LINE NEWS AWARDS 2022で話題の人賞文化人部門を受賞した樋口真嗣監督に、今年話題になった自身のニュースTOP10を振り返りながらコメントしてもらうこの企画。ニュースになったことの背景や裏話も...?
【1位】興収44.4億円を突破!「シン・ウルトラマン」
【2位】仮面ライダー作品で怪人の魅力を引き出す
【3位】「サンダーバード55/GOGO」構成を担当
【4位】「シン・ウルトラファイト」配信
【5位】「シン・ゴジラ」ロケ地で1日警察署長
【6位】「仕掛人・藤枝梅安」特報、本予告を手がける
【7位】のん脚本・監督・主演「Ribbon」で特撮を担当
【8位】「SSFF & ASIA 2022」審査員に
【9位】"モスラ"序曲発見にコメント「現代の奇跡」
【10位】「TikTok TOHO Film Festival2022」審査員に
庵野秀明氏が企画・脚本を手がけ、自身が監督を務めた映画「シン・ウルトラマン」が5月13日に公開。興行収入44.4億円を突破するなど、大ヒットを記録しました。
──公開から半年以上経った今、振り返ってみていかがでしょうか?
樋口監督
終わってよかったな、と。自分が考えたキャラクター、物語を映画にするなら「自分対世間」ですが、ウルトラマンは色々な人が関わって、育ててきたもの。この映画でおとしめられる結果になったらよくないと思っていたので、責任重大でした。無事公開されて、今のところお客さんに喜んでもらってるようなのでよかったです。
(「シン・ウルトラマン」はPrime Videoにて見放題独占配信中)
石ノ森章太郎原作「仮面ライダーBLACK」(1987〜88年放送)を白石和彌監督の指揮でリブートした「仮面ライダーBLACK SUN」が今年10月に配信開始。樋口監督は、仮面ライダーや怪人たちの魅力を最大限に引き出すコンセプトビジュアルを担当しました。
──怪人の造形として、"人型"を崩すことを意識されていたように感じました。コンセプトビジュアルを担当されて、何かこだわりなどはあったのでしょうか?
樋口監督
最初は"まったく人間と変わらない見た目"を考えていました。作中で社会から虐げられている怪人への差別の表現としてより陰惨だと思ったんですが、それは実現しなくて。それなら"半分人間"などではなく、バランスの取れていない不安定な存在にしようと意識しました。
──バイオレンスな描写で知られる白石監督ですが、完成した作品を見てどう感じられましたか?
樋口監督
"らしさ"がさく裂していますよね。制作発表の時に「大人から子どもまで楽しめるように」って言っていたのに、「R18+」ですから。「どういうこと!?」と思いました(笑)。
英国のクラウドファンディング企画で2015年に制作された計3話のエピソードを、樋口監督が日本公開用に構成。今年1月に上映されました。
──サンダーバードに関わってみて、いかがでしたか?
樋口監督
もう最高です。自分の人生でまさかこんなことがあるとは。監督の一人が、私より若いのにものすごいマニアで、負けちゃいられないと思いました(笑)。実は一つだけ私物化したパートがあって、「謎の円盤UFO」のOPそっくりにサンダーバードのOPを作ったんですが、わかる人にしか伝わらなかった(笑)。
「ウルトラファイト」は1970〜71年に放送された、ウルトラヒーロー対怪獣、怪獣対怪獣などを約5分に凝縮した番組。「シン・ウルトラマン」公開を記念し、"シン"バージョンが制作されました。
──こんなに手間のかかったことをやるのか、と驚きました。本数も多いし、一本一本アイデアが詰まっていますよね。
樋口監督
うちの助監督たちにやってもらったんですが、全員やりたい放題(笑)。私は自分が監督した回以外にも、音響・演出は全て担当したんですが、"殴った時の音""転がる時の音"はこだわりました。"あの音"じゃないとだめなんです。
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監督を務めた映画「シン・ゴジラ」(2016年公開)のロケ地の一つ、横浜市旭区の神奈川県警旭署で1日警察署長を務めました。
──かなり印象的な話題でした。どういう経緯でお話が来たのでしょうか?
