『ブルーサーマル』が公開されます。堀田さんは本作で声優に初挑戦されましたが、ご自身がヒロイン役に決まったとき、どんなふうに感じたのか教えてください。
いつかは声のお仕事をしたいなと思っていたので今回オーディションを受けたのですが、自分でも決まるかどうかわからなくて。「できたら良いなあ」という思いで結果を待っていたので、マネジャーさんから連絡をもらったときは信じられませんでした! 初めてのアニメーション映画で、しかも主演……本当に私で良いんですか?と。
──(笑)。女優としてさまざまな作品で活躍している堀田さんですが、声のお仕事に挑戦したかったのには理由があったのでしょうか?
実は私、共演させていただく方や、初めてお会いする方から最初に褒めていただくのが「声」なんです。「素敵な声をしているね」と言っていただくことが多くて。それで、いつかは声をメインに使うアニメーションのお仕事ができたらいいなと思っていました。

──確かに、澄んでいてまっすぐな、とても素敵な声をしていらっしゃいます。堀田さんが今回演じた主人公のたまきは、大学に入学して空に魅せられていくという素直で天真爛漫なキャラクターでしたが、どんなふうに役作りを行ったのでしょうか?
私は普通に喋るときの声のトーンが高くないので、監督からはできるだけトーンを上げて役を作ってほしいと言われました。アニメーションでは表情などが使えず声だけで演技をしなければいけないので、たまきの「天真爛漫で明るい女の子」という部分を、声のトーンで表現できるように意識していました。
──とても自然で華のある演技でした。加えて、堂に入った長崎弁も披露されていましたね。堀田さんは滋賀県出身ですが、方言での役作りは苦労しませんでしたか?
とても難しかったです。方言を話す役柄を演じたことはあるのですが、ありがたいことに関西弁を話す役が多かったんですね。だけど今回は九州弁で、しかもアニメーション作品と初めてのことばかり。関西弁と九州弁ってどこか似ている部分があって、だからこそちょっとした違いが難しくて、一度詰まってしまうとそこからうまく言えなくなってしまったり……。そんなときは、他のシーンを演じて、一度リフレッシュしてからまた方言のシーンを録るなどしていました。
──そんな苦労があったのですね。今回演じたたまきと、堀田さんの人生やキャラクターで重なる部分があれば教えてください。
たまきがグライダーを壊してしまったところから物語が始まりますが、実は、私は行きたかった高校に行けなかったことがきっかけで、昔から受けてみたかったオーディションに挑戦することになりました。挫折のあとにチャンスをつかんだので、「人生何が起きるかわからない」という点ではたまきとリンクする部分がありましたね。
共演の島﨑信長さん、榎木淳弥さんとの作品づくり


──たまきは航空部で倉持と空知というふたりの先輩に導かれて成長していきます。倉持役の島﨑信長さん、空知役の榎木淳弥さんとの共演となりましたが、相談したり、アドバイスを受けることはありましたか?
おふたりとはご一緒させていただくシーンが多かったので、たくさん支えていただきました。島﨑さんには、「台本をめくる動作がストレスにならないように工夫したほうが良いよ」とアドバイスしていただくなど、声優にとって台本の扱い方がいかに大事かを教えていただきました。
たとえば台本を見ながら声を出すときに、ページをめくる音が入ってしまうといけないので、「セリフが2ページにわたってある場合は、続きをあらかじめ前のページに書いておく」とか、「(マイクが右側にあるので)台本は左手に持ったほうがいい」とか、基本的な工夫を教えていただきましたね。榎木さんとはディスカッションする部分が多かったので、お互いに提案しあったりして一緒に作っていったという感じがあります。

──かなり実用的なアドバイスもあったのですね。
はい。テクニック的な部分でいうと、作中でたまきがペットボトルの水をふきだしてしまうシーンがあるんですが、普段のお芝居で「ぷはっ!」という演技をやったことがなかったんですね。というより、その言葉自体、生きているうちに言わないような気もしていて(笑)。そういうアニメーションならではのセリフを自分に落とし込むのがすごく難しかったんですが、榎木さんには、「実際に相手がマイクの後ろにいると思って、水をふきだすようなイメージでやってみたらどうですか?」というふうにアドバイスしていただきました。
──良いムードのアフレコだったことが伝わってきます。ちなみに、ヒロインたまきと、倉持・空知両先輩との淡い三角関係も作品の見どころでした。堀田さんがたまきの立場なら、クールな絶対的エースだけど、とある事情を抱えている倉持先輩と、まるで同級生のように言いたいことを言い合える空知先輩と、どちらに傾きそうですか?
難しいですね(笑)。どちらも良さがありますが、私がたまきならやっぱり倉持さんかな。主将でもあるので憧れもありますし、背中を追いかけたいと思えるような存在ですね。もちろん空知も近しい存在で、たまきのことを支えてくれるのですが、だからこそ親友でいたいのかもしれないです。そして、たまきも含めて、すごく魅力的な3人なので、ぜひ劇場でたくさんの方に見届けていただきたいですね。
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プロフィール

堀田真由(ほった・まゆ)
4月2日生まれ。滋賀県出身。数多くの大作・話題作に出演しており、いま最注目の若手演技派女優。主な出演作に連続テレビ小説『わろてんか』『エール』(17、20/NHK)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』 (19/NTV)、『いとしのニーナ』(20/CX)、『危険なビーナス』 (20/TBS)、映画『かぐや様は告らせたい』シリーズ(19、21)、『劇場版 殺意の道程』、『ライアー×ライアー』、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』、『ハニーレモンソーダ』(21)など。ゼクシィ13代目CMガールに就任(20、21)。『ブルーサーマル』で声優初挑戦。
作品情報
映画『ブルーサーマル』
2022年3月4日(金)公開
出演:堀田真由、島﨑信長、榎木淳弥、小松未可子、小野大輔、白石晴香、大地葉、村瀬歩、古川慎、高橋李依、八代拓、河西健吾、寺田農
原作:小沢かな『ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部―』(新潮社バンチコミックス)
監督:橘正紀
脚本:橘正紀、高橋ナツコ
主題歌:「Blue Thermal」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)
挿入歌:「Beautiful Bird」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
製作:「ブルーサーマル」製作委員会
配給:東映
(C) 2022「ブルーサーマル」製作委員会
高校時代、バレーボール一筋で頑張ってきた都留たまき。大学では、「キラキラな恋がしたい!」と長崎から上京するも、入学早々オールラウンドサークルの体験入部中にグライダーを傷つけてしまい、空飛ぶ部活“体育会航空部”の雑用係をすることに。思い描いていたキャンパスライフとはかけ離れた環境に、最初は不満を抱いていたが、主将である倉持の操縦するグライダーで初めて《空》へ飛び立った瞬間から、一面に広がる空の美しさに魅了されていく。
たまきは過去の苦い思い出から“体育会”を避けていた。しかし、飛び立つたびに「もっと上手くなりたい」と空の世界に夢中になっていく。気づけば、目標に向かってともに励む先輩の空知や同期との間にも、固い絆が生まれていくのであった。そこには確かに彼女の求める“充実した大学生活“が存在していた。
様々な人の想いを乗せて、たまきは大空を翔ける。その先に待つ、過去のトラウマやライバルとの出会い、そして突然の別れ。果たして、《空》に恋した彼女たちは曇り空を抜け、奇跡の上昇気流(ブルーサーマル)に出会うことはできるのか――。