2018年12月にソフトバンクグループの子会社としてIPOを行ったソフトバンクだが、これまで株価は売出価格1500円を一度も上回っていない。
しかし1200円台にまで下落した株価は、5月のヤフーの連結子会社化発表もあり上昇し、1400円台に到達しており、1500円まであと一歩の値位置にある。
売出価格1500円目前の水準での攻防が続くソフトバンク株について、これまでの値動きを振り返るとともに、株価動向を予想するポイントについて取りあげて解説していこう。
■ソフトバンクの最近の株価動向
ソフトバンクグループ<9984>の携帯電話子会社として、2018年12月19日にソフトバンク<9434>がIPOして半年以上が経過した。子会社上場とはいえ、時価総額5兆円超えの大型銘柄のIPOは大きな話題となった。しかし残念ながらソフトバンク株は売出価格1500円に対して、初値は1463円であった。更にほぼ初値天井となり、これまで一度も売出価格1500円を上回ることなく、売出価格で投資した投資家は全員が損をする結果を招いている(ソフトバンクのIPOは親会社ソフトバンクグループ保有株式の売出しのみで行われており、公募増資は行われていない)。
株価は3月には1200円台にまで下落したが、4月中旬以降の上昇により1400円台を回復した。未だ初値1463円の回復もなされていないが、初値そして売出価格1500円の回復が射程圏内にある。ソフトバンク株はIPO後約半年の低迷を経て、売出価格を上回るチャンスを得た状態だ。
● ●ソフトバンクの業績推移
ソフトバンクの業績は下記のように推移している。
2018年3月期 売上高3兆5826億3500万円、営業利益6379億3300万円、当期利益4007億4900万円
2019年3月期 売上高3兆7463億500万円、営業利益7194億5900万円、当期利益4307億7700万円
2020年3月期(予想)売上高 4兆8000億円、営業利益8900億円、当期利益4800億円
※当期利益→親会社の所有者に帰属する当期利益
2019年3月期は対前年同期比で増収増益を達成した。また2020年3月期もヤフー<4689>の連結子会社化の予定(詳細後述)を背景に、増収増益を見込んでいる。
ソフトバンクは、安定的な業績を背景に高配当を出すというストーリーでIPOを行い、実際に業績は安定的に推移中だ。また株価1400円での配当利回りは6.0%であり、5%を超える高い配当利回りを実現している。
■ヤフーの子会社化発表を機にソフトバンクの株価は大きな上昇を見せる
2018年12月のIPO後、4月には1200円台にまで下落したソフトバンク株だが、4月2日の1215円を底に株価は反転を開始し、4月半ばに1300円台を回復した。
更に5月9日には、株価は窓を開けて上昇し1400円台に到達。この背景には、ヤフーの連結子会社化を目指した株式の追加取得に関する発表である。
既にソフトバンクはヤフーの12.08%の株主シェアを有する株主であったが、株式の追加取得により44.64%の株主シェアとなり、ヤフーは連結子会社化される。これによりヤフーとの関係強化、またソフトバンクグループ内での資本構成の整理が進むとして、株式市場から同発表は評価されることになった。そして株価は5月14日には1450円にまで上昇し、その後も7月に至るまで1400円台を維持している。
ヤフー株の追加取得発表を機に、ソフトバンク株は初値及び売出価格の回復にあと一歩の水準にまで上昇した。また一過性の株価上昇ではなく、7月に入るまでその株価水準が維持されている。ただし5月以降、1400円台でのレンジ相場が継続中だともいえる。
■ソフトバンクの株価動向を予測するポイント
今後のソフトバンクの株価動向を予測するうえでは、下記3点がポイントになる。
① 売出価格1500円の存在
② 他携帯キャリアの株価及び株式市場全体の動向
③ 携帯電話業界を巡る業界動向
下記でそれぞれの内容について解説する。
● ●①売出価格1500円の存在
2018年12月に話題の銘柄としてIPOを行ったソフトバンクであるが、半年以上経過した今も、残念ながら売出価格1500円を一度として上回っていない。初値1463円がほぼ天井である。
5兆円を超える時価総額で、株式市場から2兆円を超える資金を吸収し大型IPOとなった同社は、多くの投資家が含み損を抱えたまま売出株を継続保有中だ。現在は1400円台での攻防が続いており、微損で決済を行う株主の撤退戦が続いている。今後初値1463円そして売出価格1500円を超えるタイミングで、若干の利益で売却を行う(いわゆる「やれやれ売り」)投資家が急増するだろう。