樋口監督
よくわからない(笑)。ただ、旭区の警察署広報の方がものすごく特撮マニアらしいんです。散々断っていたんですけど、「藤岡弘、さんもやっています」と言われて…その名前を出されて、何も言えなくなってしまいました(笑)。
監督・河毛俊作、主演・豊川悦司の映画「仕掛人・藤枝梅安」2部作(2023年2月3日、4月7日公開予定)の特報映像、本予告を手がけました。
──特報を見ましたが、とてもかっこよかったです。やってみていかがでしたか?
樋口監督
かっこいい映画だったので、それをどう伝えようかという点には気を配りました。映画本編の音楽が川井憲次さんなんですが、無理をお願いして川井さんに特報映像用の新曲を作ってもらったんです。それだけで、私の中では「勝ち」という感じですね(笑)。
のんが脚本・監督・主演を務めた映画「Ribbon」(デジタル配信中)の特撮を担当。リボンアートを用いた主人公の感情表現をCGではなく、特撮で映像化しました。
──まるでCGのようなリボンの動きが印象的でしたが、CGは使っていないんですか?
樋口監督
使っていないです。生で動かした素材を撮っています。
──それはすごい。のんさんとの制作はどのように進められたのでしょうか?
樋口監督
リボンの動きという伝えづらいものをイメージされていたので、お互いに歩み寄りながらイメージをすくい上げていきました。実際に現場で動かしたリボンを見てもらって、のんさんの要求に応えていくという形です。これっていつもの「特撮班」のやり方だったんで、体験してもらえればいいなと思っていました。
国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2022(SSFF & ASIA2022)」で、「アジア インターナショナル部門」と「ノンフィクション部門」の審査員を務めました。
映画「モスラ」(1961年)公開時に11劇場でのみ、本編前に流れていた「序曲」。この音源が発見され、樋口監督は「現代の奇跡」とコメントを寄せていました。
──コメントから樋口監督の興奮が伝わってきました(笑)。
樋口監督
確かに興奮しているんですが、こういったアーカイブの発掘、映像の修復などを行っていた「東京現像所」の事業終了が発表されましたよね。作品の発掘や保存って銭もうけにはならないかもしれないけど、文化的にやっていかなければいけない。今後どうしていくのか、考えないといけない時期に来ていると思いました。
TikTokと東宝がタッグを組んだ新しい映画祭「TikTok TOHO Film Festival 2022」で審査員を務めました。
──審査員に関する話題が2つランクインしました。審査員についてはどうお考えでしょうか?
樋口監督
新しい刺激になるといいなと思っているんです。必ずあるんですよ、「すげえ、これ!」みたいな予想もしない角度から殴りかかってくるような作品が(笑)。その出会いをすごく楽しみにしています。
||◤ #TT映画祭2022🎬 ◢||
— TikTok TOHO Film Festival (@tiktoktohoff) August 2, 2022
👑グランプリ
『僕の妹は螺旋階段が大好きだ。』https://t.co/LQq8cV2h2v
グランプリ受賞者は東宝プロデュースのもと、#福本莉子 (@r_fukumoto_toho)さん主演による
新作短編映画の制作権利が贈られます🙌
この度はグランプリの受賞、
本当におめでとうございます✨
樋口真嗣
1965年生まれ。1984年「ゴジラ」で映画界入り。95年「ガメラ 大怪獣空中決戦」の特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」では、脚本・絵コンテを担当した。「ローレライ」「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」2部作などで監督を務める。2016年「シン・ゴジラ」で監督・特技監督を務め、総監督の庵野秀明とともに日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞。22年には監督を務めた「シン・ウルトラマン」が公開され、興行収入44.4億円超を記録した。