株式投資での判断材料となる指数は数多くあります。その中でも少し一般とはなじみが薄いかもしれない指標ですが、「バルチック海運指数」というものが存在します。
その名の通り、「バルチック海運」取引所が定めている指数なのですが、単に海運業の業績の動向を把握できるというだけではなく、実は世界経済の先行指標にすらなっている指数です。
今回はバルチック海運指数について、定義を明らかにした上で、なぜそれが世界の先行指標になるのかを解説します。その上で、バルチック海運指数をどのように見ればよいのかについても言及していますので、ぜひご自身の投資に活かしてみてください。
■ バルチック海運指数とは?
バルチック海運指数(通称BDI)は、不定期船の運賃を指数化したものです。ロンドンのバルチック海運取引所が1日に1回算出し、発表しています。世界中の海運会社、商社などから石炭・鉄鉱石・穀物などの貨物を運搬する船の運賃の情報を集め、算出されます。
基準値となるのは、1985年1月4日。この時の値を1000とし、日々の指数が算出されています。過去最高値は、11793。2008年5月20日に記録しています。中国を中心とした新興国の経済成長に後押しされる市況での数字でした。
しかし、同年に起きたリーマンショックで700を切る水準にまで急落しています。過去最低値は、2016年2月8日に、293という数値を記録しています。
■ 世界経済の先行指標になっている
バルチック海運指数は世界経済の先行指標としても認識されています。バルチック海運指数は世界経済の動きに2カ月先行する、などと言われることもあります。海運関連株の指標となるのは、想像に難くないかと思いますが、なぜ、「世界経済」の先行指標になるのでしょうか?
その理由は、バルチック海運指数が世界の「貿易の活発さ」と関連性の高い指標であるからです。貿易が活発であることは、バルチック海運指数が上昇する一つの「主要な要因」です。そして、貿易が活発であることは、経済活動が活発であることと関連性が高いです。
貿易が活発になり、経済活動全般が活発になるという順序を辿るため、バルチック海運指数が上昇→貿易が活発である可能性が高い→経済活動が活発になる可能性が高いという説明が成り立ちます(下落の場合も同様です)。ゆえに、バルチック海運指数の変動が世界の経済活動の「先行指標」と考えられています。
ただし、「関連性が高い」という表記を重ねている通り、バルチック海運指数が世界経済の先行指標となるのは明白な因果関係による説明ではありません。2回「相関性の高い」議論を行うため、指数の上下動と株価指標の上下動は必ずしも関連するものではありません。
他の要因でバルチック海運指数が上昇しているだけ、ということも十分に考えらえます。あくまで「参考指標」という認識を持つことが大切です。
■ バルチック海運指数を見ると何がわかる?
バルチック海運指数を見ることで、
- 海運業の動向
- 原料価格の値動き
の2つの予想がつきやすくなります。
海運業の需要が高まれば、必然的に船の賃料はあがりやすくなるため、この点のご理解は難しくないとは思います。とりわけ、賃料を(何年間据え置き、という形ではなく)積極的に改定する海運業者であれば、指数の影響は受けやすいため、株価の予想もより容易になります。
また、バルチック海運指数の上昇は貿易の活発化と関連付けられるため、輸出の対象となる原料価格の上昇とも結び付けられます。ただし、繰り返しになりますが、バルチック海運指数の上下動の要因は貿易の増減の身ではなく、世界的な経済の動向を必ずしも反映するわけではないので、単体での予想を過信することは禁物です。
■ バルチック海運指数の確認方法
バルチック海運指数は、バルチック海運取引所の公式ページや「Bloomberg」などのサイトで確認することができます。ただし、公式ホームページは最新の情報をリアルタイムに入手することができますが、閲覧には有料会員登録が必要です。
一方で、無料で見ることのできるサイトに掲載されている情報は1~2日経過した情報です。しかし、無料サイトだと1日前か2日前の情報しか載っていないため最新情報を見ることはできません。
バルチック海運指数の情報をメインに用いて取引の方針を策定したい場合は、有料会員登録をしてでも、最新の情報を得る価値があるかもしれません。一方で、指数の推移を補助的な分析として用いる場合など、最新のデータである必要性が薄い場合は無料サイトへの掲載を待つ方が経済的な判断となりえます。
■ まとめ
世界史をみても、「海」の存在と、各地域の発展は切っても切り離せないものがあります。グローバル化した現代社会においても、それは同様で世界経済と海運事情は密接な関わりを持っています。
その海運の事情を把握する上で代表的な指標がバルチック海運指数。海運関連株のみならず世界経済の動向を把握する上でも有効な指数です。
世界経済とは別の要因で動くこともあるので、過信はできませんが、大いに参考にできる指標ですので、ぜひご参考にしてみてください。(提供:The Motley Fool Japan)