大型銘柄だけに多くの売却玉の出現が予想され、既に1400円台で株価の動きは停滞しているが、今後1500円に近づくにつれ、更に値動きが緩慢になる可能性がある。
今後のベストシナリオとしては、売出価格で購入し、含み損で身動きの取れなくなっていた投資家からの売り圧力が弱まるタイミングで、ソフトバンク株が上昇するというものだ。
一方で売出株を抱える投資家からの売り注文が長く続き、買い注文が息切れして、最終的に株価が下落する可能性も存在する。
ソフトバンク株が1400円台から上下どちらの方向に進むのか、現段階では予測が難しい。しかし売出価格1500円の存在により、次の値動きが発生する際は1500円が境といえよう。
● ●②携帯電話他社及び株式市場全体の動向
下記の線グラフは2019年1月4日を基点として、日経平均、ソフトバンク、NTTドコモ<9437>、KDDI<9433>4者の株価の値動きを積み上げたものである(変動幅を合わせるため、日経平均は値動きを1/10としている)。
本グラフからソフトバンク株の3月後半からの下落は、携帯キャリア銘柄全体の下落を背景としたものであったことが分かる。
また、ヤフー株の買い増しという発表がきっかけとなった、5月のソフトバンク株の上昇とともに、NTTドコモとKDDIの2社の株価も同様のタイミングで上昇している点に注目したい。
そして現在の1400円台回復後の停滞についても、NTTドコモ、KDDIの株価も同様に停滞の状態にある。
つまり時価総額6.8兆円のソフトバンク株は、その巨大さゆえ、類似会社及び全体の株式市場の流れにも大きく左右されるのだ。よって売出価格1500円を超えて更なる上昇を目指すためには、株式市場全体の上昇や携帯キャリア銘柄全体の上昇といった、周囲からの後押しを受ける必要がある、と上記グラフからは考えることができる。
● ●③携帯電話業界を巡る業界動向
携帯キャリア業界では、5G時代の幕開けを目前として、米中貿易摩擦を契機とするファーウェイ問題に揺れている状況だ。通信機器大手ファーウェイの排除を米国政府は各国に要請しており、国内キャリア3社も基地局などのファーウェイ排除を表明している。しかしながら5G網の構築には、ファーウェイの低コストの機器無しでは設備投資額が大幅に増加しそうだ。
また国内では、政府により携帯電話料金の引き下げの圧力が強まっており、携帯キャリア各社にとっては収益圧迫要因となっている。
つまり5Gへの投資を控え、ファーウェイ問題に加えて携帯電話料金引き下げという政府からの圧力という両者の存在が、ソフトバンク株をはじめ携帯キャリア株の株価の頭を抑えていると考えることもできるのだ。
■ソフトバンク株を買うには
ソフトバンク株の7月第一週最終日、5日金曜日の終値は、1444円であった。同社は100単元で取引される銘柄のため、投資のためには14万4000円の資金が必要である。
ソフトバンク株の購入に際し、手数料を抑えて購入できる各証券会社及びその手数料は下記となる。
・岡三オンライン証券 0円
・DMM.com証券(DMM株)104円
・ライブスター証券 104円
・GMOクリック証券 105円
・SBI証券 113円
・楽天証券 113円
※いずれも税込み価格
準大手証券会社・岡三証券グループの岡三オンライン証券は、約定代金20万円以下なら手数料無料で取引が可能であり、ソフトバンク株は手数料無料で売買が可能である。
岡三オンライン証券を除けば、大手ネット証券のSBI証券、楽天証券は113円。中堅のDMM株104円・ライブスター証券104円・GMOクリック証券105円となっており、中堅ネット証券の手数料が大手に比べ若干安い水準にある。
■まとめ
ソフトバンクは売出価格1500円で2018年12月にIPOを行ったものの、2019年6月まで一度も売出価格にタッチできない状況が継続中だ。しかし5月に1400円台に浮上し、現在1500円目前の水準で値動きが停滞している。
5月のヤフー株連結子会社化の発表を機にソフトバンク株は上昇したが、携帯キャリア銘柄という観点では、類似のタイミングでNTTドコモとKDDIも上昇している。またファーウェイ問題及び政府からの携帯電話料金引き下げ圧力もあり、5月中旬以降携帯キャリア銘柄全体が頭を押さえられ、伸び悩んでいる状態だ。
ソフトバンク株は、売出価格1500円前後を巡る攻防の後、上下どちらに大きく動くのか、次の値動きが注目される局面にあると考えらえる。(株価プレス 管理人)