解剖学は体を正しく使うための手引書。けが予防だけでなく、パワフルかつ効率よく動くためにも役立ちます。そこで「関節の使い方」を一歩踏み込んでご紹介。「関節のニュートラルな位置=中立点」を知ることで、効率よく体幹の力を末端に伝え、安定したヨガポーズをとることができます。教えてくれたのは、理学療法士でヨガインストラクターの中村尚人先生。今回は、ヴィーラバッドラーサナⅡとカカーサナで「肩と肩甲骨の中立点」を学びましょう!
肩・肩甲骨の中立点を知る
肩関節の中立点を、スキャプラプレーンといいます。この位置を保っていると肩にストレスがかかりにくく、楽に腕を動かせます。ポイントは胸椎の連動。腕を横に開くときは胸椎を伸展させ、前に閉じて使うときは胸椎を丸めます。
ヴィーラバッドラーサナⅡの場合
ステップ1:胸を開いてスキャプラプレーンを保つ
スキャプラプレーンの外側に腕を開きたいときは、胸を開いて腕の角度を調整します。腕だけ開くと肩を痛める原因に。
※スキャプラプレーンとは
肩甲骨(スキャプラ)の面(プレーン)という意味で、腕を真横に開いた位置から30〜45度前方。肩関節や肩甲骨へのストレスがなく、体幹の力が伝わる機能的なポジション
HOW TO
左右に脚を大きく開き、右足を90度右に向ける。息を吐きながら右膝を曲げる。スキャプラプレーン(体の少し前方)で腕を開く。そこから胸椎を伸展させて腕を開き、真横までもっていき、30秒キープ。反対側も。
横から見ると
NG:腕だけを大きく開いている
胸椎を連動させず腕だけ開くとスキャプラプレーンからずれる。関節に負担がかかる。
NG:肩甲骨だけを寄せている
肩甲骨を寄せてしまうと、肩甲骨を引き上げる菱形筋が働いて首がつまってしまう。
ステップ2:胸を動かし肩が前に出ない位置を探す
肩関節を触ったとき、肩が前に出ていなければスキャプラプレーンが保たれています。肩が出ているときは胸椎を動かして出なくなる位置を見つけて。
カカーサナの場合
ステップ1:背中を丸めて体幹の力で床を押す
腕を寄せるポーズでは、背中を丸めてスキャプラプレーンを保ちます。体幹の力が手に伝わって強く押せます。
HOW TO
両手は肩幅に開いて床につく。肘を軽く曲げ、その外側に膝をつけてかかとを浮かす。背中を丸めて、前鋸筋と外腹斜筋の力で床を押してポーズを30秒保つ。
NG:背中が丸められない
スキャプラプレーンにならないので腕の筋肉に過度な負担がかかってしまう。
NG:肩がすくむ
肩がすくんでいると体幹の力で床を押せなくなるので、足が上がらない。
ステップ2:頭を左右にふり首がすくまない位置を探す
ポーズ中に軽く頭を左右に動かしてみましょう。このとき首がすくまないように。動かすことで最も快適な位置を見つけられます。
教えてくれたのは…中村尚人先生
理学療法士、ヨガインストラクター。医療とボディワークの融合、予防医学の確立を目指し活動している。「TAKT EIGHT」、「UPRIGHT」主宰。
モデルを務めてくれたのは…宮沢セイラさん
バレエ歴14年。乃木坂46の1期メンバーで、現在はタレントやモデルとして活躍。ヨガインストラクターの資格を取得、現在は解剖学を勉強中。
Photos by IKKEN
Hair&make-up by Mayumi Tsuchiya(FIX-UP)
Illustration by Misako Nakagawa
Text by Yasuko Ito
yoga Journal日本版Vol.65掲載